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みんなから見た天雷生徒会長

「…はああぁ。こんな感じで、こいつぜんっぜん聞かねぇんだ。お前らからもなんか言ってやってくれ」


「道奈、考え直せない?」


「道奈ちゃん、絶っ対やめたほうがいいと思うぜ」


「せめて匿名にすることはできませんか?」


 4人からの総攻撃。


 現在、昼休み。昨日の図書室の帰りに創也からさらなるアドバイスを受け競技のルールを改善した後、寮の部屋で生徒会長宛に手紙を書いた。その手紙を生徒会に入っているらしい暁人に渡してもらおうとお願いしたところ、この有様である。


 …どこまで評判が悪いんだ、その天雷という生徒会長は。


 でも、これに関してはテレビ男より右に出るものはいないと断言できる自分は、やはり毒されているのか。


 ちらりとテレビ男を見る。


 私の視線に気づいたテレビ男があの表情をする前に目をそらした。


 ふう。危ない危ない。またあれを見て悪寒さんを呼び起こすところだった。


 テレビ男はおいといて、この総攻撃に対応しよう。


「考え直すつもりはないかな。あと、匿名にしたら私の提案が通るか分からないじゃん。暁人がその人に渡してくれないなら、他にも考えがあるよ」


「…道奈、何するつもり?」 


「生徒会総会が今月あるみたいだから。その時に直接言う」


「うひゃー。道奈ちゃん強ええええ。全校生徒の前で言うのか」


「私もできれば手紙で済ましたいよ。でももうすでに目立ってるみたいなもんだから、これ以上目立っても同じことだし、やれないこともないね」


「はああぁぁぁ。道奈って変なところで開き直るよな」


「…火宮。手紙の方が良さそうだ」


 涼と創也がそれぞれ私の発言に反応する中、弟子が味方についてくれた。


「そのようですね。今日の放課後、会長に渡してみます。ですが、荒木さん。約束してください。彼とは絶対に接触しないように。それを守るのが条件です」


 そこが暁人の妥協点のようだ。


「その時は全力で逃げるから大丈夫っ!」


「…逃げれたら、な」


 弟子が不穏なことをボソッと言った気がしたが、もう遅いぞ。


 クラスの現状を変えるために、ちょこっとだけ試すことに決めたんだ。そのちょこっと試す範囲で、できることがある間は努力を続けてみるつもりだ。


「はい。これが手紙ね」


 手に持っていた手紙を暁人に渡した。


「友人として、本当にしたくはないのですが、選択肢は無いようです」


 それを渋々受け取る暁人。


 今までのみんなの反応から思わず聞いてしまう。


「その天雷って生徒会長はそんなにひどい人なの?」


 すると涼が珍しく真剣な表情で教えてくれた。


「あぁ、やばいな。どれくらいやばいかって言うと、体育委員の奴ら男女構わず全員フェロモンで下僕化して体育祭の全権限を手に入れるくらいやばいぜ」


 げ、下僕…。そして気になる単語が出たな。『フェロモン』か。


「道奈、覚えてる? 入学式の次の日の委員会決めの時、体育委員だけなかなか決まらなかっただろ?」


 残念ながら、覚えてない。もっと言うと、あの時は早くじっちゃんに会いたくて気にもとめてなかったな。よって、創也の問いに首をフルフルと横に振って答えた。


「体育委員だけ残った理由は、下僕になる未来がみんな見えてたからだ」


 なんと、有名な話だったらしい。その体育委員にならざるを得なくなった生徒が哀れだ。


「他のクラスではあえて下僕になりにいく奴もいたみたいだぜ。あいつのフェロモンの虜っつう感じだな」


 創也の情報に涼が付け加えた。


 喜んで体育委員をする人もいるのか。私の哀れんだ気持ちを少し返して欲しい。


「そうなんだねえ。暁人はその人のことどう思う?」


 暁人は同じ生徒会にいるわけだから、私たちよりもその人のことを知っているとみた。この機会を使ってより詳しく聞いてしまおう。


「生徒会の業務をこなす姿に関しては尊敬してます。しかし、私情が挟むとフェロモンを乱用するので注意が必要です」


「参考にさせて頂きます」


 暁人の的確な答えに私も思わず敬語で返してしまった。


「それにしても、暁人はよく生徒会なんかやってられるよな。しかもあんなフェロモン野郎の元で。創也なんて、中等部でも誘われてたけど断ったんだろ?」


「まあ、断った理由は今回それだけじゃないけどな」


 涼の質問に、そう答えた創也はなぜか私を見た。みんなの話を聞いても尚、天雷会長に手紙を出すのか、と返事を求めているのだと判断して私が思っていることを伝える。


「ま、なんとかなるよ。教えてくれてありがとね」


「道奈ちゃんは呑気だなああああ」


 涼の言う通り、これは呑気なのだろうか。それともやばい人の比較対象がテレビ男って言う時点で問題なのか?


「道奈、何かあったら必ずホウ・レン・ソウを心がけて」


 創也がここで突拍子もないことを言い出した。


「ほうれん草を持ち歩けばいいの?」


「あははははは!! ほうれん草持ってどーすんだ!!」


 涼が笑い出すのを聞き流して、創也の返事を待つ。


「報告、連絡、相談、の最初の二文字をとってホウ・レン・ソウと言うんだ。一度くらい聞いたことがあるかと思ってたけど、初めて知った?」


「うん。初めて。そんなフレーズがあったんだね。紛らわしい」


 でも新しい日本の常識をこれでまた学んだな。


「…なんかあったら俺にも連絡しろ。力になってやる」


「ありがとう。オニ・ヤマ。創也も、何かあったらまず連絡するね」



 天雷生徒会長…。みんなの話を聞いて、自分なりにその人に遭遇した時の対策を立てとくことにした。



 ****



 放課後、


 宿題とかやることを始める前に、真子に電話をかけようと思う。

 昨日、創也が紹介してと言われたことを忘れていない良識のある乙女だからだ。


『もしもし。今度はどうしたの』


 電話をかけてすぐに真子がでた。


「もしもし、今大丈夫?」


『この後宿題する予定だから手短に頼むわ』


「じゃ、単刀直入に言うね。創也が真子を紹介してほしいって言ってたんだ。紹介してもいい?」


『はああ!?』


 そこまで驚かなくても。


『そんなのダメに決まってるじゃない!! どうしてそんなことになったのよ!』


 目立ちたくない真子にとっては創也も人前で関わりたくない目立つ存在と言うことか?


「私もどうしてこうなったのかは分かんないの。突然見たこともないくらい凍ってしまいそうな笑顔で怒りながら紹介してって言われて、でも真子だって知って怒りは収まったんだ。だから真子が嫌いとか、そういうことじゃないと思う。そこは安心していいよ」


『…そんな説明でわかるわけないじゃない。ちゃんと一から状況を教えて』


 細かい真子にも納得してもらえるくらい昨日のことを事細かに伝えた。

 やっぱこういうところが面倒だなと思う。


『…そういうことね。はああぁぁぁ。その明菜って人にはいい迷惑だわ』


 なんで怒った創也じゃなくて明菜?


『…それにしても。やっぱりそういうことになってたのね、あなたたち。…(恐れていてた通り、シナリオと全然違う。)』


「どういうことになってるの?」


 明菜もそうだが、時々自分にしか分からないような何か含みのある言い方をするのは相手に失礼だと思うぞ。こっちからしたら、ちんぷんかんぷんだ。


『…それに加えてあなたは無自覚なのね。はあああぁぁぁ。ますます厄介だわ』


「さっぱり分かんない。わかるように説明はしてくれないの?」


『いつかわかるだろうから、私からは言わないでおくわ』


 なら今ここで私に言わずに、独り言レベルで勝手に呟いていてほしい。と言う不満は押し込めて話を進める。ついでに聞きたいことがあるのだ。


「もういいや。創也に伝えとく。断る理由はシャイだからとかでいい?」


『ええ、それでいいわ』


「それと。天雷って生徒会長について真子はどう思う?」


『…また急に厄介な人について聞いてくるわね。今度は何』


「もしかしたらその人に絡まれるかもしれない事態になりそうで、対策たてとこうかなって」


『…はああぁぁ』


 なんか、今日はよく人からため息をつかれてる気がする。真子はその中でもダントツだな。


 私は何も悪いことはしてないし、困らせることもしたつもりはないのに、なぜだ。


『…天雷霈。注意するべきことはただ一つ。あのフェロモンには当てられないように距離をとること。じゃないと言いなりになるわよ。そして好きなことは、人が困ってたり苦しんでたりする姿を鑑賞すること。嫌いなことは、期待はずれなもの全部。私が言えるのはこれくらいね』


「なるほど。ありがとう。真子って色々と学園について詳しくて助かる」


『…別にそうでもないわよ。これくらいここに長くいればみんな知ってるわ』


「そうなんだ」


『話は以上? そろそろ宿題を始めたいんだけど』


「うん。忙しいのにありがとね。また明日」



 電話を切って、考える。



 まず、みんなが何度か言ってた言葉『フェロモン』について。


 辞書で調べた結果、周りにいる同種の個体に特定の動作や作用を起こす、体外に分泌される有機化合物の総称を『フェロモン』というらしい。

 そこから、警告フェロモン、性フェロモンと色々な種類に分けられてくるそうだ。


 この天雷という人物。このフェロモンを自在に操るということでいいのだな。

 なんか、すごい人だな。まるでスキルのようだと思った。


 次に、


 好きなもの。人が困ってる、苦しんでる姿。

 嫌いなもの。期待はずれなこと



 嫌いなものに関しては、逆を言うと、期待通りのものは大丈夫と推測する。


 私が天雷会長だったら、荒木道奈という生徒は周りの話からしてマジックが上手な子と思うはずだ。


 なら遭遇したり絡まれたら距離を取るためにもミニ爆発マジックをいつも制服に仕込んでおく。それで目くらましにしていつでも逃げれるようにするのだ。


 これなら天雷会長がキレやすい人だったとしても、期待通りのマジックでお見舞いするのだから、逆上して追いかけるとかはないだろう。


 あとは…変装?


 カツラをカバンに入れて持ち歩くか。カラーコンタクトは一人でできないのでパスだ。


 他にできる対策は…ないな。



 対策を簡単に考えたあと、早速やる事リストを消化するのに集中することにした。


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