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新しい人たち

三話連続投稿2/3話目。

区切れなかった・・・。ちょい長めです。


 あのあと、すぐに食料と何冊かノートを買い込んで部屋に戻ったのだが、

部屋に入ってすぐにドアをノックされた。


 部屋に入る時、視線を感じたから、私が部屋に戻ってくるのを待ち構えていたように思う。


 なぜ私を待ち構えていたのか。


 分からなかったので、少し警戒してドア越しに話しかけた。


「はい。どなたですか?」


「こんにちは、今日入寮したんでしょ? 挨拶に来たわ」


 私に挨拶をするために待ち構えていたのか?


 ドアを開ける。


「初めまして、私は荒木道奈。これからよろしく」


 ぺこりとお辞儀した。挨拶はするならきちんとしないとな。


「初めまして。(いずみ)明菜(あきな)よ。310号室にいるわ。あなた、中等部から入学する外部生ね?」


「うん、そうだよ。この学校に来るのは今日が初めてだね」


「なら今年から同じ中等部一年になるわね。あたしは初等部の途中からこの学園に転校してきたの。この寮には二週間前に初等部の寮から移ってきたわ。何かわからないことがあったらあたしに聞いて?」


 それは頼もしい。

 親切にしてくれるようだから、お礼を言っておこう。


「ありがとう。その時はよろしく頼むね」


「そ、れ、よ、り、も! あたし、見てたわよ! あなた、あの林道様が入寮の手伝いに来るって、一体どんな関係!?」


 これが本題だとばかりに迫って来た。

 鼻息が荒くて怖いです。

 そして、私の部屋の前で大きな声を出さないで欲しい。

 何事かと他の三階の子達が部屋から出てきた。


「…とりあえず、中に入る?」


「あらいいの? じゃ、お言葉に甘えて」


 部屋に入れて大人しくさせよう。

 椅子は一つしかないので、泉明菜に椅子に座ってもらい、私はベッドの上に座った。

 椅子に座った泉明菜は、自然と机の上に置いてある食べ物が目に入る。


「随分とたくさんの食べ物ね、お菓子にパンにおにぎりにフルーツ。こんなんじゃ、あなた太るわよ?」


「勉強するとお腹がすくんだ。ないと死んじゃう」


「大げさねえ。それよりも! どうなの!? 林道様とはどんな関係!?」


「どんな関係って、友達な関係だよ」


 向こうは妹と思っているみたいだが、私はあくまでも創也は大切な友人だと思っている。


「いいえ、あたしのゴシップレーダーはそうは言っていないわ。…鳳凛学園中等部。今年は開始そうそう荒れる予感ね」


 否定された上にブツブツと言い出した。この子は思っていることがそのまま口からでるタイプのようだ。前の世界にいたベスを思い出す。この感じはベスが噂話で自分の予想を話している時とそっくりなのだ。


「噂話が好きなの?」


 泉明菜のゴシップレーダーがどんなものかわからないが、もし好きならベスと話が合いそうだな。


「ええ!! 三度の食事よりも大好物なの! だって面白いじゃない? 特に恋愛ものはよだれが出るわ!」


 よだれが出たらちゃんと拭くのだろうか。

 好きなものがあって楽しむのはわかるけど、不潔なのはいただけない。


「噂話を聞くのも好きだけど、自分で予想を立てて話すのも好き?」


「ええ! ええ! あなた、わかってるわね! もしかして、あなたもゴシッパー?」


 ゴシッパーってなんだ。噂話の専門用語か。


「ゴシッパーが何かわからないけど、私の友達にも噂話が好きな子が一人いるんだ」


「そうなのね。ゴシッパーはゴシップを嗜む人のことを私がそう呼んでるだけよ」


 オリジナルの語彙を使わないでいただきたい。

 変な知識が増える。


「じゃあ、あなたはどうなの? ゴシップは好き?」


「正直興味はないかな。でも、その噂話が好きな子からは問答無用で聞かされるのが日常だったの。その子とは今離れ離れで、懐かしく感じるから噂話を言いたくなったらおいでよ。右から左に流しながら聞こうかな」


「ゴシップを思い出の曲扱いされたのは初めてよ。まぁ、聞いてくれるのは嬉しいから話したくなったら行くわね」


 噂話をしに来てくれるようだ。


 ベスの噂話を恋しく思うようになる日が来るなど誰が予想できただろうか。

 だがそのおかげで、この子とは仲良くなれそうだ。


「あ、泉さん。勉強してる時以外でお願い。集中してて聞けないと思う」


「私のことは明菜でいいわ。あなたのことも道奈って呼ぶわね。もう食堂が開いている時間だし。あたしと一緒に食べましょ? 他の部屋の子も紹介するわ」


「うん。よろしくね、明菜」


 そして私たちは食堂に向かった。





 食堂は、売店で食料を買っていた時にはガラガラだったテーブルがほぼ埋まっていた。


「だいたい座るテーブルはなんとなく決まってるわ。通路側に一番近いところが一年、真ん中あたりが二年、食堂カウンター付近が三年よ。先輩たちに誘われて一緒に食べる時以外は、通路側のテーブルを使うのが暗黙の了承ね」


 明菜が食堂に関して色々と説明してくれた。とても助かる。


 それに、またややこしい暗黙の了承というやつがあるようだ。

 電話をする時は始めに「もしもし」と言わないといけないのと同じようなことだな。


「その日外食をする人は食堂が開く最低2時間前には、あそこのパネルで自分の名前の横をばつ印に変えないとダメよ」


 それは案内にも書いてあったな。

 

 パネルにはあいうえお順に30名の生徒の名前が載っていて、数人がばつ印になっていた。この人たちは昼を食堂で食べないという意味になるらしい。


「料理の頼み方はパネルにある自分の名前をタッチして『オーダー』のボタンを押せば名前を呼ばれて料理がくるわ」


 二人で「オーダー」のボタンを押して受け渡し口の前で待ちながら明菜が説明の続きをした。


 説明を聞いている間、チラチラと視線を感じたが、見慣れない人がいて気になってるだけなんだど思って説明に集中する。


「食事のメニューはアレルギーの関係で食べれない人、部活関係でたくさん食べるデラックスプランの人以外はみんな同じものよ。給食みたいなものね。毎月献立が食堂の入り口の横に張り出されるから、確認してみるのもいいかも。今日は豚汁にあっさり生姜焼き定食ね。基本カロリーが抑えられたヘルシーメニューだし、美味しいからとても評判よ」


 カロリーと言うのは体が使うエネルギーの単位だったかな。


 実は私はその『たくさん食べる人』用のデラックスプランを申し込んである。メニューは先程確認したところ、こってりとんかつ定食大盛りだ。ついてくる豚汁も大盛りである。


 スキルを使う私にはカロリーは多い方が助かるのだ。


「おかわりはできるかな?」


「デラックスプランの人なら白米のおかわりはできるみたいよ、一般の食事プランの子達は基本的におかわりは無しね」


 一般のプランに申し込まなくてよかった。そんなんじゃ日々の勉強に支障が出てしまう。


「私、そのデラックスプランを申し込んであるんだ。白米のおかわりはできるみたいでよかったよ」


 そう言った途端に、明菜から全身を上から下まで見られた。


「…さてはあなた胃下垂ね。いくら食べても太らないなんて羨ましい限りだわ」


 胃下垂…? 体質の名前かな。あと、食べても太らないんじゃなくて、たくさん食べてもスキルで空になるまで消費するから太らないだけなのだよ。


「胃下垂じゃないと思う。勉強したら食べた分を全部消費しちゃうだけだよ」


「はあぁ、勉強して痩せれるなら、今頃喜んでやってるわよ」


 そんな乙女事情を話していると名前を一人ずつ呼ばれた。

 料理ができたらしい。


 定食が乗ったお盆を持って、通路側のテーブルまで明菜についていく。


「明菜ちゃん、遅かったじゃん。え、ちょ、その子だれ!? 超可愛いんですけどぉ!!」


 テーブルで既に食事を始めていた女の子が明菜に話しかけた。


 この子、男の子みたいに髪が短いな。でも前髪が長めでちゃんと女の子に見えるから不思議だ。

 同じこってりとんかつ定食大盛りだし。

 他の子と比べて日に焼けているし。

 半袖のジャージと呼ばれる体操着から覗く腕は筋肉が引き締まっている。


 私の推理によると、この子はズバリ体育会系だな!


「今日来た子よ。あたしのゴシップレーダーがきっかけで仲良くなったの。同じ三階の312号室の荒木道奈よ。道奈、こっちは302号室の小川風香。運動場で走ってばっかいる子よ」


「明菜ちゃん説明雑すぎいぃ。ねぇねぇ、道奈ちゃんって呼んでいい? 私のことは普通に風香で。これからよろしく! 私、走ることも好きだけど、同じくらい可愛いものも好きなのぉ! 道奈ちゃんとは是非仲良くなりたいなぁ!」


 明菜と親しいようだし、いい子そうだ。

 同じテーブルということは同い年か。普通に話そう。


「わかった、風香だね。これからよろしく。走るの速い―――」


「ねねねね、あなたさっき林道様と一緒にいた子だよね? 私は本田優香、友達になろう?」


 風香に話していたのに、女の子が急に割り込んで話しかけてきた。

 女の子は、顎までの長さの髪に花がついたヘアピンを前髪につけている。

 私の方を向いている目は、私自身ではなく、別のものを見ているような気がした。


 それよりも、断りも入れず話している最中に急に割り込むなんて、私にも風香にも失礼だと思う。


「私、話の最中にいきなり割り込んでくるような失礼な人とは友達になりたくないです」


 それに、会ってすぐに友達だ!じゃなくて、もっと話してお互いを知ってから友達になるのが私のやり方。

 

 今のところ、この子の印象はよろしくない。


「え、あ、え?」


 ポカンという言葉を貼り付けたような表情で、失礼な女の子が口どもる。


「ぷっ」


 明菜の方から、口から空気が抜ける音が聞こえた。

 明菜の方を見てみると、口を抑えて笑いを堪えているようだ。

 失礼な女の子の表情が面白かったのかな?


「ちょっと! 何笑ってるのよ! 人がせっかく友達になってあげようって言っているのに断るなんて。そっちこそ失礼だわ!」


 明菜が笑いを堪えているのが失礼な女の子にもわかったみたいで、顔を真っ赤にしながら怒り出した。


 私が一人で寂しくご飯を食べていたのなら、友達になってあげようと思うのはわかる。

 だが、私は他の子と話してたんだ。


 どうしてなってあげようなどと思ったのか理解ができない。 

 あと、失礼をたらい回ししないでほしい。


「先程の私は失礼だとは思いません。それに、私と友達になってあげようと思わなくても、私は他に友達もいますので、そのような気使いはいりません」


「あははははははっ」


 ついに明菜が笑い出した。

 まださっきの失礼な女の子のポカン顔を引きずっているらしい。でも今はポカン顔から程遠い表情だ。その女の子は真っ赤な顔で目尻を釣り上げて私を睨んでいる。


「…許せない。私を笑いものにするなんて…!!」


 いや、勝手に明菜が笑っただけで、私は関係ないと思うのだが。


「覚えてなさい!」


 ビシッと私に人差し指でさしたあと、ドシンドシンと足音をさせて自分が座っていたであろう席にあった料理を荒く持って返却口へと向かった。


 まだだいぶ料理が余っていたと思うのだが、残すようだ。


 勿体無い! 食べ物を粗末にする人とも友達にはなりたくないな。


 そして、そのまま一部始終を見ていた周りの人たちの視線を引き連れて食堂を去って行った。


「明菜が笑うから、恨まれちゃったよ」


 笑いものになったのが悔しかったようだ。と言っても、笑ったのは明菜だけである。まだ笑ってるぞ。


「あはははははっ、あー、笑ったわー。いやいや、あれは私が笑ったからってのもあるかもだけど、自分の思い通りにならなくて怒ったって感じだったわよ。ほとんど本田さんの自業自得じゃない」


 ああ、さっきの失礼な女の子は本田って名前だったか。忘れていた。


「あたし、道奈みたいに自分の意見をきちんと言う人、好きよ。三階であなたに話しかけてよかったわ」


 さっきので、明菜の中の私の好感度が上がったようだ。


「道奈ちゃんすごいやぁ。顔に似合わずはっきりものを言うんだね。私もそう言う人は嫌いじゃないよ」


 風香の中の好感度もやや上がったようだ。


「でも今ので落ち着いた寮生活は送れないかもねぇ」


 え。そうなのか。

 風香の発言が気になる。


「なんで? 関わらなければいいんじゃないの?」


「きっと本田さん、道奈に会うたびに突っかかって来るわよ。前もこういうことがあって、その時は相手と顔を合わせるたびに、時場所関わらず嫌味を言っていたのを見たことあるわ」


 風香の代わりに明菜が教えてくれた。


 だいぶ面倒臭い人に目をつけられたようだ。


 んー。


 そん時は、そん時で対処するか。

 それに会わなければ言い訳だし。


 あ、そういえば忘れていた。


「そうなんだ。それで、風香は足が速いの?」


「道奈、あなた本田さんに対して興味なさすぎ。これからのために少しは気にした方がいいわよ」


 明菜が失礼な女の子――もとい本田さん――について言っているが、それよりも風香の足の速さが気になる。


「ふっ、私、速いよ。風のようだよ」

「自分で言うかっ」


 明菜が風香に突っ込んだ。


「陸上部の短距離専門で、今のところコンディションが最高なら100m12秒台だね。でも大会で優勝するには12秒切らないといけないから、もっと速くなるように毎日部活に出て練習してるんだ」


 風香の強さをひめた目で意気込む姿がとても輝いて見えた。


 100m12秒と言うのがどれくらい速いのか想像つかなかったが、自信を持って言っていたのでとても速いのだろう。


「素敵だね」


「ありがとう」


 はにかんでお礼を言う風香を見て、

 自分で決めた目標に向かう風香を応援したいなと思った。


「ところで、入学式も始まってないのにもう部活に入れるの?」


 案内には入学式が終わって一週間くらい経ってから体験入部期間というものに入るそうだ。そこで気に入った部活があれば入部することができると書いてあった。

 始まってもないのに入れるのだろうか。


「私はこの学校の陸上部からスカウトで入ったから、もう練習に参加してもいいんだ。学校が始まるまでの時間がもったいないからね」


 そんなこともこの学校はしているのか。

 お金がたくさんあるようだ。


「他にも初等部の時に中等部でも同じ部活を続けるって既に決めてる生徒も練習に参加することができるよ」


 小中高一貫の学校だからこそできることなのかな。


「まあ、部活ももちろん楽しいけど、こうやっておしゃべりしたりするのも好きだから、何かあったら気軽に遊びにおいで? 夜ならいつでも部屋にいるよ」


「わかった。いつか遊びに行くね」



 寮初日のご飯は久々の女の子との会話で楽しく過ごした。



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