古い自販機
そう、あれは、夏のうだるような暑さの日だった。
引越作業の合間、休憩に入った時、俺はジュースの自販機を求めて辺りをさ迷った。
その時作業していた場所は街中から少し外れた辺鄙な場所だった。
やがて、手頃な自販機を見つけた俺はほくそ笑んだ。
その自販機は、あまり人通りのなさそうな民家の間にあり、一見すると『使えるのかな?』と思える程古びていた。
しかし、俺は知っていた。
そーいう、あまり売れていない自販機で、長期間冷やし続けられたジュースは、時としてシャリシャリのシャーベット状になり、涼を取るには最適である事を。
暑い日に、そういう状態になったジュースを手にした時は、思わず
『自販機の妖精さん、ありがとう♪』
と言いたくなる。
うだるような暑さの中、引越作業で汗をかきまくった後の休憩で、そんな記憶を思いだしながら手にしたジュースは、輝いて見えた。
『ゴクッ……』
期待に喉を鳴らしながら
『プシッ!』
と栓を空けた俺は、
『アーン…』
飲み口に口を当てて天を仰いだ。
…………あれ?
期待したシャリシャリシャーベットどころか、滴一つ出てこない。
缶を垂直に戻し、振ってみると、
『ガコ!ガコ!』
が、ガコガコ?
そー、
完全に凍ってしまっていて、一滴も出てこないのだ。
『あぁ…こんな俺の為に、自販機の妖精さん、ありがとう』
…って、
飲めるか~っ!
うう…(T_T)
みなさん、古い自販機には注意しませう…
.




