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所謂、転生者で傍観者


 私が好きなもの。


 自分の名前。


 私が嫌いのなもの。


 目立つこと。




 雨倉真子。


 それが二度目の人生での私の名前。


 

 もともと貧乏でも、お金持ちでも無い。普通の家庭で普通に暮らしていた。


 そんな日々が変わりだしたのは6歳の頃。


 お風呂場で足を滑らせて頭を打ったのをきっかけに、全てを思い出したの、



 前世での自分を。



 私は後悔まみれの独身女だったようね。


 あの時ちゃんと勉強してたら、

 あの時ちゃんと考えてたら、

 あの時ちゃんと話してたら、


 ちゃんとした望む人生を歩めたかも知れない、順風満帆で生きてるあの人たちみたいに。



 そんな後悔にびっしょりと濡れた記憶に毒されて、二度目の人生はそうならないようにしようと決心したの。



 その日を境に、勉強、人間関係、習い事と、一日も無駄にしないように生活した。


 おかげで、勉学は頑張った上に前世の知識も合わさって、テストでは毎回満点。人間関係も良好。私の周りにはいつも人がいたわ。男子からの告白も何度か受けた。小学生相手に恋愛はできそうになくて全部断ったけど。


 そんな風に、順調に人生を歩み出せていると実感してた最中(さなか)、四年生に上がった途端、私に誰も話さなくなったのよ。まるで、私がいないかのような扱い。


 なんで、どうして、どこで狂った。

 勉学も頑張った。人間関係も頑張った。

 なら何がダメだったのか。



 私が目立ってたのがいけなかったのよ。



 後から知ったのだけど、クラス総無視の引き金は私がクラスの中で男女ともに人気の男子から告白されて、しかもそれを振ったことだとか。女子も男子も恋愛絡みの妬みというのは陰険なことをしでかしちゃうものなのね。



 でも当時はひどくパニックになったわ。ちゃんとした人生を歩まないと、このままでは前世女のようになる。半ば脅迫概念で、私は学校を転校することにした。



 そして転校先になったのが鳳凛学園初等部。



 学力も成績も十分で試験にも合格し、特待生として編入。


 そして、A組の教室であの人たちを見た瞬間、気づいたの。



 ここは、あの乙女ゲームの世界だ、って。



 その時から好きになった私の名前。特に苗字の『雨倉』。私はこれから目立つことはないと提言してくれているようで、安心する。


 新海瑞樹という癖のある女子生徒とも仲良くなり、学園の主要人物――特に攻略対象者達――には近づかないように傍観に徹した。ここなら順調に今度こそ目立たず、ちゃんとした人生を歩める。


 そう思ってた、中等部に入るまでは。



 荒木道奈。私の一つ後ろの席に座る、女子生徒。



 『荒木』という苗字もあってか、攻略対象者たちと関わりが深い。しかもあの鬼山に敬語を使わせるって前代未聞よ。ゲームでもそんな描写なんてなかったわ。

 さらには荊野薫子まで味方に引き込んだみたい。まぁ、彼女は周りの言葉を鵜呑みにするような箱入りお嬢様だから丸め込まれた可能性もあるわね。


 入学式の時からやけに目立つわ、昼休みには手の込んだマジックを披露しだすわ。それに加えてあの容姿。


 ゲームでの過去編にそんなエピソードも、そんなキャラもいなかった。



 一体何者なの。



 私と同じ転生者で何か良からぬことを企んでいるのではないかと警戒してたけど、そうではないみたい。でもイレギュラーな存在がとても気がかり。しかも流れで接触してしまった。

 私に影響がくるのでは。巻き込まれて人生を狂わす原因になるのでは。と何度も考えたわ。



 シャララララン♪



 放課後、寮の部屋で考えに耽っていると、スマホの着信音が鳴りだした。


 画面には知らない番号。


 …もしかして。


『もしもし、荒木です。雨倉さんの番号であってます?』


 出てみると案の定、先ほどまで考えていた不安要素からだった。


「もしもし。携帯の修理、終わるの案外早かったわね」


 昨日の今日よ。タイミングも狙ってたとしか思えないわ。


『よかった無事にかけれて。ふうう、電話かけるのにも変な機能とか付いてたらどうしようかと』


 この子、携帯に不慣れなの?


「何を言ってるのか分からないけど、クラスの現状の話がしたいってことでいいのね」


『あ、うん。そうだよ。あと登録よろしくね』


 クラスの現状、ね。前世で知った知識は伏せて話さないと。


「私から見て、になるけど。それでもいいなら」


『参考程度に留めとくよ』


「そう。早速説明を始めるわね。まずクラスは大きく分けて三つのグループに別れてるわ――」


 一つが大部分となる勉学優先グループ。これが大部分を占める要因として、A組に居続けるには成績上位を保つのが第一条件だからというのがあるわね。私と瑞樹もこっちに含まれるわ。


 とはいうものの、高額な寄付金でA組に無理やりねじ込ませて入った生徒がいるのも事実。立花姉妹がいい例ね。


 二つ目のグループは、ゲームの知識も合わさって、私は彼女達を狩人(かりゅうど)と呼んでるわ。

 そこからまた立花と荊野の二つの派閥に別れて、日々攻略対象者達を狙っている。ここで注意するのが、荊野薫子本人はこのグループには入ってないということ。あくまでも入ってるのは彼女の取り巻きね。


 これは荒木道奈には言えないことだけど、最近は林道創也が女子に対して警戒気味な所為か、入る隙がなくて遠巻きに眺めるくらいしかできてないみたい。あぁ、何度か立花真里亞が立ち向かっていたわね。ことごとく失敗してたようだけど。それを見て余計に他の狩人は様子見として眺めるしかなくなるのよ。狩人にとっては悪循環ね。


 それしても、あの林道創也が女子を警戒するだなんて。来るも去るも拒まずだったあの女好きハイスペック王子に変化が見られ出した。さらに、まだ確かなことは言えないけど、荒木道奈に対する林道創也の言動からは彼女に好意よせているように思える。

 どちらにしろ、シナリオが変わりだした可能性がでてきたわ。これは引き続き要注意ね。


 三つ目のグループにいるのが、クラスの主要な生徒達。至極当然として攻略対象者全員が入るわ、荊野薫子もね。昼休みのマジックの一件があってから、荒木道奈もこのグループに入ったのだと一気に周知されたって感じだわ。今までは林道創也が周りを牽制するように行動してたのもあって側にいる荒木道奈に話しかけられなかったけど、その日からそれでも話しかける生徒が増えてきていることから私はそう判断してる。


 大きく三つに分けてはみたけど、男子達も男子達でまた小さなグループに別けられてるんでしょう。でもそこまでは私も把握できてないからわからない。


 というのを荒木道奈に話せる部分だけをまとめて簡潔に伝えた。


『…その女子達ってなんでそんな必死に創也達を狙うの?』


「欲望に忠実なだけよ。目の前に美味しそうな食べ物があったら食べたくなるでしょ? それと同じね」


『んー。なるほど、そういう感じなのか。まあそれは置いといて、ねえねえ。学校の行事でクラスのみんなが力を合わせて頑張るものとかってある?』


「クラス全員で限定するなら、体育祭と文化祭が考えつく主な行事ね。全員じゃなくても班としてなら自然教室も入るわ」


『体育祭は確か六月だったね…』


「あ、待って。今年の生徒会長はあの天雷霈(あまらいひさめ)だから通常よりも鬼仕様になってると思うわ。だから力を合わせるというよりも…回避するために必死に藻掻く感じになりそう…仮病を使って休むか迷うところね」



 思い出される、初等部の頃の運動会。



 …あぁ、ダメよ。ゲーム内だから楽しいのであって、あれは現実でやってはダメよ。


 やっぱり休もうかしら。でも副会長の鳥羽洋大(とばようだい)なら仮病で休む生徒対策もとってるでしょうね。あいつの存在がますます恐ろしくするのよ。


 はぁ。編入したのが運動会前で、しかも天雷霈が考えた種目にあたってしまったのが運の尽きだったわ。


 初等部の生徒会長を勤めてた当時五年生の天雷霈はもちろん攻略対象者。しかも隠れキャラときたら、一癖も二癖もあるに決まってる。というか、プレイしてるからそれくらい分かるわよ。でも彼のあのフェロモンの脅威に隠れがちだけど、何より恐ろしいのは、副会長の鳥羽洋大の存在だと私は思うけどね。


『それは…どういうこと? 休みたくなるくらい競い合う種目がきついってこと?』


「そんなとこよ」


『苦しい状況なら尚更力を合わせることになりそうだけどな』


 まだあれを知らないから言えることね。ここは何も言わずに現実を見せた方がこの子の為だと判断したわ。


「私が知ってるのはそれくらいよ」


『教えてくれてありがとう!』


「私、そろそろ夕飯の時間だから」


『うん、じゃぁね』



 荒木道奈。



 良い子なのだろうけど、不安要素が多すぎる。

 そしてシナリオを変えつつあるかもしれないこの現状も見過ごせない。

 

 よって、これからも注意深く、ある程度距離を保ちながら気をつけることにする。


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