テレビ男の部室で出前
二話連続投稿。1/2話目。
「ふうう。終わったああ!」
「分担したおかげか、すぐに終わりましたね」
「どれくらの量を手伝わされるか心配だったけど、4人でこの量なら無理しなくても大丈夫そうだな」
涼、暁人、創也の順に感想を述べていく。
昼休み、探求部室に向かうと宣告通りテレビ男が雑務を用意して待っていたのだ。
「みんなお疲れ! ごめんね、私のせいでこんなことになっちゃって。お茶入れるよ! テレビ男、給湯室使いますね」
「みっちゃん、僕はミルクティーがいいなあ」
「…テレビ男」
涼が何かつぶやいたが気にしない。
テレビ男にも茶を一応入れてやるか。そんなつもりなどなかったが、ついでだ。
「俺、茶じゃなくてコーラ!」
「俺は牛乳で」
「あるか見てみる!」
創也は牛乳で、涼はコーラ、っと。
コーラはあのシュワシュワした不思議な飲み物だな。
じっちゃんの店でもメニューに炭酸飲料はいくつかのっていて、その中にコーラもあったから、飲んだことがある。初めて飲んだ時はびっくりしてブハッと吐き出してしまった。慣れれば癖になるものなのかも。
給湯室に入ると、小さな冷蔵庫が完備されていた。開けると、牛乳とペットボトルの水しか入ってなかった。
「涼! コーラなかった! でも牛乳と水はあったよ!」
「えええ、まじかあ。買ってくるかなあ」
「そろそろ料理がくるのでは? 荒木さん、私は水で大丈夫です」
暁人は水か。
「あああ。次は飲み物買ってからくるかな。俺も水で」
涼は水に変更、っと。
紅茶の入れ方はじっちゃんの店で習得済みだ。紅茶を探すのに少し時間がかかったが、要望通り、それぞれ用意することができそうだ。
紅茶を入れながらこれまでを回想する。
まず、荊野薫子や創也達以外のクラスの生徒から話しかけられることがなくなった。元々、ポツポツと友達になろうとかしか話しかけられなかったけどね。今では皆、遠巻きに見るだけである。
今まで友達になりたいと言って来た子達に至っては私を無視しているようだ。友達になりたいと言ったのに、お互いを知る努力というものはする気がないのだろうか?
この辺りは、もう少し様子を見ておこうと思う。
そして、上履き事件の犯人はわかったものの、草野さんは今日もお休みだった。
風邪なのか。それともわざと休んでいるのか。
後者であるなら、目的は私を避けるためか。
草野さんが上履きを盗んだことや捨てたことを私が知っていると気づいているかもしれない可能性がある以上、私から草野さんの家に行くことも考えている。
ちなみに、今も上靴がないので、スリッパを履いている。鷲崎先生に無くしたと報告したら、近日中には新しいものを買うようにと言われた。
とりあえず、数日様子を見てからにするか。風邪である可能性もまだ捨てきれない。
「はーい、お待たせ」
紅茶を探す途中で見つけたお盆に乗せて運ぶ。
「おう! ありがとな!」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
3人から一斉に感謝を述べられる。悪い気はしないが、これは私なりの罪滅ぼしというかなんというか。これからは私が飲み物担当になるとしよう。
「テレビ男も、はい。ミルクは自分で足してくださいね」
テレビ男が受け取って、一口飲んだ。
「んー。60点」
せっかく入れてあげたのに、いちゃもんをつけるとは何事か。
ムッとした顔でテレビ男を見る。
「みっちゃん、紅茶入れながらぼーっとしてたでしょ。渋みが強すぎ。次は集中するようにねえ」
紅茶でそんなことまでバレるのか。テレビ男はつくづく油断ならないなと思った。
コンコンとノックが聞こえる。
「失礼しまーす。不破間先生、ご注文の品をお持ちしましたー」
席について4人で和んでいると、ドアが叩かれた。
青年が入ってきてテーブルの上に料理を並べていく。
「ご苦労様。はい、これ。代金ね」
「ありがとうございます。それでは失礼しまーす」
事務的な受け答えのみして青年はすぐに部屋をでた。少し急いでいたから他にも注文されたものを届けにいくのだろう。
「テレビ男、私の分の代金、今払っておきますね」
ポケットに入れておいた財布を取り出してテレビ男に渡そうと席をたつ。
「ああ、いらないよ。生徒から私的にお金をもらうと色々と面倒なことになるんだあ。だから、僕にはお金を渡さないように。手伝ったお駄賃だと思ってよ」
理由がテレビ男らしいな。
「不破間先生、サンキュー! 早速食べようぜ!」
「ご馳走になります」
「ありがとうございます。道奈も一緒に食べよう」
お金を渡すと問題になるなら仕方ない。
お言葉に甘えて料理を堪能することにした。
「あ、そうだ。創也達に聞くことがあったんだ」
料理をほとんど食べ終えた頃に荊野薫子との約束を思い出す。
「荊野さんって知ってる? 今度彼女が創也達に確認したいことがあるみたいなの。時間作ってもらえないかな?」
「げっ、俺あの人苦手なんだよなあ」
「するのは確認だけのようですし、私は構いませんよ」
「暁人、ありがとう! ところで涼はなんで苦手なの?」
私が見た限り、荊野薫子は王子とケーキが好きな無害な令嬢という印象だ。
涼にとって荊野薫子はどのように映るのか気になった。
「なんつーか。言ってることとやってることがちぐはぐ? 何考えてんのかわかんねー。めんどい。それに顔が怖い」
荊野薫子の恥じらう乙女のような表情を思い出す。
あれは怖いからかけ離れていると思うが。
「どういうこと?」
「んー。俺がまだ初等部にいた頃、親のつながりで家にきたことがあって、そん時、庭で遊びに誘ったんだ。そしたら、すっっっっげえ怖い顔しながら『あなたと遊んでる暇はありませんわ』って言って足早に去って行ったんだよ。なんだこいつって思ったけど、気にせず弟と遊んでたら、遠くの方から遊びたそうにこっち見てて、わけわかんなくなった」
……昨日荊野薫子が言っていた虚勢を張りつつ逃げただけのようにも聞こえる。
「遊ばないって言ったくせに、こいつめんどくせーって思ったな。俺と話す時、顔も怖えし。苦手だ」
「私と話す時もそのような感じでしたね」
暁人にも同じような対応をしてしまっているらしい。
ここは荊野薫子の誤解を少しといた方が会ってくれそうだ。
「私と話してる時はそんな感じじゃなかったなあ。たぶん、男子が苦手なんだよ。苦手な男子でも頑張って話すくらい、荊野さんにとって大事なことを確認したいんじゃないかな? 私からもお願い! 荊野さんに時間を作ってあげて!」
荊野薫子は自分で知ろうと努力しているのだ。そういう人を見ると力になってあげたくなる。
「涼、何か事情がありそうだ」
「んんんん。確認だけなら…まあ、いいぜ。言っとくが、俺は別にあいつが嫌いとかじゃないからな。苦手なだけだ」
「道奈、俺も構わないよ」
「涼も創也もありがとう! それでいつがいい?」
「俺は朝も放課後もバスケがあるからな。空いてるのは昼休みの今ぐらいだ」
「私もできればお昼がいいですね」
「俺も昼が都合がいいな。道奈、早めの方がいいだろ? 来週の月曜あたりに昼食食べ終わってから談話室で話すのはどうだ?」
「俺はそれでいいぜ」
「月曜ですね。わかりました」
「来週の月曜日の昼休み、ご飯食べてから談話室で。だね! 荊野さんにもそう伝えとく! ところで談話室ってどこにあるの?」
この学園には談話室もあるようだ。
「図書室の向かい側にありますね。部屋の予約は今日の放課後、私がしておきましょう。部屋の番号は後ほど連絡します」
しかも予約制で部屋ごと借りれるものらしい。全然知らなかった。
「はいはーい、そろそろ時間だから教室に帰ってねえ。僕も今から研究室に戻るから、この部屋閉めるよお」
「え、うわ、ちょ!」
「不破間先生、道奈を運ぶなら、俺がします」
テレビ男よ! また制服の後ろ襟首を掴むでない!
そして、創也! そういう問題ではない!
「ほら、君たちも早く出てってねえ」
テレビ男から強制的に部室を追い出されてしまった。
「テレビ男、ごちそうさま! ご飯ありがとう! また食べに来ますね!」
テレビ男は背中を向けたまま、返事代わりにひらひらと手を振りながら廊下を歩き去っていった。
こき使われるわ、扱いは雑にされるわでムカつくが、ご飯代を払ってくれたのだ。
それとこれとは別なのでお礼は一応伝えた。
背中越しだが。
「俺あの先生も苦手だな。荊野薫子よりも何考えてんのかわかんねー。あと道奈ちゃん、さっきは猫が暴れてるみたいで面白かったぜ!」
前半は大いに同意するが、後半は私をバカにしてないか。あれはテレビ男の手から逃れるための必死の抵抗である。そして私は歴とした人間の乙女だ。
「道奈、次は俺が運ぶよ」
キリリとした顔で言うでない。無言で首を横に振ってご遠慮頂いた。
「戻りましょうか」
テレビ男の部室で食べる昼は、なんやかんやなものとなった。
でも、視線がなくていつもよりも気を楽にして食べることができたと思う。
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「もしもし、荊野さん、今時間大丈夫ですか?」
『もしもし、少々お待ちして頂いてよろしいですか? すぐにかけ直しますわ』
放課後、寮の部屋に帰ったあたりに暁人から談話室の予約が取れた事と部屋の番号を電話で教えてくれた。それを荊野薫子に伝えようと電話をかけたのだが、少し取り込み中だったらしい。
夕飯の後に宿題にすぐに取りかかれるように準備でもしながら待つか。
少しすると、電話がかかってきた。
「もしもし」
『もしもし、先ほどは申し訳ございません。お稽古の準備をしていた最中でしたの。この後すぐに始まるので長くはお話しできないのですが、先日お話しした件でよろしいですか?』
「忙しいところごめんなさい。手短に話しますね。来週の月曜日の昼休みに昼食を食べ終わったら15番の談話室に来てください。予約は暁人がしました。創也達とそこで話しましょう」
暁人曰く、談話室は予約をした人の名前、自分の名前、それから予約した部屋番号を受付で言わないと、その部屋に通してはくれないようだ。予約をしてない生徒が勝手に使わないようにするのと、使用する部屋の番号を間違えないようにするための防止策だそうで。それに加え、予約の入ってない部屋は常に鍵がかかっていて無断で使うことはできないようになっているらしい。
『何から何まで、ありがとうございます。では月曜日…私頑張りますわ!』
「お力になれたようでよかったです。これがきっかけで何かわかればいいですね。では、また来週」
『はい、それでは失礼しますわ』
電話を切った後、ふと思った。
私はこの学園について知らないことばかりだな。
今日は金曜日。入学式の日から約一週間が経つ。明日の学校は休みだ。
色々なハプニングに見舞われたが、学園の生活にも慣れてきた。
なら明日はこの学園について調べるか。




