稼げない?
派遣ドライバーの仕事中、大きな揺れに見回れたものの、停電により地震の詳細は分からなかったが、徐々に驚くような被害の全容が明らかになってきた。
横浜では、それほど直接的な被害は無かったものの、スーパーやコンピニ等の商品は消え、ガソリンスタンドには連日長蛇の列が出来ていた。
そんな中で新たにタクシー会社に転職した俺は、本社での研修と地図テストに合格し、営業所への配属が決まった。
そこは市営バスの仕事をしていたときに走っていた路線をエリアに含んだ営業所だった。
相変わらず自転車通勤を選択した俺は、片道一時間近くかけて通勤することにした。
出勤は八時なので、電車もあるが、退勤は始発前になることも多いので、自転車通勤を選んだのだ。
隔日勤務のタクシーは、上限21時間勤務になるので、最大で翌朝の五時まで。
午前二時や三時に上がることも多く、そうなると始発まで待たなければならないのが分かったので、自転車通勤にしたのだ。
営業所に配属されると、最初は教官と同乗しての研修になる。
この時、最初は教官が運転して、俺は助手席に乗る訳だが、タクシーを拾った客にしてみれば『?』となる。
前に二人乗っているのだから、おかしな光景だ。
そして、四人組の客を拾ったときなどは、助手席にも乗るので、俺は降りて戻ってくるまでその場で待つことになる。
幸いにもそのようなことは一度しかなく、たまたま短距離のお客だったので、一時間もしないで戻ってきてくれたが、長距離の客だったらどうしたのかは不明だ。
教官と同乗しているときは、色々な話も聞けたが、震災のあと自粛ムードで夜に飲み歩く客が少なくなり、売り上げが全く上がらなくなったと言っていた。
タクシーは歩合なので、売り上げが上がらないということは、給料も少ないということなのだ。
長年勤める先輩ですら稼げないという話を聞き、先行き不透明なまま始まったタクシー業務だった。
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