光の洞窟
目が覚めたのに、そこは暗闇で。
僕は向こうのほうに見える、たったひとつの光を頼りに、歩いていた。
足元なんて見えなくて。手元なんて見えなくて。
僕の姿すらも、僕は見えなかった。
音が何処からかカツン、カツン、と鳴って、僕は見えないほうへと目を向けた。
なにを見て、なにを聴いているんだろう。
僕は一人で、歩いている。
ただその真実だけが、僕を認めてくれた。
苦し紛れに叫んだ声は反響して、その音を掻き消した。
どうして叫んだのだろう?
僕の声は誰にもきっと聞こえていなくて、僕の耳だけが、その音を拾う。
たくさん集めて、いろんな音を、いろんな光を。
目の前のそれと、耳元のそれを、僕は手に入れようとした。
カツン、カツン、と鳴っている。
足元なんて見えなくて。手元なんて見えなくて。
足元から聞こえる音を頼りに、手元に見える光を頼りに。
僕は一人で、暗闇を歩いていた。
いつか、見えるでしょう?聴こえてるでしょう。
Twitter:@dakusanno