アイスコーヒー
ちっ、なんでこんな時に限って
交差点の先には群青の制服と帽子を目深に被った男がいる
普段は気にも求めないのだが、疾しい事があると無性に気に障る
どうしても間に合わねーから、借りたっつうのによ
その日はついつい、いつもより多く携帯のスムーズを押してしまった
結果、いつもの電車に間に合わず、快速待ちをしているそれに乗るため、隣駅まで自転車を走らせているところだった
通り過ぎるのは一瞬だし、借りパクなんて分かるはずもないが
そうは思うが、小心者の本性が中々ペダルを踏んでくれない
とりあえず、信号待ちの間に覚悟を決める
あー、どっか行かねーかな
こめかみから伝う感触が気持ち悪い
とにかく今日は天気が良すぎる
しかも、風も吹かないので、じわじわとした日射が帽子の中を蒸すのを耐えるしかない
誰かが熱中症でぶっ倒れない限り、この必要外に熱い制服はなくならないんだろうな
職業柄、怠そうな顔をするわけにも行かず、涼しい顔で立っている
早く交代来てくんないかな
……なーんて、思ってたりして
涼しい店内で冷えたアイスコーヒーに口をつけながら面した広い窓の外を眺める
「ほんっっと、ごめんっ!!おまたせっ!」
「もー、本当に遅いよ
待ちくたびれた」
待ち人が来たので、残っていたそれを一気に飲み干し席を立つ
ちらりともう一度外を見た時にはお巡りさんは相変わらずそこにいて、自転車のおにいさんはいなくなっていた