14/136
洗濯機の災難
その日は鎌倉の雑木林に囲まれた一軒家で作業をしていた。
その時のリーダーは、その大手引越センターを立ち上げた頃からいる人で、元極道。
数々の武勇伝を持っているツワモノにも関わらず、クモが苦手というオチャメさも持ち合わせていた。
あらかた段ボールを出し終えると、次は大物の搬出だ。
引越作業は手渡しのリレー形式なので、手にした荷物は次の人にドンドン渡していく。
とはいえ、バケツリレーのように、その場から動かずに手だけ動かすのではなく、お互いに歩きながら、次の人に出合った所で渡すという形になる。
大きいタンスや冷蔵庫などは二人で持つが、軽目のタンスや洗濯機は一人で持つのが当たり前だった。
順調に作業が進み、バイトから、そのリーダーに洗濯機が渡された。
リーダーは洗濯機を抱えて歩き始め、次のバイトに渡そうとした時、洗濯機の裏側に潜んでいたクモが、カサカサと出てきた。
『ウワァ~ッ!!』
そのリーダーは、クモが手に移る刹那、洗濯機を放り投げた!
こっぱみじんこ……
その場にいたみんなは、
目が点。
いや、あの……
何も投げんでも……
.




