契約成立
ルシアンは、私の差し出した手を取らなかった。
代わりに、彼はゆっくりと立ち上がり、私の目の前に立った。
長身の彼に見下ろされると、すごい圧迫感だ。
「その情報、確かなんだろうな」
「ええ、この命を賭けて」
「……よかろう」
ルシアンは、私ではなく、私の父(リステン侯爵)に向き直った。
「リステン侯爵。あんたの娘は、最高に狂っている。だが、俺はその狂気、嫌いではない」
「……公爵様」
「リステン家が、俺とヴァレリウス家につくというのなら、その覚悟を、俺も受け入れよう」
そして、彼は再び私に向き直った。
「エリアーナ・リステン」
「はい」
「その復讐、手伝ってやる」
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共犯者の握手
ルシアンは、ごつごつとした、分厚い手を私に差し出した。
1周目では、決して交わることのなかった手。
私は、その手を、強く握り返した。
「感謝いたします、ルシアン公爵閣下」
「勘違いするな。これは取引だ」
ルシアンの金色の瞳が、私を射抜く。
「俺を裏切れば、その命はない。アランより先に、俺がお前を殺す」
「望むところです」
私たちは、共犯者として、固い握手を交わした。
父は、その光景を、信じられないものを見るような顔で、ただ黙って見つめていた。
契約は、成立した。




