女性隊長
隊長と呼ばれるリーダー格の人の中には女性もいた。
時々話題に上がるKという女性とはあまり一緒に仕事をしたくないというような話を聞いた。
隊長という立場上、かなり上から目線で物をいってくるらしかった。
そんなKと一緒に仕事をする時が来た。
こちらは新人のアルバイトの身なので、指示に従うしかない。
というより、指示をしてもらわないと逆に困る。
現場によって配置や手順も違うので、隊長が的確に指示を出さないと始まらないのだ。
その指示の出し方が偉そうなのは仕方ない。
女性だし、なめられないように自分を大きく見せるのに必死なのだろう。
実際、かなり大きかったが……
そんなに背が高い訳ではないが、横に大きかった。
その時は夜勤で、あまり交通量の多くない場所での工事に伴う交通整理だった。
規制をかけ、交通整理が始まると、その女性隊長は、踊るような動きで交通整理を始めた。
ニューヨークの交通整理で、黒人が踊りながらリズムよく誘導棒を振る姿をテレビで見たことがあるが、確かに彼はサマになっていてカッコ良かった。
しかし、Kはお世辞にもカッコいいとは言えなかった。
肥満体型のKは、リズム感も悪く、動きが奇妙なのだが、自分ではカッコいいと思っているのか、『こういう風にやるんだよ。』と、得意気だった。
暗闇で警備服を着た肥満気味の女性が、得意気に奇妙な動きで誘導棒を振る姿は、遠慮ぎみに言っても、不気味だった。
しかし、『普通に振ればいいのに』とは、思っても言えない。
あまり一緒に仕事をしたくないというのは、『恥ずかしいから』というのもあるのだろうと、この時気付いたのだった。
.
 




