第一頁 魔王召喚される
新しいシリーズ始めました。
「不朽不滅の王」
それは彼ーアルヴァリオスが、決して朽ちる事がない程に、生命力と魔力を有している事から付けられた異名である。
彼が魔王の席について250年経ち、女神エリサより他の世界へ渡航しろとの命が彼に下った。
そして、突如彼の足元に巨大な魔法陣が現れてーーーー
そして目を覚ますと、俺は芝生の上で寝転がっていた。周りを見ると果てがなさそうなほど木が並びに並びまくっていた。
マジかよ。いくら何でもこれは場所が過ぎるだろ、もうちょっと街の中に出すとか考えてくれよ。お前思いやりと創生を司る女神だろ。思いやりはどうした、思いやりは。
取り敢えず、この世界で何が出来るかだけは確認しておくか。そう思った俺は中位風属性魔法、『風太刀』を発動した。その瞬間俺の前の木が折れ、俺のいる方向の反対側に吹き飛ばされていった。
…うん、魔法は使えるようだな。しかし何だろうか、この魔法を使った後にくる脱力感は。こんなこと今まで一度としてなかったんだけどな。
なんとなく、もう魔法を行使する事はやめておいた方がいい気がする。
そう思って俺は人を探す事にした。
街だのなんだの、人が暮らせるような所を自力で探すのは骨が折れそうだからな。知っている人から聞いた方が早い。
運の良い事に、それから5分ほど歩いた所で人影を発見した。声をかけようと近づくと話声が聞こえてきた。
「どうだルシャ、まだ行けそうか?」
「あーもう無理かも。帰りのことを考えると魔力が持たないと思う。」
そう言いながら女は手を左から右へと動かしていた。
何かあの動作に意味があるのだろうか。俺も見様見真似で手を動かしてみると、目の前に半透明の四角形が現れた。そこには俺のステータスが書き並べられてた。
勿論、こんなシステムがある事にも驚いたが、何よりその一番上に書かれていた文字を俺は思わず5度見くらいしてしまった。
何故ならば、不朽不滅の異名を持つ俺には今まで縁の無かった概念が、堂々と書かれていたからだ。
生命力《ヒットポイント》: 3600/3600
魔力量《マナポイント》: 4268/5080
マジかよ。この世界じゃ以前みたいな無茶をすれば、俺も普通に死ぬってことか。
魔力が減っているのはさっきの風太刀だろう。あいつ結構食うんだな。
気になったので他の所も確認する事にした。
スキル: 魔術 式変 麻痺毒耐性 空間干渉
属性: 呪解 魔神 不朽不滅
不朽不滅の横には鍵マークがついていた。これは、今は使えないと言う事だろうか。
取り敢えず、あの二人は今から街に戻るようなのでついでに連れていってもらおうと思い、声をかけようとした。
しかし次の瞬間、その二人の背後に巨大な蛇のような怪物が現れた。
二人も直ぐに気づいたらしく、後ろを振り返って武器を構えた。女は魔法を銃に込めて打ち出し、男が斬りかかるが、見えない何かによって双方ともに弾き飛ばされてしまった。
結界か。それも結構な強さの。
助けに入るか…
そう思って登っていた木の上から飛び降り、蛇と二人の間に立ちはだかった。そして右手に持った剣の柄に力を込めると透明の刀身が姿を見せた。
そしてそれを思いっきり地面に突き立てた。その瞬間、蛇の周りに大量の刃が地面から突き出されるようにして現れ、蛇は身動きが取れない状態になった。
俺の持つ神器、《イジス・アウラトムーン》の持つ属性は、剣としては特殊な、物理・魔法属性、俺も持つ不朽不滅属性、そして神・貫通属性。なんであろうと、他の神器の本体以外は貫通してしまう属性である。だからそんな魔物が作った結界など、痛くも痒くもないのだ。
俺はとどめを刺すべく左手を右手の上に重ねて叫んだ。
「燃え尽きろ。『白雷』」
そして結界の中に生まれた雷は、その蛇の身を焦がし、灰になるまで焼き尽くした。
脅威が去ったことを確認した俺は後ろを振り返って言った。
「街に連れて行ってくれないか。」