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キミはボクを好きになる?  作者: 双鶴


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第8話 静かに広がる噂

 翌日の昼休み。

 廊下を歩いていると、聞き慣れない単語が耳に入った。


「科学部のやつ、やばいらしいよ」


「お化け屋敷ってレベルじゃないって」


「なんか、光とか霧とか音とか……本格的らしい」


「てか、達也が作ってるんだろ?

 そりゃすごいに決まってるじゃん」


 紗香は思わず立ち止まった。


(……もう噂になってるんだ)


 胸が少しだけ熱くなる。



 教室に戻ると、クラスメイトが声をかけてきた。


「紗香、聞いた?

 科学部のやつ、めっちゃ話題になってるぞ」


「うん……さっき廊下で」


「なんかさ、他のクラスのやつが“絶対行く”って言ってた」


「てか、紗香がテストしたんだろ?

 どうだった?」


 紗香は少し照れながら答えた。


「……すごかったよ。

 怖いのに、きれいで……

 なんか、胸が苦しくなる感じで」


「おー! それ絶対すごいやつじゃん!」


「達也、天才だな」


「紗香のために作ったんだろ?」


「やめてよそういうの……!」


 紗香は顔を赤くした。


(……でも、否定できない)



 放課後。

 科学部室の前には、なぜか人だかりができていた。


「ここが科学部?」


「中、見えないかな……」


「達也って、あの無口な人でしょ?

 あの人が作ったなら絶対すごいよ」


「文化祭、ここが一番の目玉だな」


 達也は部室の中で淡々と作業を続けていたが、

 外のざわめきに気づいて顔を上げた。


「……騒がしい」


「達也、噂になってるよ」


「知ってる」


「どう思うの?」


「どうでもいい」


「どうでもいいって……」


 紗香は呆れたように笑った。


「……でも、紗香が見たなら、それで十分」


「っ……!」


 紗香は一瞬、息を止めた。


(……ほんとに、ずるい)



「達也、文化祭……楽しみだね」


「紗香が来るなら」


「来るよ。

 だって……」


 紗香は言いかけて、言葉を飲み込んだ。


(“達也が作ったから”なんて……

 言えるわけない)


 達也は紗香の表情を見て、静かに言った。


「紗香」


「なに」


「本番、楽しみにしてて」


「……うん」


 胸が、また跳ねた。



 その日の帰り道。

 校門の前で、知らない一年生が話しているのが聞こえた。


「科学部のやつ、絶対行こうな」


「怖いっていうより、すごいらしいよ」


「なんか、映画みたいなんだって」


 紗香は思わず笑ってしまった。


(……達也、ほんとにすごいよ)


 静かに、確かに、

 文化祭の“中心”が動き始めていた。


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