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moon、知ってる?  作者: 川里隼生


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12/13

12th album: X'mas night / Yokohama style

「雨、ひどくなってきたな」

 5月になった。私たちの転勤は6月に決定し、今は1ヶ月かけて仕事の引き継ぎをしてる。そんなに大したことはしてないけど。


 2-Aスタジオに向かう途中、廊下の窓を見ると雨が降ってた。折り畳み傘持ってて良かった。


 スタジオでは、メンバーが荷物を片付けてた。あと1ヶ月はここで活動するのに。

「あー!」

 突然、テーブルの下の燈梨が叫んだ。

「どしたん?」

「ボールペンあった!」


 去年の11月からなくなってた燈梨のボールペンが見つかった。テーブルの下のダンボールに入ってた。どうしてそんなところにあるんだろう。


「鏡子、歌詞カード落としましたよ」

 また別の場所では海が落とし物を拾ってた。

「どうも……」

 鏡子はいつも通り消え入りそうな声。


 鏡子が落とした歌詞カードの曲は『X'mas night』。5月にクリスマスというのは季節外れだと思う。


「どうして今クリスマスなの?」

 葉月に聞いてみた。

「本当はクリスマスに合わせる予定だったんだけどね、海が曲にOK出さなくてこんなに伸びちゃったの」

『X'mas night』はソロの曲だが、少しずつ歌詞を変えて4人分のパートがある。でも海のパートはなかった。


「海だけ別の曲にしたんだって」

 それはもうグループの意味なくなっちゃうような気がする。


「ねえ、海」

 彼と他のメンバーがコンビニに行ったときに話しかけた。

「『X'mas night』の曲が気に入らなかったの?」

「聞いたんですか」

「うん。誰からとは言わないけど」

「葉月でしょう?」


 ばれてた。

「だから私は『Yokohama style』を歌うことにしたんです。初めて私が作詞も作曲もしたんですよ」

「そうなんだ。でもそれって、moonの意味ないよね。moonは嫌い?」


「嫌いだなんて、そんなことありません。今度だけ合わなかったんです」

「音楽性の違いってやつ?」

「そんなに大袈裟なことじゃありません」

 海は拗ねてしまった。


 みんながサンドイッチ買ってきた。何となく海とみんなの間に溝がある気がする。


 彼が私の隣に座った。まだmoonの隣には座れないみたい。

「何か唐魏野さんに言った?」

 海を苗字で呼ぶのあんただけだよ。

「まあ、少し」

「そう。お疲れ」

 珍しく彼に労われた。


 赤いレンガの倉庫街

 降りしきる雪は止まらない

 わたしはがんばってるのに


 海の『Yokohama style』の人気は今ひとつだった。

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