バッタリ
行く度に三連勤になることは、俺にとってもありがたかった。
何故なら、この会社に通勤するのにも、相変わらずママチャリを使っていたからだ。
しかも、今度の事務所は、片道一時間半はかかるので、往復で三時間必要になる。
三回分の勤務だと九時間必要な通勤時間が一回分の三時間で済むわけだから、効率的だ。
その日も俺は、いつもの裏道を走っていた。
すると、後ろから
『⚪⚪~!』
と、俺を呼ぶ声が聞こえた。
自転車を止めて振り返ると、市営バス時代の先輩が手を振っていた。
『やっぱりお前か。』
そう言う先輩の元へ、自転車をUターンさせて近付いていく。
『長い夜』がかかると脱いでしまう例の先輩だ。
『何やってんだこんなとこで?』
『いや、⚪⚪さんこそ、何やってんですか?』
話を聞いてみると、市営バスが段階的に民営化するに伴い、先輩は交通局から土木事務所へ移籍したらしかった。
他にも衛生局や地下鉄に移動した人もいるらしかった。
俺達は軽く世間話を交わすと、手を振って別れた。
まさかピンポイントでバッタリ会うとは思わなかったので驚いたし、まさか土木に移動しているとは思ってもいなかった。
相変わらず、『長い夜』がかかると脱いでいるんだろうか、と思うとなんとなく笑ってしまった。




