目がチカチカする
これはとある大手引越センターで仕事をしていた頃の話。
引越屋は、お客さんの所へ行くと、まず挨拶をした後、
『お荷物確認させて下さい。』
と言って、部屋の中を確認してまわる。
それで、荷物の全体量を把握し、大まかな作業手順や積み込み方法等を決めて行くのだ。
その日も一部屋一部屋、奥さんと一緒に確認し、持っていく物や捨てる物等を聞いていった。
そして、ある部屋のドアノブに手をかけた時、奥さんはこちらを向いて、
『ビックリしないで下さいね。』
と言った。
俺は思わず他の作業員達と顔を見合わせてしまった。
そして、ドアを開けると…
『⁉‼⁉』
ぴ…ピンク?
その部屋は、
壁といい天井といい、
敷物や家具、照明や小物に至るまで、
全てピンクだった。
以前、アメリカ人家族の引越をした時、息子さんの部屋が、当時のニューヨークの地下鉄ばりに落書きだらけだったのにも驚いが、一面ピンクの部屋の方が更にインパクトがあった。
奥さんによると、中学生の娘さんがピンク好きで、なんでもピンクにしちゃうとの事だった。
やがて、作業を進めていると、当の娘さんが、
『こんにちわ』
と言いながら現れた。
いや…あの…
いくらピンク好きでも……
…そのコは、
全身ピンクの衣服を身にまとい、眉毛や髪の毛に至るまで、全てピンクに染めていた。
俺達は、密かに
『いくらなんでも、あそこまで行ったら、一種の病気だよな…』
とか言いながら作業をしていた。
すると…
足元に纏わり付く物体が…
『ニャア~ン』
猫までピンクだった。
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