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moon、知ってる?  作者: 川里隼生


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10/13

10th album: That star is beautiful. / Usual world

「じゃあ鬼ごっこしましょう」

 海が『現実逃避したい』という理由で復帰することになった、4月1日。新年度1日目だけど、新社会人でも何でもない私たちには至って普通の1日。


 海の体力を休職前の状態に戻すため、moon全員で朝から走り回ってた。そのうちなぜか私と彼も練習に入ることになった。そこで出た彼の提案が鬼ごっこ。


 範囲はさいたま市の浦和区と大宮区。公共交通機関の使用は範囲を出ない限り許可というルールで始まった。鬼は海。復帰した海はポニーテールになってた。


 とりあえず私はSCBから離れようと大宮駅を目指して歩き始めたが、すぐ呼び止められた。振り返ると葉月がいた。

「一緒に逃げない?」

 小学生の頃はよくそうした。もちろん2人のほうが心強い。


「葉月は変わってないね」

「胸見ながら言わないでよ」

 2人でいろいろ話しながら大宮駅まで歩く途中で、彼と鏡子が捕まったという情報が入った。LINEというのは本当に便利。


「罰ゲームとかありますか?」

 海からのメッセージ。とりあえずこう返信した。

「何か歌わせたら?」

 その結果、先週発表したばかりの『That star is beautiful.』を2人で歌ったらしい。ポルカみたいなおかしなメロディが特徴的な歌。ふふ。余計逃げなきゃならなくなった。私は聞くのは好きでも歌うのは自信ない。


 そう言えば彼も歌は苦手とか言ってたかなー、と思っていたら、大宮駅が見えてきた。2時間くらいかかった。海が追ってくる気配はない。今の所燈梨と基奈も無事みたい。


「ところで、葵は彼氏できた?」

 突然なんてことを聞くんだろう。私のよろしくない人間関係がばれるじゃないか。

「残念なことにいないよ。葉月は?」

「私は一応、気になる人が」


 ほほう。

「ほほう。それでそれで?」

「いや、まだ何もアクションしてないんだけど」

「えー。何かしないと気づいてもらえないよ?」

「恋人いない人が何言ってんの」

「それもそっか」

 一笑に付された。


 結局、それから5時までに捕まったのはカフェで不意打ちを食らったという基奈だけだった。

「疲れました……」

 へとへとの海が基奈とSCBに戻ってきた。全身から汗が吹き出ている。


「海、大丈夫?」

 葉月がハンドタオルを手渡した。

「はい。大丈夫です。ありがとうございます」

「すみません。俺の仕事なのに」

 彼がディレクターだったことを思い出した。最近のこの人ってディレクターよりプロデューサーって感じがする。


「あ、はい。私がやりますから」

 葉月は返答がしどろもどろになった。しかも心なしか顔が赤い。この反応は……。あれ、じゃあ基奈の言う「気になる人」って……?


 後日、基奈が歌う『Usual world』の歌詞カードを見つけた。レゲエという種類の歌らしい。ソロなのに歌詞が被る部分がある。ライブで歌えないやつだ。そしてこんなフレーズがあった。


 終わらないで usual world

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