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先輩に聞こう


プルルルル、プルルルルと電話をかけたら直ぐに創也母と繋がった。



『もしもし、道奈さん? どうしたの? 忘れ物かしら?』


「もしもし、お食事中にすみません。聞きたいことがありまして、今お時間大丈夫ですか?」


『ええ、私でよかったら聞くわよ? 創二郎さんもいいわよね?』


 創也母の電話越しに創也父の声が聞こえた。


「創也、どうする? 創也が聞いてみる?」


「…………………俺が聞く」


 溜めが長いな。そんなに躊躇することか。


「創也のお母さん、創也が聞くそうなのでかわりますね」


 創也に電話を渡した。


 そして、創也は創也母に一から何があったのかを説明していく。


「―――それで、母さんはこれを聞いて何か分かることがあったら教えて欲しいんだ」


 それは私も聞きたいので、創也の隣に椅子を持って行って、創也が持っている携帯にピトリと耳をくっつけた。


 その時創也の体がビクリと揺れた気がしたが、今はそれどころではない。


『まあ、そんなことが。創二郎さん、私たちの学生時代を思い出すわね』


『確かに、私たちも似たようなことがあったね』


「母さんたちも?」


『学生の頃、私が結衣子さんに一目惚れをして必死に口説いたんだ。それが原因で結衣子さんに大変な思いをさせてしまったんだよ』


『ふふふ、その時の創二郎さんはとてもモテてたの。それで他の女子生徒からのやっかみがすごかったのよね。今はそれもいい思い出よ』


 どうやら向こうはスピーカー音にして話しているようだ。

 静かな個室のあるレストランで食べているのだろう。

 私たちもスピーカーで話した方が楽だが、あいにく店内が少しガヤガヤしているので、それはできない。


「他の女子生徒のやっかみって、例えばどんな?」


 創也が創也母に詳細を聞いた。


『そうねえ。道奈さんみたいに、上靴が被害にあったり――私の時はボロボロにされて女子トイレに突っ込まれてたわ――物がなくなってたり、教科書やノートに落書きされたり破かれてたり、かしら』


 なんと卑怯な。全て隠れてこそこそやる嫌がらせばかりだ。


「体育館裏に呼び出しを受けたこともあるわよ。他にもあったけど、印象に残っているのはこれくらいかしらね。でもちゃんと全てお返ししたから、やられっぱなしじゃなかったわ」


 実はすでに私も呼び出しを受けている。

 そうとは知らず、マジックを披露してしまったが、荊野薫子と話すきっかけになれたし、悔いはない。むしろやってよかったと思っている。


 それにしても、創也母は母になる前から強かったようだ。

 全てに報復をするとは、さすがだ先輩。


 だが、ここでまだ疑問が残る。


「創也のお父さんが女子から人気だったから、創也のお母さんは女子たちから嫌がらせを受けたってことですか? まだその繋がりがわかりません」


 創也が持っている携帯のマイクの方に口を寄せて創也母と創也父に聞こえやすいように話した。


 また創也の体がピクリと揺れた気がする。


『ふふふ、道奈さん。あなた、まだ恋をしたことがないでしょ』


 そうれはそうだが、なぜここで恋が出てくるのだろう。


「はい、まだです」


『いつかはわかることだけど、今は簡単に説明するわね。私が他の女子生徒から嫌がらせを受けたのはほとんどが彼女たちの恋心から生まれた『嫉妬』が原因よ』



 嫉妬。



 まだ私が感じたことがない感情の一つ。


 恋をするともれなく嫉妬もついてくるのか。


 ん? ということは、私に殺気を向けてきた女子生徒たちはみんな創也に恋をしているということか。草野さんもしかり。


 創也、モテモテだな。


 なら女子たちは皆誤解をしているようだ。私と創也は友達である。恋人になろうとしているわけではない。


学生の頃の創也父と創也母のような関係ではないのだ。


『さっき、恋心から生まれた嫉妬、って言ったけど、全部がそうではないわ。中には傲慢さから生まれる嫉妬もあるのよ』



 傲慢。



 相手を見下す気持ちは理解できないが、それが理由で殺気を放っていたとしたら、なんて自分勝手な理由なのだろうと思う。


『草野さんって子は聞く限り、恋心の方の嫉妬な気がするわ。これは女の勘ね』


 女の勘か。私もいつか使えるようになる日がくるだろうか。


『当時は友達がそばにいたから耐えれた部分もあるのよ。道奈さんの周りにはそういうお友達はいるかしら? まだ入学してすぐだからいないかもしれないけど、いたらきっと力になるわ』


「友達は今のところ創也を含めて3人ですね。もう3人これから友達になりそうな子もいます」


『ふふふ、だそうよ、創也? もう少し頑張る必要があるわねえ』


『創也、今度父さんが母さんをどうやって口説いたか、教えてやろう』


「…」


 創也母の言葉に無言になる創也。何を頑張るのか。そしてなぜ突拍子もなく創也父は口説き講座の予定を入れるのか。創也父に関しては酔っているのか疑ってしまう。


『それくらいの人数なら大丈夫ね。どうやって嫉妬による嫌がらせを防ぐかって質問だけど、これはお友達と力を合わせるしかないわ。私の場合も友達の情報を使ってお返しをしたもの』


 報復をする前提で話されても、こちらはまだ覚悟ができていないのだ。


 報復をするかどうかは今のところ置いといて、被害がひどくなったら友達である涼や暁人にも相談してみよう。


「とても参考になりました。私の疑問は以上です。創也は他に聞きたいことはある?」


「ある」


 創也の真剣な声が耳に伝わる。


「父さん、母さんが嫌がらせを受けていた時、どうした? …道奈のためにできることはないか知りたい」


『私の場合は、結衣子に対する嫌がらせの原因が私にあると知った時、表立って口説かないようにすることもできたけど、私はあえて他の生徒に見せつけるように、さらに口説いたよ』


「は? それだともっと嫌がらせがひどくなるだろう?」


『そうだね、他の女子生徒を煽るようなことも言って火に油を注ぐことになったよ。けど、それも一時的なものだ。嫉妬で狂った人間はボロが出やすくなるから迅速に対処できて、すぐに沈静化することができたよ」


 対処…。嫉妬に狂った女子生徒がどうなったのかは怖くて聞けない。

 創也父は私のお父さんみたいにお腹に黒いものを飼っているのかもしれないなと思った。


『まあ、そういう狙いもあって必死に口説いたわけだけど、一番の狙いは周囲に私が結衣子さんを好きだと知らしめることだね』


 なぜ?


『私が女子生徒から人気だったと結衣子は言っていたけど、そういう結衣子の方が人気だったんだ。口説いてる段階で他の悪い虫が寄り付かないように、牽制するのに必死だったよ』


 口説く方も大変なんだなあ。


『創也、これに関しては今度ゆっくり男同士で話し合おう』


「…わかった。時間が空いたら連絡してくれ」


 創也父がやった対策は私たちには難しいようだ。

 創也が私を口説かないといけない時点で、友達の域を超えている。でも、創也とはただの友達だと全校生徒に知らしめるという風には応用ができるな。


 いや、そんなことをしても意味はなさそうだ。


 あの体育館裏で呼び出された時、あのたて巻きカールの女の子は、私が創也達のそばにいること自体に対して不満に思っている節を感じた。


 創也達のそばにいる女子生徒という時点で殺気を放つ対象に入るということか。


『質問がないなら、切るわよ? 私たちはもう少しあとで家に帰るから、明日学校があるあなた達はそろそろ家に帰りなさい』


 だいぶ長く話し込んでいたようだ。時計を見ると夜の8時を過ぎていた。帰って寝る準備をしたらちょうどいい時間だな。


「質問に答えて頂いてありがとうございます。また今度会いましょう。おやすみなさい」


 やっぱり創也母に聞いて正解だったな。とても参考になる話が聞けた。


「聞いてくれてありがとう。あんまり遅くなるなよ。先に帰っとく、じゃあ」


 創也が電話を切って携帯を返してくれた。


 今気づいたが、結構近い位置に座っていたようだな。


 間近で創也の目と私の目が合わさる。


「ごめん、近過ぎたね」


 そう言って元いた位置に戻ろうとして椅子を掴んだ腕を創也に掴まれた。


 どうしたのかという意味を込めて創也の顔を伺う。


「あ、いや。なんでもない」


 なんなんだ。


 構わず元の位置に戻った。


「道奈、ありがとう。母さんに聞いてみるなんて考え全く浮かばなかったよ」


「どういたしまして。って言っても、私も聞く立場だったからね。お互い疑問が少し晴れてよかったよ」


「じゃあ、会計してくる。待ってて」


「あ、待って、代金は半分こ! 私も払うよ」


「いや、俺からのお礼だと思って、ここは払わせて?」


 最近、この戦いで負けてばかりいる気がする。私の良識も警告を発しているので、妥協案を出してみよう。


「じゃあ、次一緒に出かけた時は私が払うから! 絶対に払うから!」


 これ以上は妥協しないぞ。


「あははは、わかったよ。次出かける時はよろしく」


 私の頭をポンポンとしてから会計に向かった。


 忘れていたが、そういえば、創也は私のことを妹だと思っていたな。

 妹の駄々を優しい兄が相手にする図、か。



 気に食わん!



 そのあと、いつものように寮まで車で送ってもらった。


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