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のほほん見聞録  作者: ヒロっぴ
○川急便時代
25/136

それクレームですか?





配属当初、俺は全く休憩も取れずに一日中走り回っていた。





当時の○川急便は、『13時間労働の徹底!』というのをスローガンに上げていた。



ということは、到底13時間労働では終わらないということだ。




朝六時半頃から積込を初め、俺が帰ってくるのは夜10時半頃になるのが常だった。




俺が帰ってくる頃には、同期の連中はみな、風呂から上がっていた。




同期はみんな会社の寮(とはいえ二段ベッドがズラっと並んでいるだけの部屋)に泊まり、週末だけ帰るという生活をしていた。



なので、睡眠時間で言えば、なんとか5~6時間は取れていた。





同期で一番楽なコースに配属されたSに、俺がヘロヘロになりながら帰ってきて、




『今日はどうだった?』




と聞くと、




『今日は楽だったな。』




というので、





『今日はって、昨日も楽だったって言ってたじゃん。』





と言うと、





『……昨日も楽だったな……』




と言う始末。





しかし、そんな彼も相対的に楽だというだけで、以前の仕事に比べたらやはりキツイのだろう。



毎日風呂も入らずベットに入り、眠る事を優先していた。




単なる風呂嫌いなのかも知れないが……




そんな時、事件が起きた。





○川急便では、朝出庫の際、事務所に入ると、免許証を顔の横に掲示し、




『○課○係、○○○○です!免許、体調異常ありません!今日も元気で言って参ります!』




と大声で宣言して出ていく。





そして、帰ってきた時も同様に免許証を掲示して、





『ただいま帰りました!○課○係○○○○。今日も無事故無違反、異常ありません。。お疲れさまでした!』




みたいな感じで報告をする。




その日は珍しく、俺はいつもより早めに帰ってきていた。



通常通り、報告をすると、事務所にいた他の課の名物課長から、




『お前はSの同期か?』




と聞かれた。





『はい!』





と言うと、





『今日は参っちまったよー!』




と事務所中のみんなに訴えるように一人語りが始まった。



名物課長たる所以だ。




『今日、事務所の女の子が電話受けてるの聞いて耳を疑っちまったよー。


お前、なんだと思う?』




と言われても全く分からないので、




『分かりません。』





と答えた。





『俺も長年この仕事してるけど、こんなの初めてだぞ。

電話出た女の子が、『……え?……臭いんですか?

……何が臭いんですか?……うちのドライバーさんが臭いんですか?

……それってクレームですか?……』

って言ってるんだよ。そんなクレーム初めてだぞ。そのやり取り聞いて笑っちまったよ。『何が臭いんですか?……うちのドライバーさんが臭いんですか?……それってクレームですか?』って、お前笑わずにいられるか?』





『いえ……』





と、俺も想像して笑ってしまった。




すると、そんなやり取りをしている最中に、当の本人が鍵を返しに事務所に入ってきた。




『おい!S!お前、風呂入ってるか?』





突然大声でそう聞かれたSさんは意味も分からず戸惑っていた。





すると、課長はさっきと同じような語り口で顛末を伝え、最後に『ちゃんと風呂入れ!』と言っていた。





しかし、わざわざ電話してきてクレーム入れるなんて……よっぽど臭かったんだろうな。




.

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「よっぽど臭かったんだろうな」 って誰もそれまで臭いに気付いていない?! [気になる点] 13時間労働!? 1日5時間残業、月100時間! これはキツイですね。 [一言] 荷物ではなく臭い…
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