<警護任務>
警護は首都警察本部から拘置所までの予定だ。上半身に拘束衣を着せて猿轡を噛ませると、魔法を通さない対魔金属で作られた護送車へと乗らせる。対魔金属とは今でも全く詳しいことがわからない物質ではあるが、昔から使用されてきた希少な金属である。
車列の中央に護送車を配置して前方に警部とエキドナとデュラハンが、後方に曹長と俺とミミックが乗車して警護に当たり、さらに前後をパトカーに挟まれる。
「ジャッカルとは一体どんな奴なんですか?」
出発してしばらくし、助手席の俺は無線を通してエキドナに聞く。
「調査記録では魔導書使いの殺し屋だとされている」
「・・・されている?」
「ああ、公式にはジャッカルという殺し屋に関する資料はない。未解決事件の手口からそういった殺し屋がいるのではないかと推測されて名づけられた幻想生物みたいなものだ」
実際には誰も見たことがない生物、一般で言えば昔話や伝説などに出てくるようなヴァンパイアや人狼といった存在と同じだ。
「でもな」
そんなことを考えていると、警部が無線から話しかけてくる。
「それだけ未解決の事件が起こってるということでも―――」
ドガン!
すさまじい轟音とともに砂煙が辺りを覆った。その瞬間、曹長はアクセルを踏み込むが固まったかのようにその場から動かない。
「降車!車から出ろ!」
曹長の指示で外に出ると、砂煙が薄くなっていた。見れば反対車線の奥にある建物と道路の端から端まで貫いたような巨大な石柱で後ろ半分がつぶれた護送車が見えた。
「警察だ!とまれ!」
護送車に駆け寄ると、後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。逃げまどう人ごみの中、一人の会社員風の男を後ろのパトカーに乗っていた護衛の制服警官が拳銃で制している。
「うぐっ!」
パン!
一瞬のことだった。男は振り向くと同時に鉄の杭を警官に向かって投げた。警官も銃を撃つが、地面に弾がめり込んだだけで男には当たらない。男の動きは明らかに身体強化をした動きであり、何らかの関係があることは疑いようがなかった。
目が合う。
その瞬間逃げ出した男を、俺は同じように身体強化魔法をかけて追いかける。
「大丈夫ですか」
「おい、大丈夫か、しっかりしろ!」
銃声を聞いたミミックと、相棒の警官が倒れた警官のもとへ来たのだろう。俺はそんなことを後ろで聞きつつ男を追う。




