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2nd album: Can we go to the top? / Don't forget!!

「とりあえず、ここはあまり使わないので練習に使ってください」

彼がMoonを案内したのは、SCB2階のAスタジオ。ここは毎週土曜日に埼玉県内の情報を発信する生放送の番組しか収録しない。だから彼女たちが歌やダンスの練習をするにはぴったりだ。それにしても……。


「ねえ」

「どうした」

「どうしてMoonのみんなと最低1メートル間隔開けてんの?」

「当たり前だろ。アイドルなんだから」

とか言って、女の子に耐性ないんでしょ。


本馬さんの引っ越しを手伝うとかしてると、もう12月になってた。彼女たちは新しい曲を作ってる。


そんなある日、彼が突然切り出した。

「Moonって、最初のMを小文字にした方が可愛らしいんじゃないですか?」

リーダーが答えた。

「私たちは英語の文法にのっとって名前を付けました。ですから、最初の文字は大文字です」

「それならThe Moon になるはずですよ、グループ名ですから」

「え、そうなんですか?」

「はい。というかそれ以前にアメリカでもないのに英語の文法にそんなに執着しなくても良いかと」


しばらく5人で目を合わせあう。

「……そうですね。次からmoonで活動します」

「ありがとうございます。実は、埼玉ファーストライブのポスターのデザイン上、Mは小文字の方が良いので」

自分の希望でグループ名変えちゃったよコイツ。


「今度の歌はどんなの?」

休憩中の葉月に訊いた。

「『Can we go to the top?』っていう、テンポの速い曲」

「タイトル長いね」

「やっぱり? 作詞したのは燈梨なんだけどね」


辻 燈梨さんはmoonの中でも一際テンションが高い。

「あおちゃんもどうぞ!」

「え、ああ、ありがとうございます」

辻さんが水をくれた。いきなり『あおちゃん』なんて。

「ハヅキーの友達なんだって!? 練習場とかありがとう!」

この人、感嘆符使いすぎじゃないかなあ。


翌日。2-Aスタジオに私と彼が入ると、昨日のような和気藹々とした雰囲気から一転していた。誰も話をしていない。静まり返っている。

「どうかされましたか?」

彼がリーダーの唐魏野さんに話しかけた。

「いえ、私は何でもないのですが」

「燈梨のボールペンがなくなってしもたんやって」

本馬さんが言った。引っ越しを手伝ったときも思ったけど、この人大阪弁だったんだ。


「ボールペンですか」

彼が辻さんに目を向けた。

「うん。中学校のときから大事に使ってたやつ。けっこう思い出あるのに……」

「そうですか。お気持ちはわかります。ですが、あなたが沈んでしまっていてはmoon全体が沈んでしまいます。厳しいかもしれませんが、あなたは笑顔でいてください。探し物というのは探していないときに見つかるものですよ」


厳しいこと言うなあ、と私は思った。いつも笑顔でいるなんて、私にはとてもできない。彼女たちアイドルというのはそんなに難しい仕事なのか。

「……うん! そうだね!」

辻さんは見た目は復活した。


「それでは、そろそろ練習しましょう」

唐魏野さんが立ち上がると、他の4人も立ち上がった。

あれ? 何となくみんな気分が上がってるように見える。もしかして、辻さんが笑顔だから?


「燈梨、新しい曲できた?」

葉月の問いかけに、辻さんは元気に返した。

「うん! 昨日の『Can we go to the top?』と、ソロの『Don't forget!!』!」

「もしかして、それもテンポ速い?」

「もちろん!」

「少しは歌うことも考えてくださいよ」

「大丈夫、私が歌うから!」

「うちらも踊りはするんやで?」

なるほど、みんな辻さんの話に入ってる。ムードメーカーってやつだったんだな。


忘れるな ドンとフォーゲット‼︎

いろいろあるけどきっといつかは叶う時くる


しかし、ほぼラップのようなテンポはカラオケで大変そう。

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