一体何が?
ヘアーヌード。
それは、当時の中学生男子にとっては、とても甘美で夢のようなワードだった。
今となっては、当たり前のように、大女優でさえ、ヘアーヌード写真集を出す時代だが、
当時はまだ、夢のまた夢だった。
アダルト雑誌のヌード写真などでも、オッパイは写っているものの、下はというと、ブルマーのような分厚いパンティーを履いていた。
薄いパンティーで、アンダーヘアーの形がうっすら分かる程度でも、発禁の対象になったのだ。
そんな時代。
中二の三学期に転校した俺の元に、しばらくたったある日、小学生時代の友達から電話がかかってきた。
母親から電話を取り次がれ、
『もしもし…』と電話に出てみると、
『おい、新聞見たか?新聞!
ヘアー解禁だぞ!』
いや…あの……
『久しぶり』くらい言え!とツッコミたくなる俺。
第一声がそれかい!
【後日談】
それから更に二十数年がたったある日。
懐かしくなって、彼の実家に電話をしてみたことがある。
『あ、もしもし、○○といいますけど、ミノル君いらっしゃいますか?』
応対したのは、お母さんらしき人の声。
『は?』
もう一度。
『小学校の同級生の○○といいますが、ミノル君ご在宅ですか?』
すると、
『少々お待ち下さい。』
やがて、『もしもし』という、今度はお父さんらしき人の声。
『用があるのは○○(弟の名前)ですか?ミノルですか?』
『あ、ミノル君お願いします。』
その途端、受話器の向こうのトーンがガラッと変わった。
『うちにはなぁ!ミノルなんて人間はいないんだよ!!』【ガチャン!】
【…ツー…ツー…】
…その後の彼の人生に、
一体何が?
目が点になったまま、たたずむ俺がいた。
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