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<二流暗殺者>

 首都警察本部警視総監室


 「あとは向こうの警察に任せるしかない」


 報告を聞いてそう答える部長のさらに奥には黙ったままの警視総監がいる。

 本部に帰った後、俺たち全員は総監室へと呼び出された。報告の意味もあるが特別身辺警護隊がいなくなった以上、彼らの仕事もしなくてはならない可能性があるのだ。


 「これからは・・・どうしましょうか、総監」


 全員が総監の答えを待ち、総監室は静寂に包まれる。


 「変わらない。ジャッカルは殺すしかない」

 「しかし、奴は依頼を受けて殺す殺し屋です。しばらくはもう表舞台に姿を現すことはないでしょう」


 総監の言葉に部長は持論を返す。今回だってようやく手に入った情報でありこのままでは追うどころか見つけること自体不可能なのだ。

 しかし、総監の意志は固い。


 「近日中に国会で魔法省設立に向けての議論が行なわれる知ってるな」

 「ではそれを囮にジャッカルをおびき寄せるのですか!?」


 魔法省。それは国ですべての魔法使いを一括管理しようという構想のもと考えられた新しい省である。これに反対する魔法犯罪組織によるテロやそれこそジャッカルによる政治家の暗殺も考えられる。


 「政治家を囮になんかできるわけがないだろう。狂犬を使うんだ」

 「本気ですか」

 「ああ」


 俺たちにはわからない話が俺たちの前で行なわれる。


 「君が指揮を取れ、報告は随時だ」

 「わかりました」



・・・・・



 俺たちは部長室に場所を移すと総監の言っていたことについて説明を受ける。

 狂犬とはかつていた詠唱者の殺し屋なのだという。年長者である曹長が記憶をたどり死んだはずではないかと部長に聞くが実際には刑務所にいるらしい。

 狂犬とはジャッカルと同じく殺し屋なのだが、派手な殺しを好み、狂犬の暗殺はすぐにわかるほどであった。しかし、殺し屋である以上はそれを依頼した依頼人がいる。当時の捜査陣はそこに目をつけてある偽の情報を流したのだという。

 その情報とは被害者と利害関係のある者たちに厳しい取り調べをしている。拷問のようなことが行なわれているといった情報だ。その情報は弁護士が告発し、新聞が警察を批判するという形で流された。

 当時の警察はまだ強権的であったし、弁護士や警察幹部、マスコミ幹部も同じ大学の出といったこともあり連携を取ったのだ。狂犬はまんまとこの罠にはまった。狂犬の誤算は依頼者全員と顔を合わせていたことである。このままでは自分の素性が依頼者たちによって明らかにされてしまう。結局、狂犬は捜査陣の目論見通り依頼者を殺して回らなくてはなり、依頼人も殺す殺し屋として依頼がなくなるばかりか、それを罠とした警察によって捕まることとなったのだ。

 この作戦により依頼人が数名殺されるという事態になったが、もともと依頼人であり特に問題にもならなかった。

 それからは部長とエキドナの話が始まった。


 「それで、狂犬がどのようにジャッカルを捕まえる囮になるのですか?」

 「奴らは一度だけだが依頼がかち合ったことがある。そして、この時お互いに顔を合わせたはずなんだ。」

 「つまり狂犬が生きているという情報をジャッカルに伝えるわけですね」

 「そういうことだ」


 ここからは俺たちの専門外である。上が作戦を考え、それに対応するのが俺たちの仕事だ。こうして大体の作戦が決まり、俺たちは来るべき日に備えて再びジャッカルと戦うために訓練に励むことにした。



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