エリアーナの反撃
完璧な演技だ。1周目の私を処刑台に送った、見事な被害者ムーブ。
私は、泣き崩れるイザベラを冷ややかに見下ろした。
アランが「イザベラ、もういい。彼女は変わってしまったんだ」と、イザベラを優しく抱きしめ、私を非難の目で見る。
「エリアーナ。君には、失望したよ」
アランが、私に背を向けようとした、その時だ。
「お待ちくださいませ、皇太子殿下」
私は、静かに、しかし会場の全員に聞こえる声で言った。
「イザベラさん。わたくしは、貴女を『見捨てた』のではありません」
「……え?」
涙を浮かべたイザベラが、私を見上げる。
「わたくしは、貴女の『望み』を叶えて差し上げただけですわ」
「……望み、ですって?」
「ええ。貴女は、わたくしの侍女であることよりも、皇太子殿下のお側に仕えることを、ずっと望んでおられましたでしょう?」
私は、イザベラの耳元にだけ聞こえる声で、続けた。
「……1周目と、同じように」
「ひ……っ!?」
イザベラの顔から、血の気が引いた。
彼女が、1周目のことを知るはずがない。だが、私の言葉の「何か」が、彼女の罪悪感を突いたのだ。
私はイザベラから離れ、アランと、そして会場の全員に向かって宣言した。
「わたくしの婚約者は、ただお一人。ルシアン・ヴァレリウス公爵閣下だけ。それ以外の殿方がわたくしの名を呼ぶことは、未来の公爵夫人に対する、無礼と心得ていただきたいわ」
私はルシアンの腕を掴み、彼に微笑みかける。
「参りましょう、ルシアン様。わたくしたちの、新しい門出のために」
ルシアンは、驚いたような、楽しそうな、何とも言えない顔で私を見ていたが、すぐに「ああ」と応じ、私をエスコートしてアランとイザベラの前を通り過ぎた。
アランが、屈辱に顔を歪ませ、イザベラが私の最後の言葉の意味もわからず震えているのを、私は背中で感じていた。
「おまえたちは許さない」
私の復讐の夜会は、まだ始まったばかりだ。




