唐突に喚かれる
二話連続投稿です。1/2話目。
「と、いうわけで。携帯は数日使えなくなったよ」
現在、昼休み。
探求部室でみんなに話せる時に話しておく。
テレビ男に携帯を壊されて改造されることになったと大まかに伝えた。
…テレビ男からの強制受信に関しては言ってない。
明菜と風香には寮で伝え済みだ。
あとは、薫子か。
「改造って…。不破間先生。端末をその携帯会社の許可なしに解体などしてはいけないのでは?」
創也がテレビ男に指摘する。
そんな決まりがあったのか!
「だいじょーぶ。それは、子供が気にしたくていいことだよん」
何が大丈夫なのかを説明しないか!
「不安になりました。安心させてください」
「みっちゃんが心配するようなことじゃあないよ。そうだねえ、大人の事情で法に抜け穴が用意されているって言ったら安心してくれるかなあ?」
そんな大人の世界、聞きたくなかった。
「不破間先生って携帯も改造できんだな! あの機械とかも全部先生のもん?」
涼が呑気に質問しだす。
改造するのはテレビ男の知り合いって言うのを忘れてたな。
部室の入り口を背にした左側のメカニックな空気を漂わせている機械コーナを見る。
学校のパソコンルームを探検の時に覗いたことがあるが、ここまでメカメカしてはいなかった。
そのことが余計にこの機械コーナーを異常に思わせる。
「君、この部屋にいたいなら、ただ食べてようか」
冷た。
冷淡で突き放すような言い方に場の空気が一気に凍る。
テレビ男は自分に関して詮索されるのが嫌いだったな。
「そういえば荒木さん。変な噂を教室でクラスメイトから聞いたのですが、どうしてそんなことに?」
「あ、俺もそれさっき聞いたぜ。もちろんガセだってすぐ気づいたけどな」
凍った空気を溶かすように暁人が話を変えてくれた。
あの噂のことかな。涼もすでに聞いているということはクラスにまで広まったようだ。
「その噂って私がオニ・ヤマを喝上げしたとかそんな?」
「ああ゛? 誰がんなこといいやがんだ。ぶっ飛ばしてくる」
ガタンっと立ち上がって部室のドアに向かおうとする弟子。
落ち着け落ち着け。『誰が』と聞きいといて、返事も聞かずに部屋を出ようとするな。無差別に殴るつもりか。
「鬼山さん、詳しいことを聞く前に行動に起こすのは賢いやり方じゃないよ」
創也が私の代わりに弟子を引き止める。
「それで? 俺もその噂、初耳だ。どういうことか説明して欲しいな、道奈」
創也母スマイル降臨。
暁人が噂についてふったのに、わざわざ私に説明を要求してくるのは、私が何かしでかしたと思っているからか。
私は何もしていないぞ。という言い分を創也達に力説した。
「…荒木さんの噂を流した人は荒木さんをよく思っていない人でしょうね。意図的に流した感じがします」
暁人が私の説明を聞いた後、ポツリと自分の推測を呟いた。
「私をよく思ってなくてもいても。どっちでもいいよ。気にしたら負けな気がするもん」
「にしても、道奈ちゃんの噂ってどれも暴君な印象だよな」
暴君!? それは弟子の方だ!
「爆発女、俺たちを脅して所有物化、さらに鬼山を喝上げ。これだけ聞いたらどんな危険なやつなんだって思うだろ?」
うわ。言われてみれば。
だから近頃の視線に恐れが含まれていたのか。
それよりも最初の『爆発女』に『マジック』が抜けてるぞ。
私が爆発するように聞こえるではないか。
噂は気にしないが、その暴君な印象は変えたいな。
頭に浮かんだ方法は一つ。
「噂で私が危険な奴に思われてるなら、そうじゃないって気づかせるきっかけを作ればいいんだね?」
「…道奈、何する気?」
今度は何をやらかす気だ、と副音声で聞こえてくるような言い方で創也が聞いてきた。
失礼な。私は問題児か何かか。
「まだ予定の段階だけど、今度劇場でマジックを披露するんだ。テレビ男と約束した奴ね。その時、ついでにたくさんの人も呼んで、私のマジックを見れば、私が危ない人じゃないって分かってくれると思う」
荊野薫子が私に対しての誤解を解くきっかけになれたように。
「劇場使うのか!? 本格的だな! 俺ぜってぇ見に行く! 人呼びてぇんならバスケの奴らも誘うぜ」
「…荒木。お前、マジックとか出来んのか」
「道奈は何度かマジックを披露してるよ。入学式の日の自己紹介でも話が出てたと思うけどけど、鬼山さんは覚えてない?」
「…俺も見に行く」
「私も周りの方を誘って行きますね」
「ふっふっふ。今までで一番大掛かりなものになったんだ。楽しみにしてて」
「手伝いとか必要な時は言って? 俺も協力する。あと、危ないことはしないように」
また兄目線か。
創也の気遣いはありがたいが、仕掛けがバレる可能性があるので、ここは無難に流す。
「ありがとう。でもまだ大丈夫だから、その時がきたらよろしく! 時間は前に話した通り、昼休みにする予定だよ。でも昼食とか取らないといけないから、披露する時間は昼休み後半の10分から15分くらいかな。日にちが決まったらまた報告する!」
4人ともマジックを楽しみにしてくれているようだ。これは腕がなる。
期待に答えるように、もっと気合を入れよう。この時、そう思った。
****
放課後。
創也は急ぎの用事があるらしく、先に教室を出て行った。珍しいな。
その時の創也はなんだか慌ててるというか、切羽詰まったような感じだった。
何か起こったんだろうか。
そう聞ける余裕も創也にはなさそうだったので、明日理由を聞こうと思う。
そのまま創也とは別れて、今は薫子に携帯の件とマジックの件を伝え終えたところだ。…なのだが。
「あなた、鬼山様にも荊野様にも取り入るなんて厚かましいのよ!」
今、廊下で、喚かれている。唐突だな。
なぜ唐突に今なのか。私が一人だからか。
いつもはずっと創也がそばにいるからな。
また創也に聞かれたらまずいことを喚いているらしい。
「あなたの狙いはなんなのかしら? それぞれが全員、力のある家ばかりだわ。それでそのまま学年を牛耳るつもり?」
未だ何か言っているこの子のたて巻きカールに目を向ける。
この子は確か…漆原だったか。体育館裏で私に喚めき続けた失礼な女子だな。
訳の分からないことを言い続けるなら、聞く意味はなさそうだ。
「あなたは確か、漆原さんですね。勝手な憶測を押し付けないでください。そんな話を聞くほど、私は暇ではありませんので。私はこのまま帰りますね」
言いたいこと言って、去るのが一番。
「待ちなさい! 私の話はまだ終わってなくってよ!」
私の肩を掴もうと手が伸びてきた。すかさず避ける。
弟子の腕から逃げた経験がここで生かされた。
「さようなら」
早歩きでその場を離れるが、後ろを漆原が追いかける。
「待ちなさいって言ってるでしょ!」
はははは、待つ気など更々ないわ!
お互い走らず競歩で廊下を突き抜けて行く。
漆原は走らないのか。意外だ。
通りすがりの生徒たちが、なんだなんだと視線をよこすが、それを感じるのも一瞬。なぜなら一瞬で私が通り過ぎるから。
…このまま向こうが諦めるまで遠回りするか。




