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moon、知ってる?  作者: 川里隼生


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13/13

Last album: Zero

「午後1時出発です」

 5月31日火曜日。私たちは明日から横須賀支社に異動する。もう荷物はまとめた。


 彼女たちが来て半年と少し。いま私たちがいるこの劇場ではmoonが2週間に1回くらいのペースで歌っていた。客席は100もないような小さな劇場。そこに今日は満席のお客さんが詰めかけた。後方には立ち見の人までいる。


「moon さいたまファイナルライブ」

 ステージには彼が昨日作った看板。番組で使うフリップを流用している。確か、最初のmを小文字にさせたのは彼だった。


 私たちはステージ袖から見守る。このライブが終われば急いで大宮駅に向かわなきゃいけない。少し日程が忙しい。


 moonの5人はそれぞれスポットライトで照らされている。劇場スタッフの皆さんが手伝ってくれている。彼女たちは彼女たちだけじゃ輝けない。月のようなアイドルグループ。そう海が言ってた。海の両親はまだ見つからない。


 最後の曲を決めたのも海。基奈はさいたま最後の曲は『And you』にしようと言ってた。でも結局、海が新曲が良いと言ってそうなった。私は最後くらい最初の曲でも良いと思うけど、リーダーの言うことだし、まあ多少はね?


「最後だからね、がんばる」

 昨日、葉月が電話してきた。夜11時過ぎてた。

「うん。がんばるぇ」

 噛んだ。葉月は電話の向こうで笑ってた。


 その葉月も今はステージで元気に踊ってる。今日は燈梨と鏡子が逆の位置にいる。登場をミスってそのままやってる。どこかで入れ替わるチャンスがあれば良いけど。


「では、これが私たちのさいたま最後の曲です」

 ステージ中央の海が言った。最後の曲は『Zero』。パッヘルベルが作曲したクラシックの名曲『カノン』と同じコード。歌詞は『仲直り』がテーマになっている。


 だから ごめんね

 これからみんなで作る思い出

 また zeroから始めよう


 聞いてるうちに、海と他のメンバーとの仲直りを歌っていると気づいた。カノン進行と呼ばれるこのコードは、卒業式が近い春のような雰囲気が出る。埼玉県を飛び出し、いざ新天地へ。「いざ新天地へ」って、どっかで聞いたなあ。どこだったっけ? まあいいか。


 ライブが終わった。オーディエンスは総立ちだった。良かった。最高の形でさいたまを出ることができる。

「お疲れ様でした」

 彼と私で迎える。


「緊張しました……」

「楽しかったよ!」

 いきなり正反対の感想が出た。

「ところで出発は何時やったっけ?」

「1時だって言ってたじゃん」

 基奈と葉月はいつも通り。


「では行きましょうか」

 海が言った。雑談してたみんなが海を見る。それを見て、海こそリーダーに相応しいと思った。

「ええ。行きましょう」

 ディレクターの彼が言った。英語で『Director』は『監督』。がんばれ、moonの監督さん。

本編完結です。ありがとうございました。なお、来週にあと一本短編を投稿し、moonシリーズを終わらせたいと思います。

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