悪魔王との契約
兵士の「抵抗」
大聖堂前。
アランの「突入せよ」という命令は 実行されずにいた。
「殿下! なりませぬ!」
正規軍の 古参の 指揮官が 馬を進め、 アランを 諌めた。
「我らは 帝国を守る 兵士です! 神の家を 襲撃する 盗賊では ありませぬ!」
「なんだと?」
アランが 低い声で 将軍を 睨む。
「貴様 俺の 命令に 逆らうか?」
「命令とあらば 北のヴァレリウス公爵とも 戦いましょう !ですが 神に 剣を 向けることは できませぬ!」
「そうだ!」「俺たちもだ!」
アランが 北から 連れてきた 五万の兵士たちは、 イザベラの「奇跡」には 熱狂したが 、根は 敬虔な 信者だった
彼らは アランの「狂気」よりも、 大神官の「正義」と「神の罰」を 恐れたのだ。
「き 貴様ら……!」
アランは 自分が 全軍の 指揮権を 失いつつあることを 悟った。
民衆も 兵士も 誰も 自分に 従わない。
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アランの「絶望」と「契約」
(なんという愚かな兵士共だ……。正規軍が王法に従わなく、なんとする!?こやつらも焼き払ってやりたい!!)
『だから 俺が 授けた力を使え』
(ど、どうしたらいい?)
『憎め。あらゆるものを憎悪しろ。生命を、愛を、信頼を、人間を憎悪するのだ』
アランの憎悪に悪魔王が注いだ火が点火した。
憎悪がマグマのように湧き上がり続ける。
「ぐ……ああああああ!」
アランが 馬上で 突然 絶叫した。
「殿下?」
兵士たちが 驚いて 彼を見る。
アランの 金色の 髪が まるで 生命力を 失ったように 白銀に 変わっていた、ら
彼の 青い 瞳が 悪魔王と 同じ 禍々しい 紅に 染まっていく。
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皇太子の「撤退」
「ひ……」
「殿下の お姿が……」
兵士たちが アランの「変貌」に 恐怖して後ずさる。
アランは その 紅の 目で、 大聖堂の バルコニーに立つ エリアーナを じっと 見つめた。
(エリアーナ)
彼は 何も 言わなかった。
ただ 、その唇の端を吊り上げ 不気味に笑った。
(待っていろ)
(本当の 地獄は これからだ)
アランは そう 呟くと、 馬首を返し 、兵士たちも民衆も、イザベラの亡骸さえも放置して 、たった 一人で皇宮へと 走り去っていった。
「あ……」
「殿下?」
「行かれたぞ?」
残された 五万の軍隊と帝都の民衆は、自分たちの「主君」に見捨てられたという事実に、呆然と 立ち尽くすしかなかった。
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エリアーナの「違和感」
(行ったわ)
私は、アランが 一人で 皇宮に逃げ帰っていく 姿を大聖堂の 上から見届けていた。
(勝った?)
(アランは 全てを 捨てて 逃げた)
(私たちの 勝利よ)
そう 思った。
だが……。
(違う)
私は 言いようのない「不安」に襲われた
アランが最後に見せたあの「笑顔」
あれは 1周目 に、私を処刑台に送った時の 「冷酷な笑み」とは 違った。
あれは イザベラが 私を 嘲笑った あの「歪んだ笑み」とも 違った。
(あれは)
(私が 回帰した あの夜に見た)
(あの『悪魔王』の 笑みと 同じ)
「ルシアン」
私は、 聖堂の 中で まだ 意識が 戻らない ルシアンの 元へと 走り出した。
「大神官様!」
「どうした エリアーナ」
「アランが おかしい」
「……」
「イザベラを 操っていた『何か』が 今度は、アランに 乗り移ったのかもしれない!」
私の復讐は 終わっていなかった。
イザベラが 倒れ 、今度は アランが 悪魔の「駒」となって 、私たちの前に 立ちはだかろうとしていた。




