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処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!  作者: 秦江湖


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最初の一手

皇太子アランの使者


リステン侯爵家の応接室。


重々しい空気の中、私は父・リステン侯爵の隣に座っている。


目の前には、皇太子の側近であるバートン伯爵が、尊大に足を組んで座っていた。


「――というわけで、エリアーナ嬢。皇太子アラン殿下は、貴女を妃候補として正式にお見合いの場を持ちたいと仰せだ。……リステン侯爵家にとって、これ以上の栄誉はあるまい」


バートン伯爵は、私と父を交互に見ながら、隠す気もない侮蔑ぶべつの視線を向けている。


リステン家は中立派の筆頭ではあるが、皇族に比べれば格下。


断れるはずがないと高をくくっているのだ。


1周目の私は、この言葉に舞い上がっていた。


「アラン様が私を選んでくださった」と。


そして、このバートン伯爵が、アランの寵愛を傘に着てリステン家(実家)の富をどれだけ吸い上げたか、今の私は知っている。


「……エリアーナ? 聞いているのか?」


父が、返事をしない私をいぶかしげに横から見ている。


私はゆっくりと微笑んだ。


1周目の、ただ純粋だった令嬢の笑みではない。


リステン侯爵家の令嬢としての、完璧な笑みだ。


「伯爵様。あいにくですが、そのお話、少し時期が悪いようですわ」


「……は?」


伯爵の尊大な態度が、一瞬固まった。



※※※※※※※※※※※※※※※※



親友イザベラの牽制


「何を……」


伯爵が言葉を続けようとした時、応接室の扉が控えめにノックされた。


「失礼いたします、お嬢様、旦那様。お茶をお持ちいたしました」


入ってきたのは、イザベラ。私の「親友」だった女。


1周目、彼女は皇太子からの内示に「自分のことのように嬉しい」と涙ぐんで見せた。


今も、その可憐な瞳を不安げに揺らし、私を見つめている。


「まあ、バートン伯爵様。皇太子殿下のお話でございますか? ……エリアーナ様、本当におめでとうございます!」


イザベラは、伯爵の前であることも忘れ、私の手を取ろうと駆け寄ってくる。


完璧な演技だ。


私を心から祝福する、無邪気な親友の。


1周目の私なら、この手を取って「ありがとう、イザベラ」と言っただろう。


だが。


パシン!


乾いた音が部屋に響いた。


私が、イザベラの伸ばしてきた手を、強く払い除けた音だった。



※※※※※※※※※※※※※※※



豹変と宣戦布告


「……え?」


イザベラは、信じられないという顔で私を見ている。


払い除けられた自分の手と、私の顔を交互に見て、その目にみるみる涙が溜まっていく。


「エリアーナ、様……? なぜ……」


「身の程をわきまえなさい、イザベラ」


私は、処刑台の底から響くような、冷たい声で言い放った。


「……っ!」


イザベラは顔を真っ青にして震えている。


「あなたはただの侍女。私が侯爵家の客人と話している最中に、許可なく口を挟むなど、万死に値するわ」


「エリアーナ!何を言うか!」


父が慌てて私を諌めるが、私は止めない。


アランもイザベラも、私のこの「優しさ」と「鈍感さ」につけ込んで、私を陥れたのだ。


ならば、その前提を、今ここで全て壊す。


私は、震えるイザベラから、呆然とするバートン伯爵へと視線を移す。


「バートン伯爵」


「な、なんだ」


「皇太子殿下へは、こうお伝えください」


「『お言葉は光栄なれど、わたくしには、他に考えている方がおります』と」



※※※※※※※※※※※※※※※



父(侯爵)との対峙


「な……っ!?」


今度こそ、伯爵も父も絶句した。


皇太子(次期皇帝)の申し出を、一介の侯爵令嬢が断るなど、前代未聞だった。


「エリアーナ・リステン! 貴様、自分が何を言っているのかわかっているのか!」


伯爵が顔を真っ赤にして立ち上がる。


「わかっておりますわ」


私は伯爵の言葉を遮り、悪魔王がくれた自信を胸に、冷たく言い切った。


「リステン家は、帝国随一の財力を持つ中立派の筆頭。皇太子殿下は、その『財力』と『政治力』が欲しいのでしょう?」


「……なっ」


「ですが、あいにく。わたくしは、自分の価値を安売りするつもりはございませんの」


私は立ち上がり、イザベラが恐怖で落としたティーカップの破片を、冷ややかに見下ろした。


「――お引き取りくださいませ。床が、汚れましたので」


バートン伯爵は「覚えていろ」と捨て台詞を吐き、イザベラは私に怯えながら、二人とも応接室から逃げるように退室していった。


静まり返った部屋で、父が私に向き直る。


「……エリアーナ」


父は、見たこともないような恐ろしい顔で私を睨んでいた。


「全て、説明してもらうぞ」




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