既読
翌日。
「昴さん」
五月雨さんに声をかけられた。
「ん?どうしたの?」
「昨日のrain、既読無視?」
「rain?」
僕は何のことかわからずスマホを弄って確認した。そこには既読状態になった彼女からのメッセージがあった。僕は無意識に開いてしまい、読んだつもりでいたのかもしれないと思い
「ごめん、見たつもりだったのかな……」
正直記憶にないが言葉と取り繕いながら返事をして、途中で言葉に詰まった。内容が内容だけに。
相談事があるので一緒に食事に行ってほしいという内容だった。
「これって……」
「文面の通りだよ」
「いや、さすがに二人でこういうのは……僕既婚者だし」
「何を言ってるんですか」
「ふぇ?」
思わずおかしな返事をしてしまった。
「ふぇ?って……確かに文面が悪かったね。私と同期の山本、いるでしょ?」
「山本君?」
もちろん知っているがなぜ今山本君の名前が出てきたのかわからず、山本君を知らないような感じの返事になってしまった。
「この部署で一番下っ端が私たちだったんだけど、一応下が入ってきたわけだし」
「まぁ、一応だね」
「その三人で親睦を深めるってのも悪くないじゃないかなって思ってさ。相談の方が抵抗感少ないかなって。」
なんてわかりにくい。その文面からしたら明らかに二人で食事に行きたいと思ってしまうぞ。男ってのは大概そうなんだよ。そもそも、文面通りではないし。
「それはいいね。でもそういうことならそうと言ってくれたら。変に誤解しちゃうよ」
僕はそう笑って返した。
「別に私は……りで……いけど」
「え?」
小声で何かを言ったとは思うがよく聞き取れず聞き返した。
「なんでもない!金曜日の夜だから」
そう言って五月雨さんは振り返り仕事場へ戻っていった。ゴールデンウィーク、大型連休に入る前日だった。