愛の誓いと最終決戦の夜明け
夜明けの執務室
私は執務室の窓から差し込む、柔らかい朝の光を 見つめていた。
昨夜の激しい精神攻撃から回復した私は、驚くほど穏やかな感情に包まれていた。
隣のソファでルシアンが珍しく眠っていた。
私は彼の剣を取り、静かにその刃を磨いた。
「この剣がアランを打ち破ったのね」
愛と憎悪の戦いの証だ。
扉がノックされ、侍女のアンナが静かに入ってきた。
「エリアーナ様。夜が明けました。コーヒーと焼きたてのパンです」
アンナの表情には安堵が滲んでいた。
私の幸福が彼女の幸福だと知っている。
「ありがとうアンナ。私の大切な友だち」
アンナはコーヒーを差し出しながら、私の左手の指輪を見つめた。
「ルシアン様の指輪……。本当にお似合いでございます」
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アンナの懸念と忠誠
アンナは私の薬指の指輪を見て、感動の息を漏らした。
私はコーヒーカップを置き、アンナの柔らかな肩に手を置いた。
「アンナ。貴女はもう自由よ。摂政公妃の侍女は危険が多すぎる。私の故郷、北の領地へ戻って良いのよ」
アンナはまっすぐに私の目を見つめた。
その瞳は、揺るがなかった。
「何を仰います、エリアーナ様。私は貴女様の侍女です。私は貴女様の覚悟を知っています」
「貴女様が愛と責任を選んだのなら、私は貴女様の、その光を守ります。どこへも行きません」
アンナは、強く忠誠を誓った。
私は彼女の愛に、心から感謝し、抱きしめた。
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大聖堂への道
「アンナ、ありがとう。あなたの忠誠は私の命綱よ」
私は、ソファに眠るルシアンを起こした。彼は瞬時に覚醒し私の目を見た。
「おはようエリアーナ。覚悟は決まったか」
「ええ、ルシアン。憎悪の根源を断ち切ったことを、大神官様に報告し、感謝を伝えに行きたいわ」
ルシアンは頷き、壁に掛けてあった剣を抜き取った。
「承知した。俺が警護する。アンナも来い。危険な時は私たちの後ろに隠れていろ」
私たちは、摂政公邸の門を静かに出た。
ルシアンが最小限の警護兵を連れ、帝都大聖堂へ向かう。
朝日が帝都の瓦礫の街並みを照らし、黄金色に輝かせていた。
道すがら、復興作業に従事する帝都の民衆が、私たちに気がつき歓声を上げた。
「摂政公妃様 万歳! 帝国を救ってくださり、ありがとうございます!」
私は民衆の純粋な笑顔を見て、復讐が「愛」に変わった意味を実感した。
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破られた青空
私たちは大聖堂前の広場に到着した。
大聖堂は炎上したが、崩壊は免れていた。
大神官様は中で祈りを捧げているはずだ。
私は、ルシアンとアンナに微笑みかけた。
「平和よ……。ルシアン、憎悪のない朝だわ」
その瞬間、晴れ渡っていた青空が突如として黒い瘴気に覆われた。
太陽の光が瞬時に遮断され、帝都は深い闇に閉ざされた。
「ルシアン!」
ルシアンは瞬時に剣を抜き、空を睨みつけた。
「来たか 悪魔王」
「エリア―ナ様……!」
「大丈夫よ!アンナ」
私は、不安になるアンナの手を握った。
瘴気は急速に渦を巻き、巨大な黒い翼の影が、大聖堂の上空に姿を現した。
最後の戦いが今、始まろうとしていた。




