表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!  作者: 秦江湖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/73

悪魔王の囁き

北の地での平穏



アランの刺客を撃退し、アンナを側に置いた。


北の黒鷲城での生活は、驚くほど「平穏」だった。


帝都のリステン家との連絡も、アンナが完璧にこなしてくれる。


アランが仕掛けてきた「経済制裁」も、わたくしの事前の資産移動によって、彼が勝手に自滅しただけで、こちらに被害は一切ない。



「……順調、すぎるわね」



私は、執務室で、アランの経済制裁が失敗し、帝都の商人ギルドが混乱しているという報告書を読みながら、呟いた。


復讐は、順調に進んでいる。


アランの信用は失墜し、ルシアンへの支持は(特に北で)高まっている。


全てが、私の計画通り。


それなのに。


(……なぜ、こんなに心がザワつくの?)



私は、最近、ルシアンと過ごす時間が増えていた。


彼は、執務の合間に、私に北の歴史や、領地の統治について教えてくれた。


「お前は、俺の『共犯者』だ。俺が倒れた時、お前が北を指揮できなければ、話にならん」


彼はそう言って、私を「飾り物の婚約者」ではなく、「対等なパートナー」として扱ってくれた。


アランが、私を「美しい人形」としてしか見ていなかったのとは、大違いだ。


(……私、この人に、甘えている?)


刺客に襲われた夜(第15話)、彼に抱きかかえられた時の、あの温かさを思い出してしまう。


憎悪だけを原動力に生きてきたはずの私の心に、ルシアンという存在が、別の感情を芽生えさせようとしていた。



*************



悪魔王の再来



その夜、私は夢を見た。


処刑台の、あの「始まりの景色」の夢。


(……やめて)


(もう、見たくない)


アランの冷酷な目。イ


ザベラの嘲笑。


『おまえたちは許さない』


私は、夢の中で、何度も、何度も、そう叫んでいた。


ふと、目が覚めた。


そこは、処刑台ではなく、黒鷲城の私の寝室だった。


だが、空気が違う。


重々しく、吐息が白くなるほど寒い。


窓の外からは、風の音と遠雷が聞こえてくる。


「まさか……」


私がつぶやいたとき、部屋の隅の闇が、あの時と同じように、ゆらりと揺らめいていた。


「……久しぶりだな、エリアーナ」


悪魔王が、そこに立っていた。


その紅い瞳は、縦に裂けた瞳孔で、私を品定めするように見ている。


「……何の用ですの。あなたの『支援』などなくとも、わたくしは、順調に復讐を進めておりますが」


私は、恐怖を押し殺し、ベッドの上から彼を睨みつけた。



*************



悪魔王の「忠告」



「順調、か」 悪魔王は、クツクツと喉の奥で笑った。


「確かに、アランは追い詰められている。イザベラは苛立っている。上出来だ」


彼は、音もなく私のベッドサイドに歩み寄り、私の髪を一房、冷たい指先で掬い上げた。


「だがな、エリアーナ」 彼の声が、私の耳元で、甘く響く。


「……貴様の『憎悪』が、なまっている」


「……!」


「北の生活は、快適か? あの『冷血公爵』は、貴様の傷を癒してくれたか?」


(……心の中を、読まれている!?)


「貴様は、復讐のために回帰した。愛だの、信頼だの、そんな『生ぬるい』感情に、うつつを抜かすために、戻ってきたのではないだろう?」


悪魔王の指先が、私の頬を撫でる。


「……わたくしは、復讐を忘れてなどいないわ」


「いいや。忘れている」


悪魔王の声が、一瞬、厳しくなった。


「貴様の憎悪が薄まれば、俺が貴様を『支援』する理由も、なくなる」


(……脅し、だわ)


「ルシアンの絆か。……良いだろう。その絆が、どれほど脆いものか、試してやろう」



************



新たな火種



「何を、するつもり?」


「俺は、何もしないさ。俺は、ただ『きっかけ』を与えるだけだ」


悪魔王は、楽しそうに笑う。


「エリアーナ。貴様は、アランとイザベラの『絆』を、まだ侮っている」


「……どういう意味?」


「アランは、貴様に三度も敗北した。イザベラは、貴様に『聖女』の座を奪われかけている」


「……」


「追い詰められたネズミは、何をする?」


悪魔王は、私の耳元で、決定的な言葉を囁いた。



「……『子供』だよ、エリアーナ」


「……え?」


「女が、男を繋ぎ止める、最強の切り札だ。……アランとイザベラが、もし『子』を成したら?」


私は、息を呑んだ。


(……懐妊)


(そうだ、1周目、イザベラは私を陥れた後、アランの子を……いや、違う。あの時は……)


「おっと。未来を知りすぎている貴様には、これ以上の『助言』は不要か」


悪魔王は、私の動揺を見抜き、満足そうに微笑んだ。


「せいぜい、ルシアンとの『平穏』を守るがいい。……守れるものならな」


その言葉を残し、悪魔王は闇に溶けるように消えた。



私は、一人、寝室で震えていた。


(イザベラが、懐妊……?)


(もし、そうなれば、アランは、その『世継ぎ』を守るために、何でもする)


(ルシアン(政敵)と、私(裏切り者)を、本気で殺しに来る)



悪魔王の言葉は、私の心の平穏をかき乱し、ルシアンへの淡い感情を、再び「憎悪」と「恐怖」で塗りつぶしていった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ