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キミはボクを好きになる?  作者: 双鶴


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第9話 静寂を破る歓声

 文化祭の朝。

 校舎の前には、すでに人だかりができていた。


「科学部どこ? あっち?」


「行列できてるって聞いたんだけど」


「中学生が作ったレベルじゃないらしいよ」


 ざわめきが、空気を震わせていた。


 紗香は胸の奥がざわつくのを感じながら、科学部室へ向かった。


(……達也、どうしてこんなにすごいんだろう)



 科学部室の前には、すでに長い列ができていた。


「うわ……ほんとに行列だ」


「達也、やばいな」


「紗香、あんたの幼馴染、天才すぎない?」


 クラスメイトが笑いながら言う。


 紗香は照れながら答えた。


「……すごいよね。

 私も、ちょっと信じられない」


 でも、胸の奥は誇らしさでいっぱいだった。



 部室の中では、達也が淡々と準備をしていた。


「達也、すごい行列だよ」


「知ってる」


「緊張とか……しないの?」


「しない。

 紗香が見てくれたから」


「っ……!」


 紗香は一瞬、息を止めた。


(……ほんとに、ずるい)



「じゃあ、最初の人入れるぞー!」


 クラスメイトが声をかける。


 達也は静かに頷いた。


 扉が閉まり、

 部室が暗くなる。


 次の瞬間──

 霧が立ち上がり、光が脈打ち、

 音が空間を走り、風が肌をかすめた。


「うわっ……!」


「なにこれ……!」


「やば……本物みたい……!」


 中から驚きの声が次々に響く。


 扉が開くと、体験者たちは息を切らして出てきた。


「すごい……!」


「怖いのに……きれいだった……!」


「映画の中にいるみたいだった!」


「これ中学生が作ったの!? 嘘でしょ!」


 その声が、列に並ぶ人たちの期待をさらに煽る。



 次々に人が入り、

 次々に驚きの声が上がる。


「達也、すごいよ……!」


 クラスメイトが感嘆の声を漏らす。


「お前、天才だな」


「これ、学校の歴史に残るぞ」


 達也は淡々と返した。


「……紗香が喜んでくれたら、それでいい」


「お前……ほんとに紗香のこと……」


「言わなくていい」


 達也は静かに遮った。


 その横顔は、どこか照れているようにも見えた。



 紗香は、達也の横顔を見つめていた。


(……こんなにすごいのに、

 達也は私の反応だけ気にしてる)


 胸が、苦しいほど熱くなる。


「……達也」


「なに」


「ほんとに……すごいよ。

 こんなの、誰にも作れないよ」


 達也は紗香をまっすぐ見た。


「紗香がそう言うなら、成功」


「っ……!」


 紗香は目をそらした。


(……ほんとに、心が動いてる)



 夕方。

 行列は途切れることなく続き、

 科学部お化け屋敷は文化祭の“中心”になっていた。


「達也、今日……大成功だね」


「まだ終わってない」


「え?」


「紗香が、もう一回入ってくれたら……

 それで本当に終わる」


「っ……!」


 紗香は胸に手を当てた。


(……そんなの……断れるわけない)


「……行くよ。

 達也の作った世界、もう一回見たい」


 達也は静かに微笑んだ。


「紗香の心が動く瞬間、

 もう一度見せて」


 その言葉は、

 どんな光よりも、どんな音よりも胸に響いた。


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