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入寮

執筆が、楽しくて止まらない・・・。

予告詐欺になってしまいましたが、三話連続投稿します。

1/3話目。


 マジックの練習をしたり、推理番組を見たり、創也とご飯を食べに行ったり、創也から借りた参考書で予習をしておいたり、朝の料理の本を借りてじっちゃんにご飯を再度作ってあげたりとしているうちに日々はあっという間に流れた。


 4月1日、晴れ


 今日は寮に移る日。じっちゃんとは、しばしのお別れとなる。と言っても、入学式には来てくれるから。またすぐに会える。


「じっちゃん! ついたら電話する! あとでね!」


 創也の車の前でじっちゃんに抱きついた。


「行っておいで。楽しんできなさい」


「うん!」


 もう一度ぎゅむっとじっちゃんをハグして車に乗り込んだ。それから、じっちゃんが見えなくなるまで、じっちゃんの店が見えなくなるまで、車の窓から眺める。


 またすぐに戻ってこれる。

 まだ永遠お別れじゃ無いから。

 頑張るんだ、私!


 寂しい気持ちを前向きな気持ちに変えて、気合を入れた。


「荷物は本当にそれだけで大丈夫?」


 創也が私の大きめのカバン二つを見ながら聞いてきた。


「元々私が持っていたものって、ほとんど本ばっかりなの。全部持っていくわけにはいかないし、学校に図書室もあるみたいだから、置いてきた」


 私のカバンに入っているものは、歯ブラシとか洗剤などの日用品と、祝日に出かける時に着る用の服何着か。学校には制服が支給されるみたいなので、服もそんなに多く必要ない。創也母が買ってくれたドレスは着ることはもうないと思うのでじっちゃんの店に置いて来た。あとは筆記用具くらいかな。


 もう一つのカバンにはこれまでにコツコツと自分で作って来たマジック道具が主に入っている。

 マジックの練習は順調で、この前、創也に簡単なマジックを披露してみた。とても褒めてくれたな。もちろんじっちゃんにもいくつか披露済みだ。今は人に上手く魅せる練習をしている。


 マジック道具と一緒に白椿も入れた。

 このカバンに入っているものは基本、壊れ物なので扱いを慎重にしている。


 学校で使う新しい教科書とか制服はじっちゃんの店に送らずに寮に直接置いてもらうことにした。寮に着いたらその確認も必要だな。


「何かいるものがあったら、じっちゃんに送ってもらえばいいし」


「そっか。なんかあったら俺にも言って? 貸してあげれるものは貸すよ」


「ありがとう! あったら言うね」


 なるべく一人でなんとかするようにしよう。それでもダメだった時にじっちゃんや創也に頼むか。


 学校まで車で約2時間。


 寮は学校の敷地内にある。到着するまで車の中で創也と他愛もない話をして楽しく過ごした。





「うわあ。大きい!」


 学校の門を(くぐ)った後、ポツポツと咲き始めた桜の木に囲まれた道を通ってしばらくすると、学校の建物が見えてきた。なんだかガラス張りの建造物が複数繋がってできたような形をしている。


 学校の門には筆で書かれたような文字で大きく『鳳凛学園』と書いてあった。

 迫力のあるところなのかなと考えていたが、印象は綺麗で大きな学校だな。


 それよりもたくさん窓があって空が見やすそうだ。ここはポイントが高いぞ。


 パンフレットに書かれた情報によると、創也たちが通う鳳凛学園は山を丸々一つとその周辺の土地を広く所有していて、その各箇所に初等部、中等部、高等部の校舎が配置されている。

 運動場や体育館などの施設もその近くに複数点在しているそうだ。


 それぞれの建物に移動する時、遠くても大丈夫なようにシャトルバスが通っている。

 まるで一つの街のようだ。


 私が住む予定の寮は中等部の校舎から近い所にある。

 中等部の女子寮は合計で3つあり、私は三番寮と呼ばれる寮でこれからを過ごすことになる。


 今は中等部の校舎があるエリアに向かっている所だ。


「空がよく見える部屋がいいいなあ」


 大きな窓であれば尚可。


「上の方の階だったらよく見えるかも。こればっかりは運頼みだな」


 よし、今からでも祈ろう。日本式でするか。

 目をつぶって二礼二拍手一礼を車の中で座ってした。


 この時創也から何か聞こえた気がしたが、気にしない。


「到着したみたいだ。行こう」


 目を開いて車の外を見る。大きく「三」と書かれた三階建ての建物が目に入った。

 古くもなく新しくもない感じだ。普通だな。


「本当は男は入っちゃいけない決まりだけど、引越しの手伝いとかの理由なら予め申告さえすれば入れるんだ。カバンは俺が部屋まで持つよ」


 私が返事をする前に、ひょいっと私のカバンを持って先に外に出る創也。


 せめて何か言わせてくれ。

 

 それに…手伝いまでしてくれるのか。これは初耳だ。


 私も外に出ようとドアに手をかけたら、先にドアが開いた。見ると創也が手を差し出している。


「足元に気をつけて」


 …創也にお礼をした日からやけに私の世話を焼いている気がする。

 一体何が創也をそうさせるのか分からないが、差し出された手はお礼付で取っておこう。


「ありがとう。最近優しさに磨きがかかってるね。そんなに磨かなくても創也は十分優しいよ?」


 やりすぎると、こちらの良心が痛むのだ。


「いや、まだまだなんだ。道奈が気づくまで俺もっと頑張るよ」


 この異常な優しさは私が原因なのか。

 なすりつけているだけではないのか。


 その辺りが曖昧である。


 そして創也よ、何にごとも程々が一番なのだぞ。


「…無理しないようにね」


 こんなにやる気のある創也にズバッと言うことができなくて、当たり障りのないことしか言えなかった。


 二人で寮の受付へと向かう。


「こんにちは。今日からお世話になります。荒木道奈です。鍵を取りに来ました」


 受付の中から中年くらいの女の人が出て来た。

 入寮手続きはすでに終わらせているので、鍵をもらって受け取りのサインをするだけだ。


「こんにちは。あなたが荒木さんね。ようこそ三番寮へ。私はここの寮を管理する木本よ。寮母さんは今は食堂でご飯の準備をしてると思うから後で会えるわ。はい、これがあなたの鍵よ。それと、鍵の扱いに関する注意事項を読んで同意したらここにサインをお願いね」


 軽く注意事項を読んだ。

 紛失時には罰金を課すとか、要はなくすな壊すな、と書いてあった。

 

 同意のサインを書いて木本さんに紙を返す。


「はい、ではこれからよろしくね。後、林道さんはこちらに名前と日時を。男子は通常出入り禁止だから、引越しの手伝いが終わったら速やかに出ること。出る時もきちんと出たと証明するために、受付でここに退出した日時と名前を再度書いてから建物を出るように」


 木本さんは創也のことを知っているようだ。そして、男子禁制なのもあって出入りに厳しい。


 私は車で送ってもらうだけだと思っていたのだ。なのに、創也は荷解きも手伝う予定だと今さっき言ってきた。予め寮に連絡までしていたようだし…。


 荷物は二つだけだから態々手伝いなんてしなくてもと思うのだが、付いて来てくれる創也の優しさは嬉しい。それでも、それは逆に私一人では荷解きもできないと言われているようで複雑になる。

 

 悶々と考えてもどうしようもないので、今はまだ見ぬ自分の部屋に集中することにした。


 


 鍵についたプレートには『312』と書かれてあった。ということは、三階か。


「やった! 最上階の三階だよ! 祈りが届いた!」


 嬉しくて飛び跳ねてしまう。特等席から空を眺め放題だ。


「はははっ、それはよかった」


 微笑ましい小さな子供を見るような顔で見られてしまった。


 …ははん、わかったぞ。さては創也、私のことを妹か何かだと思ってるな。なら辻褄が全て合う。


 カレーを食べに行った日も友達じゃなくて家族になりたいとも言っていたし、ここまで世話を焼きたがるのも妹だと思っているからか。

 同い年の創也に年下に見られるのは少し癪だが、ここまでお世話になっているのだ。創也の気がすむまで妹ごっこに付き合うことにするか。私はその辺りを察せる良識のある乙女なのである。


 部屋に向かう途中、寮に住んでいる女の子たちに何人かとすれ違ったが、みんな私ではなく創也を見ていた。やはり男子がここにいるのは珍しいのだな。


「310…311…312!」


 ここだ! しかも角部屋!


 早速鍵を開けて中に入る。


 ドアを開けてすぐに目に飛び込んで来たのは窓に映る青い空―――ではなく緑、緑、緑の木の葉たち。



 …上げて落とされたこの感じ。



 ダメージも倍である。



「あぁ。空が見えないな」


 私が落ち込んでいるのに気づいた創也が、ポンポンと肩を叩いて私を慰める。


 部屋はどんなに狭かろうと、汚かろうと、窓から空が眺めれたらそれで良いのだ。


 こんなことって……もう既にくじけそうである。


「とりあえず、中に入ろうか」


 創也に背中を軽く押されて中に入る。脱いだ靴は脱ぎっぱなしにして真正面にある窓へとまっすぐ近づいた。


 間取りはパンフレットに載ってあった通り、ドアから入ってすぐ右に洗面台付きのユニットバス。左側に靴棚と全身鏡。短い通路を通ってまっすぐ中に入ると一人で使うには十分の広さのワンルームになる。机とベッド、クローゼット、本棚等はすでに完備してあり、学生が生活するには不便のない仕様となっていた。


「あっ、こっちにも窓がある!!!」


 ワンルームの右側の壁を見ると同じくらいの窓がもう一つ付いていた。

 しかもこっちは空が見える!


 角部屋で本当によかった!


 さっきとは打って変わって上機嫌になる私。


 上げて落とされて、また上げられると喜びがおかしいくらい跳ね上がるようだ。


 早速窓を開けて空を見る。

 春に入ってはいるがまだ少し肌寒い温度だ。

 ひんやりとした風とともに新鮮な空気が部屋に入り込む。


 空が見えるならまだ頑張れそうだ。今日から3年間乗り切るぞ!


「浸っているところ悪いんだけど、そろそろ荷物解こうか。管理人からも速やかに手伝って出ろって言われてるからな」


「あっごめん、そうだった。でもそんなに荷物ないからすぐ終わると思うよ」


 カバンを開けて、中の荷物を部屋のどこに置くのかそれぞれ場所を決めて行く。


 服や下着はもちろん私がやったぞ。

 クローゼットを開けると制服がすでに入れられていた。あとで着てみよう。

 新しい教科書は机の上に箱詰めで置かれていた。これは名前を書いてあとで要予習だ。とりあえずは本棚に入れておく。

 必要なノートとかはあとで買いに行く予定だ。

 火宮暁人からもらった白椿は迷った末に、本棚の一番上に置いた。机に置くとスキル使用中に何かしちゃいそうで怖くておけない。


「手伝ってくれてありがとう。おかげであっという間に終わったよ」


「どういたしまして。…道奈、その椿って暁人から貰ったやつ?」


 創也が本棚の上に置かれた白椿を見ながら聞いてきた。


「うん、そうだよ。この前渡しに来たんだ。お返しに私は押し花の栞をあげたの」


「…そう、…道奈の誕生日っていつ?」


「へ?」


 急な質問に素っ頓狂な声が出た。


「そう言えば、道奈の誕生日知らないなと思って」


 誕生日か。

 ここは、道奈の誕生日でいいかな。


「七月十五日だよ。創也は?」


 ついでに聞いておこう。


「俺は十月十日だ。七月十五日か、覚えた」


 十月十日。覚えやすいな。


「私も覚えたよ!」


 誕生日には何かあげよう。何にしようか…。

 まあ、まだ先だし、プレゼントはおいおい考えるとして。


「片付けも終わったし、下まで見送るね!」


 二人で寮の受付へと向かった。




「今日は助かったよ。今度お礼するね」


「じゃぁ、そのお礼はしばらく貯めといて」


「保留ってこと?」


「いや、小さなお礼を貯めて大きなお礼にするために育てるんだ。で、そろそろかなって時にお礼が欲しいって言うから、その時ちょうだい」


「えっ、過度な期待は逆にプレッシャーだよ」


「ははっ、そんな無理なことは要求しないよ。今はとりあえずそう言うことで、お礼は気にしないで」


 そんなことを話していると受付に付いた。途中やはり女の子たちの視線が付いてきていたが理由が理由なのでスルーした。


「手伝いが終わったようね。はい、ここに名前と日時ね」


 創也が木本さんに言われた通りに名前と日付を書いて二人で寮の外に出る。

 創也の車が待っていた。


「じゃあ、俺はここで」


「うん。気をつけてね、また会おう!」


 創也は寮ではなく自宅から通学しているそうだ。家から学校が近いなら寮に入る必要はないからな。



 よし、学校が始まる前にやるべきことはたくさんある。



 目標は教科書をざっと一通り予習。空いた時間にマジックの練習。予習が終わったら推理小説でも読むかな。


 まずは食料確保からだ。確か売店は食堂の横にあると寮のパンフレットに書いてあったな。そこでノート等の文房具も売ってるはずだ。


 奨学金の対象は学費と寮費。寮費に毎日の食事代も含まれているが、売店で買うものは含まれない。よって、予めじっちゃんがそれ用にお小遣いを多めにくれたのだ。勉強をすると異常に食べると知っているじっちゃんからの気遣いが嬉しい。


 お小遣いがなくならないように気をつけようと思う。


 頭の中でやることを整理しながら足早に自分の部屋へと戻った。


説明回でした。

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