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初放課後で推理、VSテレビ男

三話連続投稿です。2/3話目


 その後の授業も順調に進んで、放課後前のホームルームになった。


 委員決めを今から行うようだ。

 学校の運営に生徒を携わらせようというのが方針らしい。


 私がいずれかの委員に立候補したかと言うと、答えは否である。

 まだ日本の常識に不慣れな自覚があるためでもあるが、正直面倒だなと思ったのが一番の理由だ。


 創也や暁人はなぜか他のクラスメイトからいずれかの委員に推薦されていた。


 信頼が厚いようだな。


 暁人はクラス委員長に。創也はうまく受け流して、どの委員にもならなかった。


 創也も面倒だと思ったのかな?


 失礼野郎は言わずもがな、早くホームルーム終われーっ、と部活のことしか頭にないと思われるくらいそわそわしていた。




 さて、無事に委員決めも終わり、ついに放課後だ。


 早く帰って、マジックの準備に専念するために宿題を先に終わらせよう。



「やあ、荒木さん。このあといいかな? 部活について説明があるんだ」



 今後の予定を立てていると、紳士の皮を被ったテレビ男が教室に現れた。

 現れたと同時に教室の女子生徒がまた騒ぎ出す。


「きゃーっ、不破間先生だわ!」

「なんて麗しいのかしら!」

「近くで見るともっと素敵ですわ!」

「あの甘い笑顔を私に向けて欲しい!」


 皆、騙されてるよ。

 この男はテレビの中で過ごすような地球外生物だ。

 時々言語が通じない時もある。

 だから、外見に騙されてはいけないのだ。


「…今日は忙しいので今度でお願いします」


 入った覚えもない部活の説明なんぞに割ける時間などない。


「よかった、じゃあ行こうか」


 いやいやいやいや。今度って聞こえなかったのか。


「僕も一緒に行きます」


 私が戸惑っていると、優等生っぽい笑顔で創也がテレビ男に話しかけた。


「んー、君は?」


「林道創也です」


「ふーん。面倒だから勝手にして。さあ、行くよ」


 肩に腕を回して私を逃げないようにさりげなく拘束しつつ、背中を押すテレビ男。

 人の目があるから昨日よりは扱いが雑ではなかった。


「不破間先生! 私もついて行っていいですか?」


 教室を出た辺りで創也に続きクラスの女の子も声をかけた。


「…君は?」


 穏やかに聞こえる声とは裏腹に、行く手を二度邪魔されてか少しイラついているのを真隣にいるテレビ男から感じた。


「立花真里亞です。不破間先生とは一度テレビ局で会ったんですよ? 忘れてしまったんですか? 私、悲しいです」


 その子の茶髪のふわふわカールをみて思い出す。昼休みの時に昼食を一緒にとりたいと創也たちに申し出ていた女の子だった。


「そうだったかな」


 テレビ男はそっけない返事だ。でも声色からして笑顔は保っているのだろう。


「本当は入学式の後に入部希望と挨拶を伝えに行こうとしたんですけど、不破間先生はすぐ研究室に戻ってしまって…。不破間先生の研究室はどこにあるんですか? 研究室に直接行こうと事務員に何度聞いても中等部の敷地内としか――」


「うん、君、失格。話は以上だよ。気をつけて帰るように」


 イライラの最高潮に達して我慢できなくなったのか。女の子の話に被せるように『失格』と伝えて、足早に私を連れて立ち去った。



 い、いいのか、ほっといて。



 テレビ男の歩幅に合わせながら困惑する。


 それに、あの女の子は『失格』で、昨日私は『合格』と言われた。


 基準はなんだろう。


 聞きたい気持ちはあるが、テレビ男と関わるのは本当に嫌なので聞かない。

 創也がそばにいてくれるのが本当に心強いな。



 そんなことを思っている間も私はされるがままにテレビ男に連れられ、気づくと私たちは校舎の裏にいた。



「さあ、乗って?」


 でた、スポーツカー。


「どこに行くんですか?」


「君、ついて来たいなら、ただついて来て。じゃないと置いてくよ?」


 創也の質問にそう答えたテレビ男の顔はとても冷たいものだった。


 それでも教師か。いや、授業はしないって言っていたそうだから、どうなんだ。

 この人、何者なのか知らなすぎて対応に困る。


 私と創也は、お互い無言で車に乗り込んだ。





 車がついたところは入学式の日にテレビ男と遭遇した建物だった。

 もしかしたらここが彼の研究室なのかもしれない。


「創也、私、確認したいことがあるの。だから中では私に任せてくれる?」


 小声で創也に伝えた。


「わかった。無理しないで。そばにいるから」


「すっごく心強いよ。ありがとう」


 建物の中に入ると、昨日まであった得体のしれない物体たちの姿はさっぱり消えていた。


 片付けたのか。捨てたのか。


 分からないが、こうまで面影がないと昨日の光景は夢だったのではと思ってしまう。それほど異常な空間だったのだ。


「適当に座って?」


 …地面にか。周りを見ても座れるような椅子も物もない。


「立ってます」


 制服が汚れる。


「そ。じゃあ、説明するねえ」


 建物の窓際の縁に腰をかけながらテレビ男は説明を始めた。


「まず、部の活動は、好きなもの、気になるもの、そんなのを探求してね。以上」


 具体性がなさすぎてどこから質問をすればいいのかすら分からない。


「で、探求してて途中で技術的なことが必要になった時だけ僕に聞きにきてね」


「毎回聞きにここまで来るのはきついです」


 案外校舎からこの建物まで遠いのだ。

 車を持っているテレビ男と同じ感覚では困る。


「毎回来られると面倒だから、電話がいいね。番号を交換しておこうか」


 切実にいやだ。


「私、信用のある人にしか番号を教えてないので、交換したくないです」


 よし、言ってやったぞ。


「あはははは、ひどいなあ。じゃ、どうしたら信用してくれるのかなあ?」


 え、どうしたら。

 うーん。

 まずこの得体の知れなさを改善したらできるかも?


「私はあなたについて何も知りません。だから信用できないんだと思います」


 かと言って、テレビ男が自ら自分について説明しそうにないな。


「よって、時間が経ってあなたのことを知ってから番号を交換します」


 つまり、保留で。


「僕に質問して知ろうとは思わない?」


 入学式の日と同じように何かを見定めるような目でテレビ男が私に問う。



 …昨日の出来事を客観的に振り返ってみると、私に、テレビ男に関した質問を、させようとする意図を感じる。


 それが、さっき創也に言った、私が確かめたいこと。



 ここからは私の鍛え抜かれた推理の出番だ!



 まず、


 この人の意図通りに質問をしてしまえばいいのでは、と思う反面、この人について質問をしてはいけない気がするのだ。


 例えば、


「これは何ですか?」と思わず聞きたくなるような奇妙なテレビ男の私物。

「あなたは何なんですか?」と聞きたくなるようなあからさまに不可解なテレビ男の言動。


 関わりたくないというのももちろんあるが、あの時はとにかく入学式に出たいという一心とテレビ男への警戒心でこれら全てをスルーできた。


 そのおかげでテレビ男の意図する質問は一つも言わずに済んだと思う。


 ではなぜ質問したらまずいと思うのか。


 私に質問させようとする度に見せる、テレビ男のあの見定めるような目が気になるのだ。


 先ほど、行き先も告げずにテレビ男が車に乗り込む時、創也がどこに行くつもりなのかを聞いた。その後のテレビ男の反応はとても冷淡なものだった。


 質問をしたらしたで冷たい対応。

 

 なのに、なぜそこまでして私に質問をさせたいのか。


 いや違うな。


 「私に」質問をさせたいというよりは、「生徒」に質問をさせたいのだと思う。


 あの謎の物体とかは体験入部期間とかで生徒たちに見せる予定だったのではないか。


 つまり私は、その生徒たちよりも先にたまたま建物の中に入って見てしまっただけの一生徒ということだ。


 だから、正しくは、「なぜそこまでして生徒に質問をさせたいのか」


 …ここまでが私の推理の限界だ。


 訳も、狙いも、未だ分からない。

 でも聞いたら負けた気がする。


 だから、


「分からないので、質問をしたくありません」と答えてやった。


「くっくっくっくっあははははは!!」


 ギョッとした。突然笑い出すとか、奇怪な言動と言うよりも頭がおかしい人の言動だよ。


 テレビ男の正気が戻るまで待つことにする。


「はー。久々にこんなに笑ったなあ。分からないから質問しないなんて、くっくっく。いやー、偶然だったけど部員にぴったりの生徒を見つけれたみたいだ。僕ってなんてラッキーなんだろう」


 部員にぴったり…?

 狙いは部員探しか?


 まだよく分からない。


「君が気に入ったよ。特別になんで君を部員にしたのか教えてあげる」


 え、教えてくれるのか。


「部員は元々とる気なかったんだ。研究に集中したかったし。でももしとるなら、僕について気になっても何も質問をしてこない生徒がいいなあって思ってたんだ。で、君は一度もそれをしなかった、むしろしないようにした。そこまで察してくれるなんて、僕にとっては神対応だね」


 生徒に質問をさせようとしたのではなく、質問をするかどうか、試していたのか。


 疑問が晴れてちょっとスッキリ。ここまで推理できなかったのが悔しいのも少しある。


 ということは、先ほどの茶髪ふわふわカール女子が入部希望なのに失格になったのは単にイラついたからではなく、テレビ男について質問をしてしまったからかなのだな。


 合格と失格の基準がこれでわかった。


「昨日、会場まで車で送る途中に僕確認したよね、君は僕に聞きたいことはないかって。後悔するよって。質問しなかった結果、君は今ここにいる」


 なるほど、私の場合はあれが決め手だったようだ。

 テレビ男のいう通りになるのは癪だが、すでにとても後悔している。主に道に迷った時点で。


「それなら、あなたに関して放置するので創也がこの部に入っても問題はないですね?」


「そうだね、そうしてくれるならどっちでもいいよ」


「では説明も終わったので、私たちは帰ります。車で送ってください」


「えええ、今から研究に集中したいなあ」


「あなたから関わって連れてきたんですから、最後まで面倒をみるのが筋でしょう」


「さっきから、あなたあなたって、僕の名前忘れた?」


 いや、覚える気がないだけ。

 テレビ男も少しぶっちゃけたし、私もぶっちゃけるか。


「…不破なんとかテレビ男」


「うわあ、ひどいなあ。じゃあ、僕も君のこと好きに呼ぶね、みっちゃん?」


 ゾワワワワッと悪寒がした。


「…気持ち悪い」


「あはははっ、新鮮な反応がいいねええ。おいで、車で送ってあげるよ」


 上機嫌にテレビ男は車に向かった。


「…はああああ。疲れた」


  やさぐれ刑事のようにかっこよく推理してみたかったのに、推理って疲れるものだったのだな。いや、この場合は相手がテレビ男だからだな。


「お疲れ様。不破間圭があんな性格だとは知らなかったよ」


「でも、お互い放置でいいみたいだから、会わなければなんとかいけそう」


「そうだね。早く俺たちも車に向かおう。不破間圭の気が変わる前に」


 二人でテレビ男の車へと向かった。

 


 こうして私の初推理は、疲労が残る結果となった。


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