道奈と、車の中で2
連続投稿3日目の1/3話目。
創也視点で、短めです。
「道奈は白椿が好きなんて、知らなかった」
車に乗り込んでしばらくして俺は先ほどからずっと気になっていたことを道奈に聞いた。
「んー、普通かな? 他の白椿は見て綺麗だなあ、とか思うだけだったけど。あの白椿は特別だったみたい」
――――あの白椿。
道奈が他の男子から花をもらうなんて嫌だと思った。
けれども、それを言わなかったのは、一輪の大きな白い椿と一緒に青白いライトに照らされた道奈がとても――――
寂しそうだったから。
孤独に耐えているような、そんな道奈のあの姿を見るのは二度目だ。
一度目は昨日の買い物で。
俺の母さんと抱きしめ合っていた途中で、急に店の外に飛び出した。
道奈は平静を保っているつもりのようだったが、そうでなかったのはバレバレだ。
あの時の、空を見上げる道奈はこの世界から一人ポツンと切り離されたように見えて戸惑った―――いつもの明るい道奈とは程遠い。
寂しさに耐えているような、空を見てそれをごまかすような。
その姿はとても脆く、儚く、すぐに壊れてしまいそうだった。
あの時。
俺が何かできることはないだろうか、そう思って近寄ると、道奈が振り返ったんだ。俺と目があった途端にいつもの道奈に戻ってしまい、何も言えなくなった。
まるで、ここからは踏み込んではいけないと線を引かれたようで悔しく感じた。
『他の椿と離されて、一人ぼっちみたい』
先ほどは、椿を見ながら自分のことのように呟く道奈に、俺は上着をかけてあげることしかできなくて、今度は情けなく感じたんだ。
あの時は何を考えていたのだろう。
何を抱えているのだろう。
そういえば、道奈のおじいさんは見たことあるが、道奈の両親は見たことがない。
道奈の口らかも両親については一言も聞いていない。
もっと仲良くなれば分かるようになるだろうか――。
「道奈のお礼、すっごい楽しみだ」
「えへへ、もうすぐじっちゃんの店に着くから、それまで我慢我慢!」
道奈に頼ってもらえるくらい仲良くなろう。
道奈の無邪気なその笑顔を見ながら、そんなことを思っていると、
「ここのパーティーって、女の子が野蛮になる原因でもあるのかな」
…野蛮?
俺が現れれば、群がって。
俺が笑えば、顔を赤らめて。
女の子たちは予想通りの反応しかしていない。
今日のパーティーにいた女の子たちもいつもの通り可愛かった。
野蛮と思う部分なんてなかったはずだが。
道奈の目は大丈夫か。
強いて言えば、いつもよりも少し強引についてこようとしたことくらいか。ずっと近くにいるとうるさいから、いつもパーティーでは適度に眺めて離れるようにしている。
「そうか? 俺は普通に可愛いと思ったけど」
「うーん、令嬢みたいで私も最初はそう思ったけど、殺気を彼女達から常に感じていたんだよね。パーティーって言うよりは狩場だと思ったよ」
そんな恐ろしいことになっていたのか。可愛い女の子たちからは想像がつかない。
「なんで道奈に殺気を?」
「さあ? 私が新入りだからかな?『ここでのルールを身を以て知れ! ここは狩るか狩られるかの世界だ!』みたいな感じで」
「どこの戦場の話だよ。パーティーの話だったはずだろう? 時々道奈の思考が分からなくなるよ」
「創也が先に警戒してって言い出したんじゃん。で、側にいろ。俺が守る。って言ったの忘れたの? それ信じて殺気に耐えたんだから」
道奈はパーティーで俺を頼ってくれていたのか。
「もちろん覚えてる。殺気に気づけなくてごめん。次も俺が守るからまたパーティーがあったら一緒に行こう」
「えええ。もうパーティーはいいかな」
「きっと美味しい料理もたくさんあるはずだよ」
「先にメニューを見て決めるのはあり?」
「はははっ、ありだよ」
道奈は可愛い。他の女の子たちとは全然違う感じの――
なんと言うか、触れたくなるような可愛さだ。
今も頭を撫でたくなるのを我慢している。
今日はもう触れてはダメだそうだ。
とても残念。
さて、道奈の家まであと少し。