寮生活
この仕事のスタートは節約づくしだった。
10万円を借りたからといって、余裕は全くないので、しばらくは休みの日に交通整理のアルバイトに行った。
俺が配属された部署は、基本的に週休二日で毎週夜勤と昼勤が入れ替わるので、昼金が終わった翌日に三連勤を入れた。
二日間を通して働いても、次の日は夜勤なので余裕がある。
あと、寮と工場での食事は、社員証を使えば給料からの天引きになるので助かった。
なので、夜勤明けの朝食や、休みの日の昼食などは、わざわざ会社に行って社員証で食べた。
安い上に天引きなので、節約する上ではとても効果があった。
ここでの仕事を始めてからしばらくは交通整理の仕事に向かったが、そのうちにある程度余裕が出て来たので、行かなくなった。
実際、体力的にもキツかったのだ。
毎週昼勤と夜勤が入れ代わるのもキツいし、立ち仕事で始業から終業までほぼ立ちっぱなしというのも、慣れるまではかなりキツかった。
運転の仕事が長かったので、立ちっぱなしで仕事をするのには慣れていなかったのだ。
アルバイトに行かなくなってからは、休みの日は散歩に出かけた。
寮の部屋にはテレビもあったが、放送がデジタル化されて間もなくだったので、古くて小さいブラウン管テレビにデジタルチューナーを付けただけのもので、画質も悪くあまり見る気もしなかった。
その為、休みの日に一日寮にいるのは苦痛だったのだ。
知らない町なので、歩いていても飽きることなく、一度散歩に出ると三時間~五時間は帰らなかった
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知らない町を散歩していると新しい発見があるので楽しかった。
散歩しているときに業務スーパーを発見してからは、カップ麺を大量に購入して、休みの日の朝食にしたり、寮の食堂の時間に間に合わないときに食べていた。
風呂に関しては、寮にある大浴場を利用していた。
浴室には大きな浴槽と小さな浴槽が1つづつあり、洗い場のシャワーもかなりの数があったが、作りが古いので、自分以外の誰かがシャワーを使い始めるたびに温度が急激に下がるので、注意が必要だった。
頭を洗っていて、突然水になるような事も度々あった。
何度かここの会社で期間従業員をしたことのある人の話だと、以前この寮にいた事があり、その時は浴槽にウ⚪コが浮いていた事があったというので、内心ビクビクものだった。
ウ⚪コは浮いていなくても、浴槽のお湯の交換は週末に行うようで、日曜は浴槽が使えなかった。
そのため、月曜の夜は浴槽のお湯も綺麗なのだが、日を追うごとに濁っていき、土曜日ともなるとかなり濁っていた。
まぁ、シャワーだけ使っていれば問題無いのだろうが、仕事で疲れていた事もあり、俺はどうしても浴槽につかりたかったので、濁っていても我慢して使っていた。
一応浴槽は循環式だったので、浄化もしていたのかもしれないが、利用する人数も多いので、浄化が間に合わなかったのかもしれない。
寮での夕食はメインのメニューが決まっていて、日替わりで提供されるのだが、納豆やポテトサラダなどの副菜は別に選べた。
また、酒類の持ち込みもOKだったので、ビールや日本酒などを持ち込んでささやかな晩酌を楽しんでいた。
トイレに関しては、ほとんどが和式で、各階に1つ位は洋式もあったが、狭い和式のトイレを改装したらしく、便座に座るとドアに膝が当たるくらいの狭さだった。
当然、洗浄便座などついていない。
洗濯場には洗濯機が置いてあったが台数が少ないので、空いている時を見計らって使わなければならなかった。
寮生活で一番苦労したのは、夜勤の時だ。
自分の部屋の隣が同じ勤務の人なら問題ないのだが、反対番だったりすると、こちらが昼間寝ているときは相手も勤務でいないからいいが、休みだったりすると、色々な物音で中々寝られなかったりする。
一応耳栓は使っていたが、それにも限界はあるので、苦労した。
こんな感じで、内弟子以来、仕事では初めての寮生活がスタートしたのだった。
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