<暗殺者ジャッカル>
逮捕から数日後、俺たち「ワッパ」の六人は魔法犯罪対策部の部長室に呼び出されていた。
「初めての逮捕ご苦労だった」
「ありがとうございます。それで今日はどういったご用件でしょう」
「実は、君たちのこの間逮捕した男の身辺警護を頼みたい」
話を要約すると、この前逮捕した奴は盗品を売る以外にも依頼されて盗んだものもあるらしい。そして、依頼主が奴の自白を阻止するために殺し屋を雇った可能性があるというのだ。
「それは奴がそう思い込んでいるだけではないのですか?」
「実は、公安部と警備部によればジャッカルが街に来ているという情報がある」
「ジャッカルが!?」
エキドナは声に出て驚き、曹長と警部は苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべる。
「伝説の殺し屋といわれるジャッカルが相手なのであれば、それこそ総監直属の特別身辺警護隊をつけるべきではないですか」
「彼らは今、ジャッカルの捜索と排除に向かっているんだ」
「警護隊がですか」
それから俺たちは驚きの真実を教えられた。警視総監直属の特別身辺警護隊とは実際には銃器を使う魔法使いたちの暗殺集団なのだという。今から二十年以上前、魔法使いによる犯罪やテロが蔓延していた時期に設立されたらしいのだが、確かに普通の人間が銃で魔法使いに勝てるのであれば、魔法使いに銃を持たせればさらに強くなるだろう。
「そもそも、普通の警護任務しかしない部隊が総監直属という時点でおかしいだろう」
「結局は殺すことが目的の部隊だ。漏れたら責任問題になるし、総監としては所の情報は常に把握しておきたいからな」
「では、逮捕が専門の我々が総監直属なの理由があるということですか」
「逮捕を掲げてる以上、逮捕時に死亡したら責任問題になる。それに警護隊の戦力が不足した際にはその予備としての戦力になるとも考えているからな」
「なるほど、我々が総監直属なのは我々の暗殺が明らかになった時に総監に責任が行くようにということですか」
こうして俺たちは警護任務に就くことになった。エキドナは最後まで納得がいかないようだが、曹長と警部は割り切って警護の準備を始めている。そもそも曹長は陸軍の出向なので首都警察に口をはさむ権利は持っていないし、軍人なので上からの命令に従うだけだと言う。警部にしても何も暗殺を命じられたわけではないし、そうするしかないからそうなっていると言うだけだ。
俺たち新人の三人はそんな光景を見ながらこれからの警護計画を確認するだけだ。どちらが正しいのかはわからないが、少なくとも部長から言われた件は今回の警護には全く関係がないということだけははっきりしている。




