皇宮の苛立ち
皇宮。皇帝執務室。
「――錯乱、だと?」
アラン(皇太子)は、リステン侯爵からの使者の報告をバートン伯爵から聞き、不機嫌に眉を寄せた。
「は、はい。あの場でイザベラを打ち据えたのも、全て錯乱によるものかと……」
「フン。都合の良いことだ」
アランは、側に控えていたイザベラに視線を移す。
「イザベラ。お前の『親友』は、都合が悪くなると病気になるらしいな」
「……エリアーナ様」
イザベラは、アランの腕にそっと手を添え、潤んだ瞳で見上げた。
「きっと、私が殿下とお親しくさせて頂いていることに、嫉妬なさったのですわ……エリアーナ様は、欲しいものは何でも手に入れないと気が済まない方でしたから……ごめんなさい、私のせいで……」
「君のせいではないさ」
アランは、イザベラの儚げな様子に気を良くし、彼女の手を優しく握る。
「どうせ、俺の気を引くための子供じみた駆け引きだろう。リステン家の財力は必要だが……まあいい。病が治るまで待ってやるさ」
アランは、エリアーナをまだ「手のひらの上で転がる愚かな女」としか見ていなかった。




