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灰の心臓  作者: META
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如月柚羽ー2

「ちょっと、どこに連れて行くの。離してよ!」


俺は如月柚羽の手首を掴み、そのまま移動しようとしていた。


「離してよ!!!

殺さないなら!!!!

私は――」


言葉が、そこで途切れた。

如月柚羽の身体から力が抜ける。


俺は如月柚羽を気絶させた後、車に乗せ、住処へ直行した。


携帯を取り出す。


「……朔か?」


「如月柚羽は始末した。死体は処理しておく。」


「処理とは珍しいな……何かあったか?」


俺は沈黙を保つ。


「……まあ、いい。

お前は下手なことはしないからな。よくやった。

また連絡する。」


ボスはそう言って、一方的に通話を切った。


俺はバックミラー越しに、後部座席で気絶している彼女を見る。


……なぜ殺さなかったのか。

俺には分からない。


ほんの一瞬、何かを感じた。

それが何だったのか、まだ言語化できない。


俺は、まだ人間として生きる可能性があるのか。

そんな期待はしていない。


それでも、

如月柚羽に“何か”を感じたのは確かだった。


観察して、何も感じなければ、その時に殺せばいい。


そう考え、俺は住処へ向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――――


「……んっ……ここは……」


彼女は勢いよく身を起こした。

足元の感触に気づき、繋がれた足枷を見て、状況を理解したように俺を睨む。


「……そういう趣味なの……?

最低……」


俺は無言のまま、彼女を見つめる。


「……なにか答えなさいよ」



………… 。



「ねえ、答えなさいよ」


「ねえ、あなた……しゃべれるんでしょ?」




………… 沈黙 。




「……ねえ」



…………… 。



……… ガンッ!!!!!



………柚羽は、完全に壊れたようだった。


手元にあったペットボトルを掴み、

俺の顔めがけて投げつける。


俺は軽く身を逸らし、それを避けた。


「……っ!!!!

なんで黙ってるの!!!

しゃべってよ!!!!

あなたに話してるんだから!!!」


息が荒い。


「目的は!?

殺すんじゃなかったの!?!?!?」


俺は、沈黙を貫いていた唇を開く。


「……殺さない。」


彼女は一瞬、言葉を失い、

次に俺を見据えた。


「……しゃべれるじゃない。」


その声には、怒りと安堵と混乱が混じっていた。


俺はそれ以上、何も言わない。


部屋に、沈黙が落ちる。


彼女の呼吸だけが、はっきりと残った。


「……じゃあ、答えて。

なんで殺さないの。」


答えは、俺の中にもない。

俺は黙ったまま、立っている。


「逃げなきゃいけないの、私は。」


独り言のように言い、足枷を見る。


「追われてる。

ここにいたら……

あなたにとっても、面倒でしょ?」


乾いた笑みを浮かべ、俺を見つめた。


「……まあ、逃げられないけど。」


第三者から見れば、

拘束された人間が、必死に状況を理解しようとしているように映っただろう。


「……黙られるのが一番きつい。

殺さないなら……

あなたは、何をしたいの?」


怯えと、怒りと、

それでも折れない意志が混じった目。


俺は、何を答えればいいのか分からず、

沈黙を貫いた。


「……ばかみたい……」


俺のポケットで、携帯が鳴った。

ボスからだ。


俺は踵を返し、扉へ向かう。


「……待って。」


背中に、声が当たる。


「……鎖で繋がれている範囲は自由にしていい。

殺されたくなければ、おとなしくしておけ。」


そう言って、俺は扉を閉め、鍵をかけた。


観察一日目。


俺と如月柚羽の、奇妙な観察生活が始まった。

読んでくださり、ありがとうございます。

次回更新は未定ですが、絶対に書きます。


よろしくお願いします。


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