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処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!  作者: 秦江湖


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悪魔王の苛立ち

悪魔王の「誤算」



魔界。


悪魔王は、玉座で人間界の「盤面」を不機嫌そうに眺めていた。


(……つまらん)


計画は順調だったはずだ。


エリアーナを回帰させ、ルシアン(憎悪の塊)と接触させた。


二人の憎悪が、アランとイザベラを追い詰め、帝国を二分する「内戦」の火種は撒かれた。


イザベラにも「力」を与え、憎悪の「代理戦争」を楽しもうとしていた。


(……だが)


悪魔王の最大の「誤算」。


それは、エリアーナとルシアンが「憎悪」で結びつくことをやめてしまったことだった。


(……あの大聖堂での告白)


(……『愛』だと? 『信頼』だと?)


悪魔王は吐き気をもよおした。


こういうときは、本当に吐いてしまう。


それくらい、「愛」だの「信頼」だのが嫌いだ。


「……くだらん」


憎悪こそが人間の最も純粋なエネルギーだと信じていた。


だが、あの二人は憎悪を「乗り越え」、別の「力」で結びついてしまった。


(……エリアーナの憎悪が薄れている)


(このままでは俺の『糧』が消える)


悪魔王は、エリアーナの魂との「繋がり」が、弱まっているのを感じていた。



※※※※※※※※※※※※※※※



イザベラへの「投資」



悪魔王は、エリアーナという「駒」を半ば諦めた。


(……いいだろう。あの女が聖女ぶるというのなら)


彼は、もう一つの「駒」に、視線を移した。


(……イザベラ)


イザベラは今、大聖堂の前で民衆の「信仰」を集めている。


(……あの女はまだ使える)


(あの女の、エリアーナへの「憎悪」と、アランへの「執着」は本物だ)


悪魔王は、エリアーナに代わる「憎悪の供給源」として、イザベラを利用することに決めた。


「……力が欲しいか。イザベラ」


悪魔王は、大聖堂の前で「奇跡」を行使し、疲弊している、イザベラの精神に語りかけた。


(……あくま、さま……)


イザベラは、もはや彼を「天使」とは呼んでいなかった。


(……力が足りません。……大神官が、民衆が、まだあの女を信じている……)


「……くれてやる」


悪魔王は、自らの「魔力」を大量に、イザベラへ注ぎ込んだ。


「……!」


『その代わり、イザベラ。……お前はもう後戻りはできんぞ』


『お前のその「美貌」と、「正気」と、引き換えだ』


「……構わない」


イザベラは即答した。


「……エリアーナ様を殺せるなら。……アラン様がわたくしだけのものになるのなら!」



※※※※※※※※※※※※※※※



イザベラの「変貌」



アランの帝都帰還まであと二日。


イザベラはその日も、大聖堂の門前で「治癒」の儀式を行っていた。


「……聖女様! どうか、わたくしを!」


「……この子を!」


民衆が彼女に殺到する。


「……ええ。ええ。……わたくしが救ってさしあげますわ」


イザベラは微笑んだ。


彼女が病人の額に手を当てる。


病人の病は確かに治った。


だが。


「……あれ?」


「……どうしたんだ、お前」


治癒された、元・病人の肌がまるで老人のように、カサカサに乾ききっている。


「……力が、抜ける……」


治癒されたはずの人間が、その場に崩れ落ちた。


「……!」


イザベラは気づかない。


彼女は悪魔王の力で、病人の「病」を治しているのではない。


その人間の「生命力」そのものを吸い取り、それを「魔力」に変えていたのだ。


「……次の方。……さあ、どうぞ」


イザベラのその瞳は、もはや聖女のそれではなく。


獲物を求める、飢えた「魔女」の瞳だった。



※※※※※※※※※※※※※※※



狂気の「聖女」



大聖堂の鐘楼。


エリアーナとルシアンは、その「光景」を遠眼鏡で見ていた。


「……あれは」


ルシアンが息を呑んだ。


「……治癒じゃないわ。……あれは『略奪』よ」


エリアーナは、イザベラが悪魔王の本当の「手先」に堕ちたことを悟った。


「……ルシアン。大神官様」


エリアーナは決意を固めた。


「……もう時間がないわ」


「……ああ。あれを放置すれば、帝都の民が全てイザベラの餌食になる」


「……大神官様。計画を実行します」


「……うむ。……アラン殿下が帰還する明日」


「……明日、私たちが、この聖域から打って出ます」


「……」


「イザベラを、大聖堂の『内側』におびき寄せ、あの『破魔の鏡』で、彼女の『正体』を民衆の前で暴くのです」


エリアーナは、イザベラの狂気的な「変貌」を利用することに決めた。


(……イザベラ。私が、欲しいのでしょう?)


(……なら、明日、この聖域の中で決着をつけましょう)

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