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処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!  作者: 秦江湖


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疑念と共犯

刺客の後処理



ルシアンに抱えられ、彼の執務室に戻ると、アンナが血相を変えて飛び出してきた。


「エリアーナ様! ご無事で……!」


「大丈夫よ、アンナ。かすり傷一つないわ。……このルシアンのおかげでね」


ルシアンは、私をソファに降ろすと、すぐに側近たちに指示を出し始めた。


「刺客は五人。全員生け捕りにした。地下牢へ」


「……え? あそこで倒れて……」


「峰打ちだ。殺しては、アランの仕業だと白状させられん」



なんと……あの乱戦の中で、全員を殺さずに? 私は、ルシアンの底知れない実力に、改めて背筋が寒くなった。


「アンナ。エリアーナのために、温かい飲み物を。それから、お前も今夜はここに泊まれ。この部屋が一番安全だ」


「は、はい! 公爵閣下」


アンナが部屋を出ていくと、執務室には、私とルシアンの二人だけが残された。


暖炉の火が、パチパチと音を立てている。


重い沈黙が続く。


先に口を開いたのは、ルシアンだった。



***************



ルシアンの疑念



ルシアンは、エリアーナを見つめていた。


ソファに座る彼女は、つい先ほど命を狙われたとは思えないほど、冷静だった。



(……おかしい)


ルシアンは、今夜の襲撃に、いくつかの違和感を覚えていた。


(なぜ、俺は、あの中庭に間に合ったのか)


(なぜ、エリアーナは、刺客の第一撃(矢)を、紙一重で避けられたのか)


ルシアンは、エリアーナの「胸騒ぎがする」という言葉を思い出していた。


(まるで、刺客が来ることを、予期していたかのようだ)


塩の一件。


アンナの救出劇。


そして、今夜の刺客。



全てが、彼女の「知識」によって、ギリギリのところで回避され、あるいは利用されている。



「……エリアーナ」 ルシアンは、彼女に問いかけた。



「お前は、一体、何者だ?」



***************



エリアーナの「告白」



ルシアンの金色の瞳が、私を真っ直ぐに見据えている。


「……何者、とは?」


「惚けるな。お前の『知識』は、リステン家の情報網だけでは説明がつかん」


「……」


「塩の密輸ルート。アンナへの罠。そして、今夜の刺客のタイミング。……お前は、アランの思考を『読んでいる』。いや、まるで『未来』を知っているかのようだ」


ルシアンの指摘は、的を射ていた。


私は、息を呑んだ。


ここで、「回帰した」と告白すべきか?


(……いや、ダメだ。悪魔王のことも、全て話さなければならなくなる)


(そんな、荒唐無稽な話を、この合理主義者の彼が信じるはずがない。信じたとしても、悪魔と契約した女など、彼は側に置かないだろう)


私は、ルシアンを騙すことを選んだ。


「……未来、ですって? そんな、まさか」 私は、自嘲気味に笑ってみせた。


「わたくしに、そんな力はありませんわ」


「では、あの『知識』は、なんだ」


「……ルシアン。あなたは、アラン殿下をどれだけご存知?」


「……どういう意味だ」


「わたくしは、1周目……いいえ、アランの婚約者(皇妃)として、彼の側にいました。彼の思考、彼の癖、彼が頼る人間、彼が追い詰められた時に取る行動……」


私は、目を伏せ、悲劇のヒロインを演じる。


「わたくしは、彼を愛していたからこそ、彼の全てを、知りすぎてしまったのです」


「……」


「わたくしの『知識』は、未来予知などではありません。……アランという人間を、骨の髄まで知り尽くした『経験』と『分析』の、結果ですわ」 私は、真実(回帰)を、嘘(1周目という言葉を使わない)で塗り固めた。



***************



共犯者



ルシアンは、黙って私を見つめていた。


彼が、私の言葉を信じたとは思えない。


だが、彼は、それ以上は追求しなかった。



「……そうか。ならば、お前の『経験』とやらは、俺の軍隊以上に、アランへの脅威だな」


ルシアンは、立ち上がり、私の前に立った。


「エリアーナ。お前が何者でも構わん」


「……え?」


「お前が『未来』を見ているのだとしても、アランへの『憎悪』だけで動いているのだとしても、どちらでもいい」


彼は、私の顎に手をかけ、顔を上げさせた。


「お前は、俺の『共犯者』だ。それだけで、十分だ」


「……ルシアン」


「今夜は、もう休め。アンナが戻ってきたら、隣の寝室を使え」


ルシアンは、それだけ言うと、私から離れ、再び執務の書類へと目を戻した。



彼の金色の瞳は、疑念を消してはいなかったが、そこには「共犯者」を見る、確かな「信頼」の色が宿っていた。


私は、彼が私を信じようと「努めて」くれたことに、胸が熱くなるのを感じた。


(この人は、アランとは違う)


(この人を、私の復讐に利用するだけでは、いけない)



私は、初めて、契約婚約者である彼に対し、憎悪以外の、別の感情を抱き始めていた。


そして、それが「支援者」の不興を買うかもしれないと本能的に感じていた。










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