瘴気の残滓とイザベラ
遺体安置所の調査
大聖堂の地下に設けられた。
遺体安置所には、炎上と崩壊の犠牲者が運び込まれていた。
私はルシアンと共に、その場所訪れた。
表面上は戦争の惨劇だったが、私は悪魔王の関与を疑っていた。
「大神官様。イザベラが倒れた場所を見せて頂けますか」
「あそこは瘴気が強く残っています。危険です」
大神官が私たちを案じた。
「大丈夫です。大神官様。悪魔王の痕跡を確かめたいのです」
私はルシアンと共に、その場へ向かった。
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イザベラの残した痕跡
イザベラが倒れた場所は、聖なる力と、悪魔の瘴気がぶつかり合った痕跡で満たされていた。
ルシアンが鋭い視線で空間を探る。
「これはただの瘴気ではない。悪魔の契約の痕跡だ」
ルシアンが 結論づけた。
「イザベラは 自分の 意志で 悪魔と 契約し 悪魔王の 道具に なった」
私たちは瓦礫の隅で、イザベラが倒れる直前に持っていたであろう、一冊の手記を発見した。
手記の大半は聖女としての慈善活動の記録だったが、最後の数ページは筆跡が乱れ、闇の瘴気が滲んでいた。
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嫉妬と狂気の記録
私が手記を開くと、そこにはイザベラの狂気に満ちた独白が記されていた。
『エリアーナ様は全てを持っている。私の愛するアラン様まで奪った』
『私は聖女になる。悪魔様が私に力をくれた。エリアーナ様を焼き尽くす力を』
『アラン様は怯えている。ざまあみろ!私は権力も、愛も、全て手に入れる!』
手記は憎悪と嫉妬で満たされ、最後の行は黒い瘴気の塊で塗りつぶされていた。
「彼女は憎悪に支配され、悪魔王の道具として最期を遂げたのね」
ルシアンが私の隣で静かに言った。
「愛も権力も憎悪の鎖でしか手に入らなかったのか……。 哀れな」
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真の脅威の認識
私たちは瓦礫の上で立ち尽くした。
イザベラの手記は、私たちの復讐が正しかったことを証明していた。
しかしそれ以上に、私に恐ろしい真実を突きつけていた。
悪魔王は私の憎悪を器とし、イザベラの憎悪を道具とした。
「ルシアン。悪魔王の狙いは 憎悪そのものよ」
「私たちが憎悪を捨てて、幸福になればなるほど、彼は怒り、契約を破棄されたと見なす」
ルシアンが私の肩を抱いた。
「悪魔王は俺たちの愛を恐れている。エリアーナ」
私たちは悪魔王が、憎悪の概念であり、私たちの幸福を破壊することが、彼の最後の目的で あることを確信した。




