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俺、動揺してます。

2話目です。本当に悪ふざけをしているのは私ですまことに申し訳ない。しかも話は全く進んでいません。

前回の簡単なあらすじ。

俺、糸冬雪祈【オワリユキ】は、幼馴染による悪質な嫌がらせによって、女の子になっちゃいました。




「いやいや、どういうことなのこれええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」

俺は頭を抱えながら叫んだ。いや、本当、どういうことだよこれ。叫んだ瞬間、肩からさらさらと零れ落ちた長い髪の毛を視界に入れてしまい、さらに落ち込む。俺の顔色がどんどん悪くなるのと引き換えに、セカイの顔色はどんどん意地の悪いものとなっていった。

「へーえ、女好きのオワリくんに、まさかこんな願望があったなんてねえ。」

「だーかーら、フェミニストだって言ってんだろーが!!!それに、俺は女の子になりたい願望なんてねーよ!失敗したんだろ!?な、そうだよな?そうだと言ってくれええええええ!!!」

によによと笑うセカイに怒鳴り返し、俺は慌てて元凶である子どもへ問いかけた。子どもは俺の言葉に、にこりと笑いながら首を傾げた。

「どう思う?」

「ものっっっすごい怖い返しきた!!!」

絶望しかない俺を置いて、セカイと子どもは話を進め始めた。あれ、なんかこれ既視感。

「じゃ、次、俺の番な。」

「いやいや、待て待て!!!何でお前もう一回やろうとしてんの!!?お前の分は俺が……女……の子……になっちゃったのでチャラだろーが!!!」

「はあ?俺、別にお前が女になるの望んでねーし。」

「正論!!!でも、俺だって望んでねーよ!!!」

意味がわからない、という顔で俺を見るセカイにアッパーを食らわしてやりたい、と思った俺には、何の罪もないはずだ。しかし、セカイは俺の主張など雀の涙ほど気にかけておらず、とっとと子どもの方へ体を向けていた。

「じゃあ、いっくよー?お兄さん。」

「おう。」

「だから軽っ!!?そんな軽いノリでいいの!!?」

俺たちの周りが再び、光に包まれる。やっぱり眩しくて、俺は目を閉じてしまった。

しばらくして、目を開けてみると、セカイはぼんやりとした表情でこちらを見ていた。先程のように光にやられて伸びてはいなかったらしい。俺は体格が合わなくてずり落ちそうになる服を抑えながら、じりじりとセカイに近づいてみた。

「おーい、どした?セカイ。」

「……オワリ。」

お前、女になったんだな、と呟くセカイに、俺は首を傾げた。記憶が飛んでしまったのだろうか。何か言ってやろうかと思っていたけど、どこか雰囲気のおかしいセカイに圧倒されてしまい、ただ頷くことしかできなかった。

「じゃあ、お兄さんたち、『スター』を探すのを手伝ってね。」

ほぼ押し売りの形で俺たちにお願い事をした子どもは、本を抱え直しながらそう言った。

「待て、マイ!『スター』の特徴をまだ言ってないぞ!」

ぼんやりしていたセカイが突然、子どもに向かって叫んだ。子どもは驚いた顔をしたが、すぐに納得したかのような顔になって、セカイを見つめた。

「……ああ、そういうこと。で、『スター』の特徴だっけ?今回はどんな姿をしているかはわからないけど、絶対に、君たちの近くにはあるはずだよ。」

マイという言葉に、俺は一瞬反応ができなかった。セカイの視線の先を見て、ようやく子どもがマイという名前だと理解した。それと同時に、俺はふと思った。セカイは、一体いつ子どもの名前を聞き出したのだろう。

セカイはマイを睨みつけていた。およそ、小学生ぐらいの子どもに向ける視線ではない。しかし、睨みつけられているマイは怯えた様子もなく、それどころか笑っていた。笑い方が、何処か人間離れしていた。

「よろしくね、セカイお兄さん。」

マイはセカイから俺の方を向くと、とたとたと走り寄ってきた。何か用があるのだろうか。

「あっそうそう。オワリお兄さん……今はお姉さんかな?お姉さんのお願いの分は、後払いってことでどうかな?」

「は?」

「つまり、『スター』を見つけたら元に戻してあげる、って言ってるんだよ?」

「うええええ!!?マジで!!?」

いつもより高い声で叫び、マイの肩を掴もうと手を伸ばしたけれど、マイはひらりとそれをかわして、走り去ってしまう。

「じゃあね、頼んだよ。」

にこり、と大人っぽく笑ったマイはそのまま走り出した。俺は呆然とした顔で、セカイは何を考えているのかわからない顔で、マイの小さくなっていく後ろ姿をただただ見つめていた。




「何にやにやしてんだよ、気持ちわりーな。」

薄暗い部屋で作業をする男に、青年は嫌そうな顔で呟いた。男はふんふんと鼻歌を歌いながら、「ん?」と機嫌良さそうに反応した。男の手元には何十枚にものぼる紙束が散らばっている。男はそのうちの一枚を引っ張り出すと、ずいと青年の鼻の先にそれを突き出した。青年は眉をしかめつつも、その紙をひったくる。男は青年の態度を気にした様子もなく、にこにこと笑いながら話し始めた。

「いやー、とうとう出来上がったんだよ!名簿!これで特別クラスが始動するね。長かった長かった!」

思いついたの最近で、間に合うかどうか不安だったんだよねー、とのんびり告げる男に、青年は興味無さそうにぺらりと紙を裏に返した。

「ああ、前回言ってたやつ?『グリーフ』なんか捕まえてどうするんだよ。」

「彼らはいい実験体だ!俺は知りたい、『グリーフ』の成れの果てを。そのためには彼らの協力が必要だ。」

「協力ねえ……。」

ぺらぺらとした薄い藁半紙に印刷されている文字を撫で上げながら、青年は小さく呟いた。男は青年に向かってにやりと笑う。それを見咎めた青年は、むっとする。

「何笑ってんだよ、殴るぞクソヤロウ!」

「あだっ!痛い痛い、殴ってないよむしろ蹴ってる!つーか蹴らないで!暴力反対!」

青年の強烈な回し蹴りを喰らいながら、ぎゃあぎゃあと騒ぐ男に、「で?」とドスの効いた声で青年が問いかける。男はぶつぶつと文句を垂れつつも、律儀に青年の問いかけに答えた。

「それ、名簿の中に、君のお姉ちゃんいるよ。」

ぴたり、と青年の動きが止まる。まじまじとした瞳で、青年は男を視界に入れた。

「……え、マジで?どこどこ?」

「ほれ、ここ。」

男が指をさした名前をじっと見て、にやりと笑う。人からどこか離れた、狂気的な笑い方に、男は内心引いた。

「……ふーん、こんなところにいたのかよ。」

食い入るように見つめる青年を通り過ぎ、男はカップを取った。紅茶を淹れるため、インスタントを探す。なかなか見つからなかった。

「でもさあ、珍しくね?お前の姉ちゃん、こんな簡単に正体バレしないじゃん、いつも。」

「ああ?馬鹿かお前は。ここ見てみろよ。」

とんとん、と青年が指をさす名前を見て、男はああ、と呟いた。カップを持ったまま、頷く。

「キリちゃんとオワリちゃんがいるからかあ。」

「お前が入れたんだろーが。この能無しが。……この能無し!」

「なんで2回言ったの!!?」

男が半泣きになりながら叫ぶのを、心底気持ち悪そうな顔で見つめながら舌打ちをした。

「姉ちゃん見つかったのはラッキーだったけど、またセカイの相手しなきゃなんねぇのかよ面倒くせェ。」

「でも、キリちゃんがいれば『グリーフ』の実験がはかどる。」

恍惚とした表情でそう告げる男に、青年は鼻で笑った。馬鹿にしたような笑い方に、男はむっと眉を寄せる。

「なんだよぅ、お前だっていい年して自分の姉ちゃん追いかけ回してる変態じゃんか!」

「どつき回すぞこのクソヤロウ!」

「ごめんなさい!」

青年のドスの効いた声を耳にした男は、一瞬で土下座をする。しかし、青年はそれに目もくれず、くるりと踵を返すとそのまますたすたと歩き出す。男はあれ?という顔をするが、自分が今まで何を探していたのかを思い出したらしく、再びインスタントの紅茶を探し始めた。

「行くのー?」

「ああ。姉ちゃんの場所もわかったし、俺も準備しねぇとな。」

振り返り、扉に手をかけながらにたりと笑う青年に、男はにこやかに手を振った。

「じゃ、またあとでね、カミサマ?」

ああ、それとも、M2って呼んだ方がいい?

青年ーM2ーはべっと舌を出す。

「名前なんて記号だろ。お前はとっとと仕事しろよ、今回は『理事長』なんだから。」

理事長、と呼ばれた男はわかってるよ、とぼやきながら、M2がほっぽり出した名簿を拾い上げる。M2はすでに興味を失ったのか、そのまま扉の奥へと消えた。

「シオウスバル。イトウカズサ。アンドウアカネ。クマガヤコトバ。ノトジママリヤ。シオウルナ。リンザイアマネ。ヤマヤクロトラ。クルヤマメイ。ニオウナナミ。ノノハラミヤビ。コンドウホタル。ニノミヤカズラ。そして、瀬貝霧哉に、糸冬雪祈。」

歌うように名簿に記された名前を読みあげながら、理事長はくるりと回った。机に思いっきり腰をぶつけたが、彼は気にすることもなく笑う。彼の頭の中は、これから行うであろう実験のことで、いっぱいだった。

「あはは、楽しみだな。今回の彼らは、どんな成果を見せてくれるんだろう。」

子どものように無邪気に笑いながら、夢想する彼は、すでに自分が何を探していたのか、頭にはないのであった。
















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