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道奈と車の中で

少年視点。


 道奈の膨らんだほっぺをつつく。やわらくて美味しそうだなあ。

 女の子はやっぱり可愛い。ああ可愛い。

 道奈はうるさくないからもっと可愛い。


「女の子って怒った顔も可愛いよねえ。君のは特に可愛いよ」


 そんな気持ちを込めて道奈を褒める。

 だが、表情がより一層不機嫌なものになって、頬をつついていた手をはたき落とされた。

 普通の女の子は褒めると顔を赤らめて嬉しがるはずだ。やはり、この子の思考回路は普通の女の子とはかけ離れているらしい。


 だから興味がもっとわいた。


「あなたの所為で今日の私の計画がめちゃくちゃ。怒るのは当たり前だよ」


 道奈の崩した口調になんだか距離が縮まった気がして嬉しくなる。

 道奈に近づいて物理的にも距離を縮めた。話を合わせて聞き返すと、


「今日はじっちゃんに私が学校に行きたくないって伝えるはずだったの! じっちゃんから離れて寮付きの学校に通うなんて、寂しすぎて泣いちゃう!」


 道奈は一瞬だけ泣きそうな顔をして窓の外を見た。残念。怒った顔だけじゃなく、泣いた顔も見られると思ったのに。


 車の窓の外を見る道奈を、俺は見た。


 ああ、やっぱりカラコンではないみたいだな。


 道奈の瞳には窓の外の景色が映っていた。ただの景色が道奈の瞳に映るだけで、とても神秘的に感じる。瞳の色の所為だろうか。それとも道奈の瞳だからそう感じてしまうのだろうか。


 無性に、道奈の瞳に映りたくなった。


 俺を見て欲しい。そんな思いを込めて道奈を見つめ続ける。


 思いが届いたのか、瞳だけ動いて俺を捉えた。



「っ」


 ピクリと肩が反応する。


 なんだそれは。これが流し目というやつか。


 …色っぽいな。同じくらいの年で、煩わしそうな表情で見る道奈から色気を感じた。それに当てられてか、体が熱くなって心臓がうるさい。


「…大丈夫? 風邪?」


 そう言って、今度は俺の額に手をあててきた。


 ピクリとまた肩が反応する。


 自分よりも低い温度が気持ちいい。俺の全神経が額に集まって、滑らかで柔らかい手を感じとる。心臓がさっきよりも暴れ出した。




 あぁ、もっと触れたい―――。




 理性はここで途切れた。


 近く、もっと近くへ、道奈に近づく。





 あと少し―――






「創也様。到着しました」




 …。




 やばかった…やばかった?


 …何がやばかったんだ?



 まだ心臓がうるさい。さっきは衝動的に体が動いてしまった。



 …衝動的に俺は何をしようとしたんだ。



 先ほどの至近距離にあった道奈の顔を思い出す。


 そして顔にまた熱が集まった。俺が何をしようとしたのかが分かって、もはや俺の顔はゆでトマトになっている。


 心臓が、お前いい加減に落ち着けと、ドンッドンと胸を叩き続ける。


「運転手さん、この人具合が悪いみたいなので、このまま家に帰った方がいいようです。私はじっちゃんの手伝いがありますし。私を元いた場所に帰して頂け―――」


「いや、僕は大丈夫。昼ごはんは食べた? ここの店美味しいんだ。一緒に食べよう」


 自分を落ち着かせていると道奈が帰ろうと言い出した。

 それに被せる勢いで食事に誘う。

 今は道奈に集中しよう。気をぬくとすぐにまた逃げ出しそうだ。


 道奈を引きずるようにレストランの中へと連れて行った。


潜在的スケベ心が暴走した結果でした。

少年はそれについてまだ無自覚です。

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