深夜の後始末
襲撃者を制圧した後、エドワードは生きている者たちを一人一人説得してまわり話を聞かせてもらって回った。
最後に残ったリーダー格の者は少々頑固ではあったが、色々な手段を用いた説得の甲斐もあり話してくれることを承諾させたのであった。
「それで、宰相はなんと?」
「……この世の者とは思えないほど太った女を攫えと……なぁ、あの2階にいたものは幻影であったようだが、この世界にあのようなおぞましい容姿の人間が本当に実在するのか……?」
と、リーダー格の男は、世にも恐ろしいものを見たように震えている。
それを見たエドワードは気の毒そうに
「あぁ、あなた方敬虔なウォルセア教徒には理解しがたいでしょうが実在します」
現在は違うのだがそこまで情報を与えるつもりはない。
「なんと恐ろしい……実は俺達何人かの者以外は国外から金で集めた寄せ集めの集団なのだ、元々は直属の者だけで当たる予定だったのだが、悪魔のような恐ろしい存在を目にするのも主神の意思に反すると離脱するものが大量に出てしまってな……俺も家族が居なければ……」
とポツリとこぼしたのであった。
* * *
「で?、話は聞けたのかよ?」
話を聞いて戻ってきたエドワードヘ、アドルファスは問いかけた。
「それなりには、半分以上が金で雇われてた連中ですからね。そこまで高い忠誠心はないようですよ」
とエドワードは肩をすくめる。
「まぁだからこそ大した事情はご存じない様でしたので、リーダー格の者と何人かの直属の手下のみ置いてもらい、後はフィルドへ連行してもらう事にしました」
「ふーん、直属の方はどうすんだよ?」
「要請が来ておりますので、もう少し尋問したあとは生かして証人としてアメフットへ送還しますよ」
と、エドワードが渋い顔で答えた。
「要請だと?」
不審そうに聞くアドルファスへ
「ええ……アメフットもこの際なのでぜひ一緒にゴミ掃除がしたいと協力を要請されたんですよ……」
と肩をすくめるエドワード。
「ほーう……。 てことは何だ? 三国合同ゴミ掃除を敢行するってことか?」
と面白そうにアドルファスが聞いてくる。
「えぇ……そのように話し合いは済んだとフィルド王より話が来ております……全く面倒な……」
とため息を漏らすエドワード。
「あの宰相そんなに嫌われてんのか」
「政治手腕はまずまずといったところでしょうが、あの国ウォルセアに負けないほど主神ウォルセア信仰が盛んなのはご存知ですよね?」
「あぁ」
「あの宰相のご令嬢なんですが、ずっと国外で派手に豪遊していた為に大変有名な方でしたがアメフット国内では宰相が緘口令を強いて噂が流れないようにしていたらしいのですよ」
「娘可愛さってやつか?」
ブサイーク侯爵を思い出して尋ねるアドルファス。
「それは分かりませんが、今回の聖女候補選抜の知らせをアメフットの神殿が『ご令嬢のふくよかさ』もあわせて国内に向けて大々的に公表したそうなんです。 国としても教義に反する方が選ばれたと知って大変対処に困ったそうですよ。 まぁ宰相本人も困ったからこそなんとしても聖女にゴリ押して誤魔化したかったのでしょうが」
「あぁ、あの国確か『暴飲暴食を許さず』って教義を律義に守らなきゃなんねぇんだったか」
と思い出したようにアドルファスは頷く。
「えぇ、アンタみたいな人間はあそこじゃとても暮らせないでしょうね。 それにあの宰相他にも色々と変な野心を抱いていたので結局王に強く不信感を持たれ、政治的に切り捨てられたようですよ?」
とニヤリと笑うエドワード、それを見てアドルファスが嫌そうに
「どうせ、そうさせたのはテメェだろうがよ」
と嫌そうに吐き捨てる。
「人聞きの悪い事言わないでくださいよ。 冤罪をねつ造したわけじゃあるまいし……ちゃんと証拠はそろえて送って差し上げたんですから」
と眉をひそめながら答えた。
「なんにしても結局、今回の聖女選抜戦は茶番てことになるのか?」
「何事もなければ、公国から聖女を選ぶことになると思いますよ……ブサイーク侯爵からも『くれぐれも選ばれないように頼む』と言われておりますしね」
とエドワードは少し呆れた口調になる。
「あの親父ブレねぇな」
と珍しく少し困惑気味に話すアドルファスであった。




