長髪
長い髪は邪魔くさくてあまり好きではなかったけれど、髪の手入れをしてくれる時だけは母は弟よりも私についていてくれたから、私はその長い髪がとても大切だった
もう自分で身の回りのことが出来る様になった今でもその時の想いが残っているせいか私は髪をまともに切ったことがない
寧ろ、自分と同じ年月を歩んできた相棒のようにさえ思えてきている
体を覆う糸のカーテンは私を容赦ない社会の理不尽さから守ってくれるような
辛くて苦しくてどうしようもない時は、私の濡れた顔を隠してくれるような
そんな温かさがある
だから、私は自分の半身のようにちゃんと手入れして、大事に大事にしてきた
手からはらりと溢れるそれは私の足取りに合わせて風の形を象ってゆらゆらと揺れる
私が歩けば、皆が振り返った
男友達には、そんな繊細な髪似合わないとよく言われた
それでも、私は他人の意見なんか知ったこっちゃない
この髪は自分にとって自慢なのだから
でも、いいんだ
今日、私は髪を切ります
好きな人が出来たから
その人は、髪の短い人が好きだから
何年も何年も一緒に居てくれてありがとう
さようなら
「す、好きです、、、明美さん!!
つ、付き合ってもらえませんかっ!!」
「え?、、、拓馬くん!?
どうしたの?その髪!?」
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すいません
恋人が髪の短いのなんてらしくないと言うので、またどうぞよろしくお願いします