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父の行動
リステン侯爵の行動は早かった。
彼はまず、バートン伯爵が報告に戻った皇宮に対し、「娘エリアーナは、皇太子殿下との謁見の緊張からか、突如体調を崩し、錯乱状態にある。
医者に見せたところ、しばらくの静養が必要との診断だった」と、丁重な謝罪と共に使者を送った。
アランの申し出を「保留」にしつつ、娘の「無礼」を体調不良(錯乱)のせいにする、苦肉の策だった。
「これで、ひとまず皇太子殿下は『病の娘を無理やり差し出せ』とは言えまい。だが、時間稼ぎにしかならん」
リステン侯爵は、そう呟きながら、執務室で最も信頼する部下に命じた。
「ヴァレリウス公爵家に対し、極秘裏に『非公式の会談』を打診する密書を送れ。内容は『帝国の経済政策に関する、緊急の相談』だ」




