工場の環境
期間従業員として、自動車工場で働くのは初めてだったので、他とは比較のしようが無かったが、工場の中は夏は暑く、冬は手がかじかむ位寒かった。
部署にもよるのかもしれないが、俺がいたところは出入り口の近くで、感応式で大きなシャッターが開閉するのだが、そこを大きなフォークリフトがひっきりなしに出入りするので、夏は熱風、冬は冷気が俺達の職場を直撃する。
元々、冷暖房が完備している工場ではないので、暖房や冷房が逃げるとかではなく、単純に野外で作業しているような感じだった。
俺が作業をしている場所の通路を隔てた目の前で、フォークリフトがこちらに尻を向けたまま作業をするので、アクセルをふかすたびに排気ガスがこちらの職場を直撃する。
しかも、その作業者は必要以上にふかすので、たまったものではない。
不思議なのは、ここの工場には電動式のフォークリフトもあるのだが、どういう訳か電動式は野外で使い、屋内ではエンジン式のフォークリフトが多く走っていた。
その為、工場の中は排気ガスが充満するという劣悪な環境になっていた。
小学生でも解決出来そうな事案だと思うのだが、誰も声を上げないのだろうかと不思議だった。
確かに古い工場だったが、床はあちこち剥がれていて、機械の下は埃やゴミだらけ。
勿論簡単な掃除はしているのだろうが、手の届く範囲だけという印象だった。
とはいえ、この工場で働いているときは、こんなもんなんだろうと思っていたので、特に汚い工場というイメージも無かったのだが、ここでの期間が終了してから次に行った工場が比べものにならないくらい綺麗だったので、後付けで比較すると汚かったというイメージになってしまったのだ。
また、食事をする大食堂は、俺達のいる西側の工場と本社に隣接する東側の工場の二カ所にあったのだが、本社側の方の食堂は作業服で働く工場作業員の他に制服で働く本社勤務の人も来るので、西側の食堂に比べるとかなり綺麗だった。
一部メニューも違っていたので、休みの日に昼食を食べに来るときは、本社側の食堂を利用していた。
通勤の時に本社側の正門から入ると、東側の工場の中を通って西側に行くのだが、東側の工場は西側に比べると綺麗で、冷暖房も完備していたから、何を作っているかによっても違うのだろう。
長らく期間従業員の仕事をしている人に聞くと、劣悪な環境の部署に配属されると、更新せずに一度辞めてから入り直す事もあると言っていた。
三ヶ月ごとの期間を満了すれば、更新しなくても問題ないらしく、入り直しても経験者として採用されやすいという。
同じ給料なので、少しでも環境のいい部署にいた方が得なのは分かるが、その為に入り直すというのも、手間がかかると思うのだが、そういう手段を使う人も少なくないらしかった。
ホントに色々な働き方があるものだと思った。
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