次の仕事
この仕事を始めて一年近くたった頃、派遣先の事務所が移転した。
今までは自転車で片道一時間ほどだったが、それより20分程遠くなった。
今まではほぼ平地移動だったが、今度のところに通うには山坂も多く、無料でジムに通うくらいの効果はあった。
この頃には正社員にならないかとの誘いも受けていたが、明らかに収入が落ちるのは目に見えていたので、やんわりと受け流していた。
とはいえ、このまま派遣の仕事を続けていたのでは、相変わらずトースターも買えない生活から抜け出せないのは目に見えていたので、新しい仕事を探すべく動いていた。
大型二種の免許を持っているので、バス以外にもタクシーなどの普通二種の仕事も出来る。
そんな中で色々と転職情報誌を見ていると、とあるタクシー会社の募集が目に止まった。
そこのタクシー会社は、市営バスの仕事をしているときによく見かける会社で、お互いに道を譲り合ったりもしていて、とても印象のいい会社だった。
平均給与が年収600万ということで、収入面でも魅力的だった。
3月の初め、俺は早速面接にいくと、4月からの入社が決まり、派遣先と派遣会社に退職の旨を伝え、今より余裕のある生活を想像して、色々と思いを巡らせていた。
……あんな事が無ければ、タクシードライバーとして、今よりも豊かな生活を送れるはずだったのに……
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