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学校探検2

評価・ブクマして頂いた方々、ありがとうございます!

そして、アクセス数の増え具合にびっくりして見てみたら、日間ランキングに入ってた、だとっ。慄きました。たくさんの方に読んで頂き光栄です。


なお、ガイドラインをもう一度確認したところ、『異世界転移』のタグは必要ないのでは?とやっと気づいたアホな本田です。本当に申し訳ないです。このタグは外しました。


では、本日も二話連続投稿になります。1/2話目。


 携帯で『勘違い令嬢野郎』と書かれた番号を大きなため息と共にかける。


「はあああああ・・・」


 プルルルル、プルル――


『遅い』


 もしもし、も無しか。暗黙のルールにも従わない横暴さは健在のようだ。


「もしもし、今日の昼前くらいに屋上のあの場所を使用します。伝えたので、失礼します」


 返事も聞かずに切ってやったっはっはっは。


 プルルルルと携帯が鳴る。


 うわ、またかかってきた。


 どうする。どうする。どうする。無視しよう。


 慌てる必要などない。なぜなら、ここにやつはいないからっはっはっは。



 それはさておき、今日は校舎内ではなく校舎外を重点的に探検しようと思う。


 実は気になっていた場所があるのだ。



 それは、ズバリ、裏庭!



 遠目からしか見たことないが、木々がたくさん生えていて、じっちゃんの店の裏にある森を少しだけ思わせる。


 さて、今回はどんな発見が待っているのだろう。


 予め売店に寄ってパンを3つ、ミニサラダ、野菜ジュースを買ってから出発する。


 あんな横暴で傲慢で暴力までふるう勘違い令嬢野郎にも栄養バランスのことを考えてあげるなんて、私はなんて良識のある乙女なのだろう…!


 投げやりに自画自賛して心を落ち着かせた。


 代金はあとで必ず勘違い令嬢野郎に請求してやる。ぶつぶつと心の中で文句を言いながら裏庭に向かった。




 ほうほう、ここが、裏庭。


 遠目で見た通り、木々がたくさん生えている。


 散りかけの桜の木が目立つな。


 早速中に入って行こう。


 今日は雲がポツポツ浮いてる晴れの日。


 雲に加え、木々が空を隠し、日陰を作る。日々暖かくなりつつある今日この頃でも、冷んやりとした空気が肌を撫でた。


 涼しくて気持ちがいいな。


 地面も草に覆われていてふかふかと柔らかい感触を靴の上から感じる。じっちゃんの店の裏の森ほど自然は濃くないが、日々建物に囲まれて過ごしている学校生活にはいい気分転換だと思う。


 少し奥へ進んだところで、小さな池が見えてきた。


 ふむ。人口でできた池らしい。チロチロと水の音が聞こえる。池の底には機械が沈んでいた。覚えている知識に間違いがなければ、ポンプと呼ばれるものだろう。


 小魚もちらほら泳いでいるのが見える。



 …捕まえれるか?



 そういえば、前の世界で両親と森にピクニックに行った時も、同じようなことを思ったな…。


 頭の中で、その時の思い出が流れ出した。






 湖の中をちょろちょろと泳ぐ小魚が数匹。それを私はじーっと見つめている。


 …捕まえてペットにしよう。撫でてあげたら喜ぶかな?


 袖をめくって手をバシャっと湖の中に突っ込む。

 ドレスが濡れたらお母さんに怒られそうだ。気をつけて捕まえよう。


 あ、逃した。


 バシャバシャ。


 また逃した。


 バシャバシャバシャ…



 …待て! 逃げるな!



 ドバシャア! ドバシャア! ドバシャア!


 ドバシャン!



 魚が思いの外、素早かった所為で手で追いかけていのに、たまらずいつのまにか湖の浅瀬を駆け回っていた。



 し、しまった…!


 頭からつま先まで、水をかぶったように濡れてしまったではないかっ。


 ドレスのことをすっかり忘れていた私である。



「ミリエル!?」



 ギクリッと肩が揺れた。背後からお母さんの驚いた声が聞こえる。そりゃそうだろう。ピクニックに来たのに、気づいたら私がビショビショになっているのだから。


「もう! 風邪を引いてしまうでしょう?! こちらにいらっしゃい」


 しょんぼりとお母さんに近づいていく。

 お母さんの手にはポケットから出したハンカチがあった。


 体をふく大きな布なんてあるわけないさ。なんたって、ピクニックだからな!


 お母さんの説教を聞きながら大人しく拭かれている私。


 でも、厳しく説教をしているくせに、私の顔や頭を拭く手はとても優しいものだった。


 だいたい拭き終わった頃、お父さんがこちらの様子を見にやって来た。


「はっはっは! 湖で遊んでたのか! うちのお転婆娘は元気があっていいな!」


 そう言いながら自分の服が濡れてしまうことも厭わずに、未だビショビショの服を着た私を高く抱き上げて笑った。


「おとーさんも、ぬれちゃうよ?」


「濡れたら魔法で乾かせばいい! 私はそんな理由で娘を下ろす小さな男ではないぞ! またお転婆する前に、私がこうやって抱き上げておこう。遊んだらお腹減ったろ。3人で一緒に向こうで食べよう」


 そう言って、風魔法を使えるお父さんが一瞬で私の服を乾かす。

 その後3人で昼食を楽しんだ。


 とても穏やかで、幸せな時間だった。





 ―――ああ、会いたい。




 日本に来たのが2年前だ。


 まだ2年、と思うか。

 もう2年、と思うか。


 …またあの感情が押し寄せて来た。


 落ち着け、これ以上考えるな。また蓋をしないと。


 今すぐ空を眺めながら呪文を唱えて蓋をすることもできる。だが、まずはこの池から立ち去ろう。完全に立ち去るまで、別のことを考えるのだ。そうだ、今は探検の途中だ。


 探検に集中。探検に集中。


 あたりを見回す。

 何かないか。

 何か気を紛らせるもの。


 池から離れてより奥へと、押し寄せて来た感情から逃げるように走り出した。





「はぁ…はぁ…」


 走り過ぎたようだ。


 学校の敷地内と敷地外の境界線であるフェンスまで来てしまった。



 汗が首筋を流れるのを感じる。

 ――何か気を紛らすもの。

 カバンからハンカチを出して拭いた。

 ――何か気を紛らすもの

 フェンスに寄りかかって休憩をとる。

 ――何か気を紛らすもの。

「ノー、ノー」


 どこからともなく何かの鳴き声が聞こえて来た。


「ノー、ノー」


 ノー?


 そんな鳴き声のする動物は聞いたことがないな。


 お、好奇心が湧いて来た!



 未知の生物。

 ――何か気を紛らすもの!



 よし、この変な鳴き声のする生き物を見つけるのに集中だ。


 耳をすまして、どこから聞こえてくるのかを探る。


「ノー、ノー」


 こっちだ!


 逃げられないように茂みの向こうへとそっと進む。

 進むにつれて鳴き声が大きくはっきり聞こえてきた。


 周りを見渡す。


 この辺りか…?


「ノー、ノー」


 頭上から鳴き声が降ってきた。


 見上げてみると、木の上から太い眉をした猫が、木の枝を2本の後ろ足で跨ぎながら座っている。背もたれとして上半身を木の主幹に寄りかかる姿はまさに『鎮座している』という言葉がお似合いだ。


「ノー、ノー」


 私を見下ろしながら、鳴いている。



 …なんて貫禄のある猫なんだ!



「こんにちは。私も同じ木にお邪魔してもいいですか?」


 思わず敬語で話しかけてしまう。


「ノー、ノー」


 構わぬ、ということですな。では、お言葉に甘えて。


 勢いをつけて木に登る。木登りは得意だ。


「よいしょっと。お邪魔します」


「ノー、ノー」


 太眉猫さんが鎮座している枝に一番近い太めの枝に腰掛ける。

 近くで見れば見るほど立派な眉毛に見える部分は黒いブチだった。周りの白い毛により二つの黒ブチが余計に強調されている。


「案外眺めがいいですえ」


「ノー、ノー」


「この辺りにお住まいで?」


「ノー、ノー」


「おや、野良でしたか」


「ノー、ノー」


「自由なことは何よりです」


「ノー、ノー」


「それより、いつからここに?」


「ノー、ノー」


「…もしかして、降りられないのですか?」


「ノ、ノー、ノー」


「図星ですね?」


「ノー…」


「私がおろしてあげましょうか?」


「ノー!」


「ちょっと持ち上げますよ。我慢してくださいね」


 両手で太眉猫さんを抱き上げて、片方の脇に抱え直す。


「よいこらせっと」


 太眉猫さんに振動があまりいかないように、そっと降りた。


「はい、どうぞ」


「ノー、ノー、ノー」


「いえいえ、お礼など」


「ノー、ノー」


 そうだ、今朝売店で買ったサラダの中に鶏のササミが入っていた気がする。


「お腹空きません? 鶏のササミでもいかがです?」


「ノー! ノー!」


 カバンからサラダをだす。

 鳥のササミだけ綺麗に取り除いてサラダの蓋の上に乗せた。


「はい、どうぞ。お口に合うといいですな」


「ノンノンノンノン」


 食べる時も独特な鳴き声を出すようだ。


「触ってもいいですか?」


「ノンノンノンノン」


 肯定ととった。


 そっと、太眉猫さんの体に触れて撫でる。


 さっき抱き上げる時に気づいてしまったのだ。



 太眉猫さん、モッフモフのモッハモハ。



 プルルルル


 毛を堪能してると電話がなった。


 誰だ。こんな至福の時を邪魔をする輩は。そんなの一人しかいない。


 携帯をみると『勘違い令嬢野郎』の表記が。

 時計を確認すると10時を回っていた。


 まだ時間があるではないか。

 私にとって昼前とは、11時のことである。


 電話に出るか、出ないか。


 プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル――


「もしもし」


 悩んだ末に出てしまった。


『おい、いつまで待たせるつもりだぁ? ああ゛?』


 出てすぐに凄まれた、のが電話越しでも伝わった。


「探検中で忙しいんです。11時には行きます」


 そして、すぐに電話を切ったっはっはっは。


 すかさず電源も落としておく。


 これで私と太眉猫さんの邪魔をするものはいない。


「太眉猫さん、食べ終わりました?」


 足元をみると、からになった蓋が残されただけで、太眉猫さんの姿はいなくなっていた。



 なんということだ…。


 勘違い令嬢野郎の凄みで太眉猫さんが逃げてしまった!



「太眉猫さーん! どこですかー?」


 耳をすましても返事が、ない。

 周りを探してみても、いない。


 ああ、お帰りになられてしまったようだ。


 仕方がない。私も戻るか。


 サラダの蓋をビニール袋に入れる。

 サラダは私が食べることにした。


 勘違い令嬢野郎にはパンと野菜ジュースで十分だろう。


 大変不本意だが予定を繰り上げで屋上に今から向かうことにした。


 そこで、気づく。私が迷子になっていることに。


 がむしゃらに走っていたからな。当たり前か。



 さてどうする。



「ノー、ノー」


 困っていると太眉猫さんの鳴き声が聞こえてきた。


「太眉猫さん!? どこにいるんですか!?」


 辺りを見回す。


「あ!」


 少し遠くに太眉猫さんが座ってこちらをみていた。


 迷わずそちらに向かって駆けていく。


 それに合わせて太眉猫さんも奥へと進んで行った。


「待ってください!」


 太眉猫さんを追いかける。追いかけているのに、なかなか距離が縮まらない。


「はぁ…はぁ…待って…」


 気づくと、裏庭から抜け出していた。目の前には校舎が見える。だが太眉猫さんは見当たらない。


 もしかして…太眉猫さんは鳥のササミをあげたお礼に道案内をしてくれたのかっ! なんて優しいんだ! 貫禄がある上に優しいだなんて。素敵すぎる。


「太眉猫さん! ありがとう!」




 木々の奥から太眉猫さんの返事が聞こえたような気がした。


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